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ユーロフィン分析科学研究所株式会社 >> 技術コラム >> E&L試験 米国薬局方USP 665・USP 1665の概要を解説

E&L試験 米国薬局方USP 665・USP 1665の概要を解説

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米国薬局方(USP)において、E&LExtractables & Leachables:抽出物・浸出物)試験に関連するガイドラインには、USP 1663Assessment of Extractables Associated with Pharmaceutical Packaging/Delivery Systems」、USP 1664Assessment of Drug Product Leachables Associated with Pharmaceutical Packaging/Delivery systems」があります。

これらの章は、医薬品包装システムの抽出物/浸出物評価の設計、正当化、および実行のためのフレームワークを提供しています。 

 

新たに、USPの包装・流通専門委員会が、バイオ医薬品の原薬やバイオ医薬品の原薬やバイオ医薬品・医薬品の製造に使用されるプラスチック部材やシステムの特性評価を扱うUSP 665Plastic Components and Systems Used to Manufacture Pharmaceutical Drug Products and Biopharmaceutical Drug Substances and Products」を提案しています。

また、この章をサポートするための情報としてUSP 1665Characterization and Qualification of Plastic Components and Systems Used to Manufacture Pharmaceutical Drug Products and Biopharmaceutical Drug Substances and Products」も提案されています。

この中で、シングルユースシステム(SUS)製造部材に関するE&L試験について、記載があります。

バイオ医薬品や再生医療等製品の製造プロセスにおいて、培養工程、精製工程、製剤工程等、様々な部分でSUS製造部材が使用されています。

例えば、細胞培養に用いられる培養バッグや、バッグ間又はバッグと装置間をつなぐチューブなどがあります。

これらに対するSUS製造部材のE&L試験も、今後必要とされてきます。

 

本技術コラムでは、今後SUS製造部材のE&L試験を実施する可能性がある医薬品メーカー、医療機器メーカー、包装デバイスメーカーの方の参考ために、米国薬局方USP 665USP 1665ガイドラインの概要を解説します。

USP 665USP 1665は、202251日正式発効される予定でしたが、USP 665General Chapterとすることの是非に議論の余地が発生したため、202651日まで正式発効が延長されました。

そのため、今後内容がアップデートされる可能性をご了承ください。

 

 

USP 665Characterization and Qualification of Plastic Components and Systems Used to Manufacture Pharmaceutical Drug Products and Biopharmaceutical Drug Substances and Products

(医薬品・バイオ医薬品の製造に使用されるプラスチック材料、部材及びシステム)

本ガイドラインは、以下5章で構成されています。

  1. Introduction/はじめに
  2. Scope/適用範囲
  3. Assessment Process/アセスメントプロセス
  4. Plastic Components and Systems/プラスチック部材とシステム
  5. Alternate Qualification Procedures/代替的な適格性評価手順

 

1章では、導入として次のようなことが記載されています。

この接触によって製造工程内に抽出物が溶出し、その後の処理操作の有効性や効率に変化を与える可能性があります。

また、抽出物が製造工程内に残留した場合、それが医薬品に蓄積され、品質や患者の安全性に悪影響を及ぼす可能性があります。

そのため、製造工程内で使用されるプラスチック材料や部材が、医薬品・バイオ医薬品の製造に適していることを保証すべきとされています。

 

2章では、本ガイドラインの適用範囲が記載されています。

医薬品低分子医薬品など・バイオ医薬品を含む、すべての製造された医薬品が適用範囲とされています。

これらの製造システムである、シングルユースシステム(SUS)又はマルチユースシステム(MUS)のいずれも適用範囲とされています。

Table 1List of Components Typically Encountered in Pharmaceutical and Biopharmaceutical Manufacturing Systems」には、医薬品・バイオ医薬品の製造システムでよく使用される部材一覧があり、各部材の抽出時間について記載があります。

 

3章では、アセスメントのプロセスについて記載されています。

第一段階として初期評価を実施し、必要に応じて第二段階のリスク評価を実施することとされています。

初期評価では、Figure 1Initial assessment for a plastic component or system.」に基づき、部材とプロセスの流れの間に接触があるか、物理的状態を評価します。

その後、評価対象の部材又はシステムが、許容される部材又はシステムと同等であるかどうかを検討する必要があるとされています。

リスク評価は、USP 1665 4.2.1 Development and Application of the Risk Evaluation Matrix」のプロセスに従って実施するように記載されています。

 

4章では、プラスチック部材及びシステムの試験、試験方法、代替抽出方法について記載されています。

プラスチック部材及びシステムの試験では、リスク評価のプロセスで決定されたリスクレベル(LowModerateHigh)に応じて、Table 2Guidelines for Application of Chemical Component Tests as Established by Risk」で示されるような試験が実施するよう記載されています。

試験方法では、抽出溶媒、抽出プロセス、分析方法が具体的に記載されています。

代替抽出方法では、標準的な抽出プロトコールは適さない、極端(苛酷)な製造条件で使用されているプラスチック部材及びシステムの評価方法について記載されています。

 

5章では、代替的な適格性評価手順についての概要が記載されています。

正当な理由がある場合には、適切な規制当局の同意のもとに、代替の化学物質適格性評価手順及び承認基準が適用される場合がある旨が記載されています。

 

以上がUSP 665の概要です。

詳しくは、公式ページのPlastic Components and Systems Used to Manufacture Pharmaceutical Drug Products and Biopharmaceutical Drug Substances and Productsよりご確認ください。

 

 

USP 1665:Characterization and Qualification of Plastic Components and Systems Used to Manufacture Pharmaceutical Drug Products and Biopharmaceutical Drug Substances and Products

(医薬品・バイオ医薬品の製造に使用されるプラスチック部材、部材及びシステムの特性評価)

