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製品含有化学物質管理 >> RoHS分析あれこれ >> 第七回

第七回 : 素材の含有リスクマップ

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  素材の含有リスクマップ

前回は、素材ごとのリスクに応じてメリハリをつけて対応すべきとの話をいたしましたが、今回は、素材の種類によるリスクアセスメントの例や、その活用に当たって注意して頂きたいことなどについてお話いたします

下記の枡目に色の付いた表を私たちは、RoHS指令対象物質についての「素材の含有リスクマップ」と呼んでいます。表の横方向にRoHS指令対象物質を、縦方向に素材をリストアップし、各対象物質が各素材に含まれるリスクの程度を交通信号の赤青黄色に倣って各々色分けして表示しています。もちろんこの表示方法は一つの例です。

 

ここで、上記のようなリスクマップを社内の管理統制部門が作成したとして、実際に運用する人が表を見て機械的に判断するのは好ましくありません。リスクマップの運用に当たっては次のようなことに、よくよく注意する必要があります。

(1)素材(均質物質)についての理解

上の表への当てはめの前提として、「管理対象となる素材」を特定しなければなりません。第一回でお話したような事柄を一応理解している必要がありますが、それに加えて、ある材料が往々にして複数の素材で構成されていること、例えば亜鉛めっき鋼板は「鉄板」「亜鉛めっき膜」「クロメート膜(表面化成処理膜)」の三種類の素材で構成されていることを、多くの材料について知っている必要があります。

我々のお客様でも、クロメート膜のことを「メッキ」と呼ぶ人や、クロメート膜と下地金属をひっくるめて「金属」と呼ぶ方が結構いらっしゃいます。必ずしも材料の専門家ではない依頼者の方がご存じないのも無理ありません。

材料をよく知っている分析機関に相談する場合は別として、自分たちで判断してリスクマップを使用する場合は、材料についての広い知識が不可欠です。

(2)ランク付け根拠となる材料知識

リスクマップは膨大な情報を圧縮して一目で見渡せるようにしたものです。いわば、日本地図のようなものです。これからドライブしようという時は、日本地図だけではなく各県の地図が必要です。運用する人各々が、自分の担当する分野の調達品についてより解像度の高い情報、つまりランク付けの根拠となる材料知識を知らなくてはいけません。例えば、上の表で「亜鉛(Zn)めっき-カドミウムの欄」が黄色になっていますが、亜鉛めっきには電気亜鉛めっきと溶融亜鉛めっきがあり、両者でリスクは大いに異なります。こうした事を知っていれば、検査対象のより的確な絞り込みが可能です。

上記のリスクマップは富士通グループ向けに作成したものですが、RoHS指令に対応するには直接のお取引先はもちろん、その先やさらに先の多くの方々の協力が必須です。

もちろん、リスクレベルはその企業の製品分野や、部材の調達先など個々の事情によって異なりますし時間の経過とともに変化しますので、カスタマイズやメンテナンスは必須です。しかし、ベースとなるものがあれば労力を大いに節約できます。

今回は少し宣伝をさせて頂きましたが、五、六、七回と三回にわたって「分析対象をいかに絞り込むか」というお話をしました。第八回は、第四回で述べたもう一つのポイントである「知恵を働かせて分離せずに分析する」方法についてお話します。