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製品含有化学物質管理 >> RoHS分析あれこれ >> 第六回

第六回 : 素材の種類によるリスク

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 素材の種類によるリスク

前回はリスク推定の視点として三つの切り口があるというお話をしましたが、今回は、そのなかの「素材の種類によるリスク」について少し踏み込んでお話します。

数週間程前の著名なビジネス雑誌に、日本企業のコンプライアンスに対する過剰反応の例として「シリコンウエハ中のRoHS対象物質について分析データを要求」という話が紹介されていました。我々の所にも、はんだ中の六価クロムとか、金属中のPBDEとか、ナンセンスな分析依頼が稀にあります。もちろん依頼者の方も分かっているのですが、泣く子とお客様には勝てない、ということでしょうか。こうした話が一般ビジネス誌に紹介されるということは、このような混乱が取引の現場で一般化しているということでしょう。

このような分析は徒労といわざるを得ません。富士通グループでは当初から、素材ごとのリスクに応じてメリハリをつけた対応を全社的に行っています。ここで、どの素材にどの規制対象物質が含まれるかについて、下図のようなランク付けを行っています。

 

 

含有リスクは以下の視点からランク付けしました。

(a)材料学的に含有し得るか

上の例で言うと、シリコンウェハや金属中のPBDEやはんだ中の六価クロムが相当します。含有させようとしても含有させることはできません。

(b)使用する目的と効果

鉛やカドミウムを使用するには性能やコストなどそれなりの理由があり、ランダムに混入するものではありません。不純物にしても原料や工程上の理由があって混入するものですから、それを知ればチェックすべき対象を絞り込めます。

(c)他の産業分野を含めいつ頃まで使われていたか

代替材料が登場してもすぐに普及するわけではありません。数十年前に代替が進んだ素材と、最近まで使用されていた素材ではリスクは自ずと異なります。また、電機業界では禁止されても他の業界で使用されていれば混入のリスクがあります。

話は変わりますが、IEC(国際電気標準会議)のTC111という委員会でRoHS対象物質について分析方法の規格化を進めていますが、並行して「サンプリングガイドライン」の作成も進めています(昨年7月に発足したHWG3というグループが担当)。ここでいうサンプリングとは通常よりも広い概念で、「分析に先立って行うこと全般」をスコープにしています。分析方法の規格が必要なのは言うまでもありませんが、実際の機器にはたくさんの均質材料が含まれ、また各々の材料は微量です。そこで、含有のチェックをどうしたら合理的にできるかについて一つのガイドラインを提示しようという訳です。

は、最初にある国から提出された案は「素材の種類によるリスク」の視点が希薄でした。日本としては「これではたまらん!」ということで、このコラムで述べてきたような事を各国の委員に対して主張し理解を求めてきました。その結果、素材の種類によるリスクという視点を含め、概ね日本が主張してきた方向でコンセンサスが形成されてきています。

と言うと手柄話のようですが、私たちが説得したというより、各国の委員も実際にやってみたら、ここで述べているような事に自分でも気づいたという事だと思います。

ここで冒頭の話に戻りますが、分析依頼者の先のお客様もあるいは分かっているのかも知れません。ただ、何らかの根拠がないとその先のお客様に説明できないということかも知れません。IECのガイドラインがその根拠の一つになればと思います。

今回はこの位にして、素材の種類によるリスクアセスメントの例や、その活用に当たって注意して頂きたいことなどについては第七回でお話いたします。