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製品含有化学物質管理 >> RoHS分析あれこれ >> 第八回

第八回 : 知恵を働かせて分離せずに分析(その1)

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  知恵を働かせて分離せずに分析(その1)

三回にわたって「分析対象をいかに絞り込むか」というお話をしましたが、今回はもう一つのポイントである「知恵を働かせて分離せずに分析する」方法についてお話します

RoHS指令の管理単位は均一材料ですから、分析の立場から言えば均質材料ごとに分離して分析するのが基本です。これは、化学分析でも蛍光X線分析でも同じです。しかし、実際の部品は様々な材料が様々に組み合わされて構成されていて、各々の材料を分離するのは非常に大変です。特に蛍光X線分析の場合は、「非破壊性」や「短時間分析」がウリというか、その特徴ゆえに装置を導入している所も多いですから、分離しなければ分析できないのであれば導入した意味がない!というくらい切実な要求ではないでしょうか。

部品を分解せずに分析したいというニーズに対し特効薬はありませんが、分析する個々の部品や材料についての知識があれば相当程度可能性を絞り込むことはできます。図は、LSIのリード部分近傍(大きい赤丸)を測定したときの蛍光X線スペクトルで、銅(Cu),臭素(Br),錫(Sn),鉛(Pb)が検出されています。Brは規制対象のPBBやPBDE由来でしょうか? また、Pbが観察されていますが、即座にRoHS違反と言えるのでしょうか。Cuに含まれているPbは4wt%までなら除外(使用可能)です。

 

X線は、(a)リードのめっき、(b)リードの母材、(c)モールドレジンの三カ所に照射されています。このうち、PbやBrがどの材料にどのような態様で含まれているのか、LSI部品に使用される材料について知識があれば推定することができます。

(1)Pbの由来について

Pbは(a)のリードめっきに含まれており、RoHS不適合であると言えます。(b)のリードの母材は圧延加工で製造されますので、ここに含まれることはありません(*注)。また、(c)のモールドレジンはエポキシ樹脂ですから安定剤に鉛化合物を使用する必然性はなく、また色が黒ですから着色のために白い酸化鉛を使用する意味もないからです。

(2)Brの由来について

BrはPBBやPBDE由来ではなく問題ないと言えます。(a)のリードめっきや(c)のリード母材は金属ですから、有機物であるPBBやPBDEが含まれることは原理的にありえません。となるとBrは(c)のモールドレジン由来ということになりますが、モールドレジンにPBBやPBDEを練り込もうという人はいません。

以上のようにして、LSIを各々の部位に分解しなくても問題の有無と所在を推定することができます。

なお、「Pbがリードめっき中に含まれているとして、許容値の1000ppmを超えているか否かはどう判断するのか」と疑問に思われる方もおられるでしょう。 通常のFP法や検量線法は単一素材であると仮定して含有濃度を計算するもので、本例のように一緒に計ってしまった結果から特定部位中の濃度を計算することはできませんから。

具体的には「それは我々のノウハウです」と言うことなのですが、考え方としては「これまでの事例と比較して判断している」ということです。今回のLSIの例ですと、「リードのSnめっき中にPbを1000ppm含むLSIをこのようにセットしてこの条件で観察した場合、このようなスペクトルが得られる」とか、逆に、「こんなスペクトルが得られたのだが、リードめっきだけ溶かして化学分析したらPbが○○ppmだった」といった事例を積み上げ、それらと比較して判断しています。もちろん、グレーな場合はめっきだけ溶かして化学分析しますが。

「知恵を働かせて分離せずに分析する」ということについて、少しイメージできたでしょうか? このことは具体例でお伝えするのが一番ですので、第九回でもう一つ例をお話したいと思います。