AIドリブンのバイオ医薬品研究開発・製造における高精度スペントメディア分析の重要な役割

ユーロフィンバイオファーマサービスの「ニュースレター2025年Fall号」が発行されました。
ユーロフィングループは、食品・製品・環境・アグロ・ジェノミクス・クリニカルダイアグノスティック・医薬品・材料等、幅広い分野に関わる分析及び検査サービスをグローバルに展開しています。
世界60カ国に950以上のグループラボがあり、200,000通りに及ぶ分析項目・手法を採用、年間4億5,000万件を超える試験を実施しています(2025年1月現在)。
医薬品分析は、ユーロフィンバイオファーマサービスが担当しています。日本国内においては、当社「ユーロフィン分析科学研究所(E-ASL)」が受託を行っています。一部のサービスは、当社ラボが海外ラボとの仲介となり受託しています。
バイオファーマサービスでは、お客様に最新情報をお届けするため、定期的にニュースレターを発行しています。
2025年Fall号のうち、以下4つの技術情報を紹介します。
- 製薬業界における環境リスク評価(ERA):規制枠組みと実施戦略のナビゲーション
- EurofinsのGLP-1受容体作動薬マルチプレックス試験により、迅速でデータドリブンの意思決定が可能となり、複雑な疾患治療の成功率も向上
- 新しい微生物迅速試験法でスピードと持続可能性を実現
- AIドリブンのバイオ医薬品研究開発・製造における高精度スペントメディア分析の重要な役割
本技術コラムでは、「AIドリブンのバイオ医薬品研究開発・製造における高精度スペントメディア分析の重要な役割」を紹介します。

著者:Ferdi van Dorsten, PhD, Team Lead Spent Media Analysis; Jochem Rutters, PhD, Business Unit Manager; Eurofins Spinnovation Analytical B.V. (part of Eurofins BioPharma Product Testing, The Netherlands)
バイオ医薬品業界は、人工知能(AI)と機械学習(ML)の統合によって推進されるBioPharma 4.0時代に突入しています。AI統合の成功の基盤は、予測モデルの学習と検証に使用されるデータの品質にあります。
Eurofins Spinnovation Analytical B.V.(オランダ)は、この進化の最前線に立ち、独自のSPEDIA™プラットフォームにより高品質なスペントメディア分析(SMA:Spent Media Analysis)(*1)を提供しています。この分析サービスは、AIドリブンのバイオプロセス最適化に不可欠な正確で再現性の高い代謝データを提供するよう設計されています。
SPEDIA™プラットフォームは、以下の3つの先進的分析技術を組み合わせています。
- 核磁気共鳴分光法(NMR)
- 液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)
- 誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)
このユニークな組み合わせにより、アミノ酸、糖、有機酸、ビタミン、ポリアミン、緩衝剤、界面活性剤、微量元素など、培地成分を広範に網羅した定量的代謝プロファイリングを高精度で実現します。その結果、構造化された包括的な定量データセットが得られ、お客様は細胞培養の予測、リアルタイムプロセス制御、自動品質保証のための堅牢なAIモデルを開発できます。
AIと規制遵守における高品質分析データの重要性
バイオ医薬品製造におけるAI活用には、正確で再現性があり、規制規格に準拠したデータが不可欠です。Eurofins Spinnovation Analyticalでは、以下のSMAサービスを提供しています。
- 予測精度の向上:高精度データで学習したAIモデル(デジタルツイン(*2)など)は、細胞成長や代謝物消費に関する信頼性の高い知見を提供
- プロセス制御の改善:SMAとデジタルツインによるプロセス理解の向上で、逸脱を事前に防止
- バッチ間の一貫性:原材料組成の信頼性ある品質管理により、変動を検出・低減し再現性を向上
- 規制対応の確実性:構造化されたバリデート済みデータにより、GMP基準への適合を容易化
- コスト効率:プロセス理解の向上により、製造コスト削減と収率向上を実現
Eurofins Spinnovation Analyticalは、データの完全性と標準化への取り組みにより、AI対応バイオ医薬品におけるスケーラビリティ、データセキュリティ、プラットフォーム互換性といった主要課題にも対応します。高精度SMAデータを提供することで、お客様はリアルタイムでバイオプロセスを最適化し、細胞培養動態を予測し、バッチの一貫性を確保し、品質管理を自動化することが可能になります。
AIがバイオ医薬品の研究開発や製造を変革し続ける中、信頼できる高品質なSMAデータの必要性はかつてないほど高まっています。Eurofins Spinnovation AnalyticalのSMAサービスは、バイオ医薬品企業、バイオテック企業、CDMOが開発プロセスにおいてAIを最大限に活用できるようサポートします。SPEDIA™プラットフォームは、意思決定を加速し、開発を効率化し、生産性を向上させるために不可欠な代謝データを提供します。
<補足>
(*1)スペントメディア分析
細胞培養後に残った培地(使用済み培地)を分析し、細胞の代謝状態や培養プロセスの健全性を評価する手法です。細胞が培養中に消費した栄養素や生成した代謝産物を定量することで、細胞の成長や代謝パターンを把握できます。バイオ医薬品製造において、プロセス開発、スケールアップ、品質管理に不可欠な情報を提供します。
(*2)デジタルツイン
現実の物理的なシステムやプロセスを、デジタル上に忠実に再現した仮想モデルのことです。製薬・バイオ医薬品業界では、実際の設備、製造プロセス、細胞培養などの挙動をリアルタイムで再現するデジタルモデルや、センサーや分析データを取り込み、現実の状況と同期しながら動作させることなどに利用されます。
さらに詳しい情報は、こちらをご覧ください。
原文は、The crucial role of high-fidelity spent media analytics in AI-driven biopharmaceutical R&D and productionをご覧ください。
関連記事
- 製薬業界における環境リスク評価(ERA):規制枠組みと実施戦略のナビゲーション
- EurofinsのGLP-1受容体作動薬マルチプレックス試験により、迅速でデータドリブンの意思決定が可能となり、複雑な疾患治療の成功率も向上
- 新しい微生物迅速試験法でスピードと持続可能性を実現