本ガイドラインは、以下6章で構成されています。

  1. Introduction/はじめに
  2. Scope/適用範囲
  3. General Principles/一般原則
  4. Assessment Process/アセスメントプロセス
  5. Testing of Plastic Components and Systems/プラスチック部材及びシステムの試験
  6. Qualification of Manufacturing Components and Systems/製造部材及びシステムの適格性評価

 

1章では、USP 6651章でも記述があった導入内容に加え、USP 1665ではUSP 665の適用範囲適用に関する重要な概念を伝え、追加情報とガイダンスを提供している旨が記載されています。

 

2章では、本ガイドラインの適用範囲が記載されています。

USP 665と同様に、医薬品(低分子医薬品など)・バイオ医薬品を含む、すべての製造された医薬品が適用範囲とされこれらの製造システムである、シングルユースシステム(SUS)又はマルチユースシステム(MUS)のいずれも適用範囲とされています。

製造システム又はそのシステムから製造された医薬品・バイオ医薬品の申請者には、製品の製造システムが、意図された用途に適していることを確立する責任があるとされています。

確立するとは、製造システム自体及び/又は製造された医薬品・バイオ医薬品が適切に試験され、その試験結果が適切に評価されていることを確認することで達成されます。

申請者が試験結果を入手し、試験結果の評価を確保する手段や方法は、申請者の裁量に委ねられています。

 

3章では、一般原則として、考察、材料の特性評価、部材の特性評価の3項が記載されています。

考察では、次のようなことが記載されています。

製造システムがその意図された用途に適していることを保証する最も効果的な手段は、十分に特性化され、意図的に選択された部材を使用することです。

USP1665とUSP665はプラスチック部材あるいはシステムの適格性評価のための試験要件を定めていますが、製造工程やシステムの性質上、ある部材あるいはシステムによっては製造中の薬液と接触しないことがあります

そのような構成部材は薬液にPERLを浸出させることはないため,USP665,1665に基づく構成要素の特性評価は必要ありません。

材料の特性評価では、次のようなことが記載されています。

製造部材がその意図された用途に適していることを保証する最も効果的な方法は、十分に特性評価され、意図的に選択された材料を使用することです。

部材製造者は部材の候補材料の化学的特性評価データをUSP381やUSP661.1に基づき、収集することが推奨されています。

部材の特性評価では、次のようなことが記載されています。

部材由来の抽出物製造中の薬液に浸出製造工程を通じて残留し、医薬品の使用適性に悪影響を及ぼすリスクがあるかを確認できる程度に部材の特性評価を実施しなければなりません。

 

4章では、初期評価、部材のリスク評価、部材の化学的特性評価レベルの確立の3項について記載されています。

初期評価は、USP 665記載のFigure 1Initial assessment for a plastic component or system」に従い実施されます。USP 1665ではこの内容について詳細が記載されています。

部材のリスク評価は、以下のように構築されたリスク評価マトリックスを適用することにより確立されるとされています。

  • リスクに対する適切な要因、又はリスクの次元を確立する
  • リスクの各次元において、リスクを定量化する手段を提供する(例:Table A-1Dimensions Relevant to Risk Level」)
  • 各次元で設定されたリスクを考慮し、総合的なリスクを定量化する手段を提供する
  • 定量化された総合リスクと適切な特性評価戦略との関連付けをする(例:Table A-2Linking the Numerical Risk Sequence with a Level of Characterization」)

 

さらにリスク評価マトリックスの作成と適用、リスクと特性評価手法の関連性についても記載されています。

部材の化学的特性評価レベルの確立では、低、中、高リスクのレベル別の評価について記載されています。

 

5章では、標準的な抽出操作、抽出物試験と抽出物プロファイルの作成、標準的な抽出プロトコールの実施により確立された抽出物プロファイルの評価の3項について記載されています。 

標準的な抽出操作では、抽出溶媒、抽出温度、抽出時間、抽出実行、非標準的な抽出、製造過程で部材に対して実施される処置(洗浄、滅菌など)に関する説明が記載されています。

抽出物試験と抽出物プロファイルの作成では、クロマトグラフィー法を用いた有機抽出物の分析及びICP-OES等を用いた抽出物の元素の分析について記載されています。

標準的な抽出プロトコールの実施により確立された抽出物プロファイルの評価では、その概要が記載されています。

 

6章では、製造部材とシステムの認定として、一般事項化学的な適格性評価適格性評価の代替手法の3項について記載されています。

一般事項では、製造システムは、以下の場合に、その意図された使用に対して化学的に適しており適格であるとされています。

  1. 製造システムは、試験により確立された意図的に選択された、十分に特性化された部材から構築されている。
  2. 製造システムは、抽出物プロファイリングなどの成分、または浸出物試験などの医薬品の適切な化学試験、および試験データの毒性評価により、安全であることが確立されている。

 

化学的な適格性評価では、製造システムは、それを構成する部材、又は製造システムに対する適切な化学試験に基づいて、使用に適していると認定されると記載されています。

適格性評価の代替手法では、正当な理由があれば、適切な規制当局の同意のもとに、665に従わずに代替の化学物質適格性評価を実施すること可能である旨が記載されています。

 

以上がUSP 1665の概要です。

詳しくは、公式ページのCharacterization and Qualification of Plastic Components and Systems Used to Manufacture Pharmaceutical Drug Products and Biopharmaceutical Drug Substances and Productsよりご確認ください。

 

 

まとめ

バイオ医薬品の原薬やバイオ医薬品の原薬やバイオ医薬品・医薬品の製造に使用されるプラスチック部材のE&L試験に関するUSP 665USP 1665ガイドラインの概要をまとめました。

これらの製品に関わるメーカーの方の参考になれば、幸いです。

 

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