JavaScript is disabled. Please enable to continue!

Mobile search icon
Clinical Testing >> お知らせ >> 【ASCO2013】若手技術研究員によるレポート~がん幹細胞

【ASCO2013】若手技術研究員によるレポート~がん幹細胞

Sidebar Image

今回は、がん幹細胞(Cancer Stem Cell:CSC)に関する研究から、大日本住友製薬が現在研究開発中の薬剤として注目度の高いBBI608に関するAdrian Langlebenらの発表「進行した悪性腫瘍患者におけるがん幹細胞性阻害剤BBI608」を紹介します。

 



A dose-escalation phase I study of a first-in-class cancer stemness inhibitor in patients with advanced malignancies.
Adrian Langleben et al.
Abstract #2542

がん幹細胞(以下、CSC)は悪性増殖、再発、転移そして標準的治療に対する抵抗性を示す主要な細胞群と考えられている。開発中のBBI608はファースト・イン・クラスの経口抗がん剤であり、CSCの自己複製を阻害し、細胞死を誘導する低分子化合物である。CSC以外のがん細胞と同様、CSCはStat3経路およびNanog経路、βカテニン経路阻害剤によって増殖が抑制され、細胞死が引き起こされる。前臨床試験でBBI608は強力な抗腫瘍、抗転移活性を示している。

 

今回の容量依存性フェーズⅠ試験は標準治療に抵抗性を示した成人進行がん患者を対象として、BBI608の安全性、副作用耐性、推奨フェーズII投与量(RP2D)、薬物動態(PK)および、予備的な試験としての抗腫瘍活性を明らかにするために行われた。

標準的治療に抵抗性を示した成人進行がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、胃がん、卵巣がん、メラノーマ、乳がん患者41 人に対して、BBI608 を1 日2 回、経口投与し、4 週間投与を1 サイクルとして、患者の病状が進行したり、高度の毒性を示すなど、その他設定された中止基準に達するまで投与試験が継続された。患者を14 のコホート(集団)に分け、それぞれ1 日当たり、20mg から2,000mg までの14 段階で投与した。

その結果、BBI608 の副作用は総じて穏やかであり、副作用には、グレード1~2 の下痢、吐き気、食欲不振、疲労が主にみられ、グレード3 の副作用は下痢および疲労の4件であった。MTD(最大耐用量)は確認しえず、良好な薬物動態を示し、血液毒性は認められなかった。これらの結果から、BBI608 の第I/II相臨床試験(継続投与試験、RP2D)では推奨用量を1 日2 回とし、1 回あたり500mgを 投与することに設定した。

予備的な抗腫瘍効果の検討では、評価可能な患者26 人のうち、DCR(病勢コントロール率)は65%(17 人)であった。無増悪期間の延長は、大腸(CRC)、頭頸部、胃、子宮、メラノーマ、乳がんを含む患者のうち46%で観察された。また、本試験では18 人の結腸直腸がん患者に投与されたが、評価可能な結腸直腸がん患者の DCR は67%で、PFS(無増悪生存期間)の中央値は14 週、OS(全生存期間)の中央値は47 週であった。なお、核内β-カテニンまたは高リン酸化Stat3 バイオマーカー陽性患者のOS 中央値は、それぞれ53 週、54 週であった。

 



大日本住友製薬では、BBI608 の開発成功に注力し、CSCへの治療効果を持つ世界初のがん治療剤として、2015 年度に北米での発売、2016 年度に日本での発売を目指しています。現在、米国、カナダ、日本でも結腸直腸がんや固形がんの臨床試験が実施されています。

生体内の幹細胞から各組織、器官への分化過程や機序は組織ごとに異なり、その機序については完全には明らかになっていません。こうした背景や、今回の臨床試験でBBI608が特にCRC患者で高い奏功を示したという報告に着目しても、今後、CSCに対する薬剤開発の進行に伴い、肺がんや乳がんなど各々のCSCに対応した治療薬が台頭してくるでしょう。

CSCを標的とする治療を考えた際、CSCをCSCたらしめる分子機構をターゲットとする戦略は有効な方法でありますが、CSCの発生・維持については未解明な点も多いため、CSCと正常幹細胞との類似点を手掛かりに、候補となる因子が考えられています。ASCO2013では、マイクロRNAや、Notchシグナルに着目した発表などがあり、CSCを標的とする治療薬開発には今後も大いに注目する必要があると感じました。

 

米臨床腫瘍学会(ASCO:American Society of Clinical Oncology)’13年次集会(2013/5/31~6/4@シカゴ)

 

【免責事項】

  • このホームページに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。当社はこのホームページの使用ならびに閲覧によって生じたいかなる損害にも責任を負いかねます。
  • このホームページの掲載情報を参考にしてお客様ご自身が各種試験を行うにあたっては、関連法令等で定められている義務に従い、お客様ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。
  • 当社は、お客様の便宜のためにこのホームページから他のホームページへのリンクを設定する場合がありますが、リンク先のホームページに含まれている情報、サービス等については、一切の責任を負いかねます。
  • リンク先のホームページは、そのホームページが掲げる条件に従い、お客様ご自身の責任においてご利用下さい。
  • このホームページのURLや情報は予告なく変更される場合があります。

 

 

なお、本件に関するお問い合わせは、お問い合わせフォームよりお願いいたします。