JavaScript is disabled. Please enable to continue!

Mobile search icon
ユーロフィン分析科学研究所株式会社 >> 技術コラム >> E&L試験論文紹介:Uncertainty factors and relative response factors: correcting detection and quantitation bias in extractables and leachables studies

E&L試験論文紹介:Uncertainty factors and relative response factors: correcting detection and quantitation bias in extractables and leachables studies

Sidebar Image

Eurofins BioPharma Product Testing Italyが執筆した論文「Uncertainty factors and relative response factors: correcting detection and quantitation bias in extractables and leachables studies」が、Analytical and Bioanalytical Chemistry において、2025年7月15日に発行されました。

本論文は、医薬品容器や医療機器から医薬品製剤に移行する化学物質であるExtractables(抽出物)・Leachables(溶出物)の検出・定量における課題を解決するための新しい分析ワークフローRRFlow(Relative Response Factor Flow)モデルを提案するものです。

 

E&L試験を実施する可能性がある製薬メーカー、医療機器メーカー、包装デバイスメーカーの方の参考に、本論文の概要を解説します。

 

 

背景と課題

医薬品や医療機器に使用される材料から、化学物質が製品に移行することがあります。これらの物質は製品の安全性や有効性に影響を与える可能性があるため、毒性評価を通じて監視・評価する必要があります。

評価には分析評価閾値(AET:Analytical Evaluation Threshold)を用いて、ある濃度以上の物質を対象としますが、分析機器が化合物に対して示す感度である応答係数(RF:Response Factor)のばらつきが大きく、正確な定量が困難です。

 

 

従来の方法と限界

不確実性係数(UF:Uncertainty Factor)を用いて定量誤差を補正する方法がありますが、RFのばらつきにより、実際の濃度が正しく定量できない可能性があります。その結果、誤検出(false positive、false negative)が発生するリスクが生じます。

また、複数の検出器を用いることで、ある検出器で高感度に検出することができれば検出と同定の能力自体は向上しますが、定量については各検出器によりRFが異なることから定量値がばらついてしまいます。

 

 

提案された新しい分析ワークフロー:RRFlow(Relative Response Factor Flow)モデル 

RRFlowは、各化合物個別の平均補正係数(RRFi)を用いて定量誤差を是正し、より正確な信頼性の高い濃度評価を実施する方法です。

RRFlowを活用することで、定量誤差の是正だけでなく、誤検出を防止、固定値であるUFの限界の補完、複数検出器を使用した精度向上も期待できます。

 

RRFlowで使用するRRFiの算出・活用方法は以下の3ステップで構成されます。

ステップ

項目

ポイント

1

化合物の同定

LC/MS(ESI-QTOF)やGC/MSで対象となる化合物とともに内部標準に使用し測定。RRF(対象化合物RF/標準RF)を算出。

2

相対応答係数(RRF)の検証

線形性・検出限界などのバリデーション条件を満たす対象化合物について、8~9点の濃度レンジで平均RRFを算出。

3

平均補正係数(RRFi)の適用

通常の半定量値を、対象のRRFiを用いて補正。RRFが0.5〜2なら再補正不要。

 

RRFlowモデルの有効性を評価するために、簡略化された数値シミュレーションであるNSB(Numerical Simulation Benchmark)が使用されています。

NSBは、E&L試験における様々な分析シナリオの長所と短所を比較するために使用されます。実際のE&L試験では多くの変数が絡み合うため、すべての物理化学プロセスをシミュレートすることは困難です。そのため、NSBでは現実のケースを厳密に再現するのではなく、管理された環境下で複数のパラメータ間の相互作用を可視化することを目的としています。

 

本論文では、主に以下3シナリオを用いて検証されました。

  1. UFのみを適用する方法: 応答係数の不確実性を考慮するため、一定の不確実性係数(UF)を適用する従来の分析方法
  2. RRFlowを適用する方法: 提案されたRRFlowモデルを使用し、相対応答係数(RRF)に基づいてLeachablesの量をより正確に再スケーリングする方法
  3. UFとRRFlowを組み合わせる方法: UFとRRFlowの両方を組み合わせることで、精度の向上を図る方法

 

シミュレーションの結果、UFとRRFlowを組み合わせたアプローチが、UFのみを適用する方法よりも検出バイアスを低減し、誤検出の発生率が低いことが示されました。また、UFの値を無闇に増やすことは、データの品質を必ずしも向上させず、場合によっては悪化させる可能性があることも示されました。

 

 

まとめ

RRFlowモデルを適用するにあたり、多くの化合物のRRFiデータを所有している必要があります。しかし、大量の化合物データを一から収集するのには限度があります。

BioPharma Product Testing Italyでは各化合物のRRFiデータをデータベース化し活用する予定です。

 

詳しくは、本論文をご覧ください。

 

 

E&L試験の委託先をお探しなら

ユーロフィン分析科学研究所では、GMP省令準拠で管理された分析機器を使って、E&L試験が実施可能です。
E&L試験に20年以上の実績のある欧米のユーロフィン BioPharma Product Testing ネットワークの知識と経験から適切な試験デザインを立案可能です。
まずは、当社に依頼するメリットをご確認ください。

詳しくみる