JavaScript is disabled. Please enable to continue!

Mobile search icon
Clinical Testing >> お知らせ >> 【ASCO2013】若手技術研究員によるレポート~血中循環腫瘍細胞 ver.2

【ASCO2013】若手技術研究員によるレポート~血中循環腫瘍細胞 ver.2

Sidebar Image

進行がんではがん細胞は血液やリンパ液の流れに乗って循環し、遠隔臓器に転移します。最近ではがん治療の薬効評価や薬剤耐性を予測したり、転移過程でのがん細胞の特性を明らかにする手法の一つとして、血中循環腫瘍細胞(CTC:Circulating Tumor Cell)の測定が行われています。CTCの検出は採血された末梢血を用いるため低侵襲であることから、がん治療の方針を決める指標として注目されています。検出原理の違いによって、EpCAMに基づくenrichment法、microfludics法、およびlabel-free(filtration systems)法があります(表「血中循環腫瘍細胞の測定方法」参照)。

 

当社のCTC測定サービスで採用しているセルサーチシステム(Veridex社)は米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)の承認を得ています。しかし、セルサーチシステムによる乳がん、前立腺がん、および大腸がんのCTCの検出はEpCAMの発現の程度に依存しているため、EpCAMの発現が低いCTCの場合には、その検出率が著しく低くなることが報告されています。更なる研究の進展と臨床現場への応用が期待されるCTCについて、ASCO2013でのトピックスをお届けいたします。

 

はじめに、サイトケラチンおよびEpCAM発現の低いCTC検出に有効なmicrofiltration法を用いた膵臓がんのCTC検出感度の改善とCTCのサブタイプについての報告を紹介します。

 


 

Low cytokeratin-and low EpCAM-expressing circulating tumor cells in pancreatic cancer.
Daniel Adams et al.

Abstract #11046

 

膵臓がんのサイトケラチン低発現、EpCAM低発現CTCについて

膵臓がんは遠隔臓器に転移する傾向があるため、多くのCTCの存在が予想されるが、これまでのimmuno-capture法では大きな成果は得られていない。今回、Adams等はがん細胞の発現マーカーに依存せず、固形がん患者の末梢血からCTCを単離する方法であるmicrofiltration法を用いて、膵臓がん患者の75%以上にCTCが証明され、膵臓がんには2つのCTCサブタイプが存在することを示した。

 

膵臓がん患者のサンプルから、7ミクロン直径のポアサイズのCellSievemicrofilterを用い、7.5mlの末梢血からCTCを回収し,DAPI、CK8、18、19、EpCAM、CD45で染色した(n=50)。サイトケラチン陽性でCD45陰性のものをCTCと定義すると、2つのサブタイプのCTCが同定された。1つは典型的(classic)なCTCで、強いEpCAM、サイトケラチンの発現があり、サイトケラチンフィラメントの形成、腫瘍細胞様の核構造が観察された。第2のサブタイプCTCは上皮間葉転換(EMT:epithelial-mesenchymal transition)を示すCTCで、EpCAM発現が弱いか陰性、サイトケラチンも低発現で、楕円形の円滑な核構造がみられた。ステージI~IVおよびステージ不明患者のうち、24%(12/50)で典型的なCTCが検出された。EMT様のCTCは78%(39/50)でみられ、EpCAMを発現していないものも含まれた。また、44%(22/50)で細胞集塊を形成する細胞群がみられた。22%(11/50)で2つのサブタイプを有していた。一方、健常人ではどのサブタイプもみられなかった(n=30)。

 

Microfiltration法は細胞表面マーカーの発現によらずにCTCを補捉し、今回の報告で膵臓がんのCTCが多様な表現型を有する事が示された。特にEMT様のサブタイプで上皮形質の発現の低いものがみられたことから、膵臓がんにおいては抗原抗体反応に基づくCTC単離方法には限界があるものと考えられる。今回提示したCTCのサブタイプの同定は膵臓がん患者の個別化医療に向けて大きな成果となり得る。

 


 

この報告では、CTC数のカウント方法については特に触れられておらず、カウント方法の確立が今後必要だと考えます。

次にMarkus Wallwienerらによる、転移性乳がんにおけるCTCの動態は個別化医療に向けた診断テストを標準化するための迅速で有益なツールと成り得るという報告を紹介します。

 


 

Prognostic impact of changes in circulating tumor cells (CTC) in metastatic breast cancer (MBC).
Markus Wallwiener et al.
Abstract #11012

転移性乳がん患者におけるCTCの変動が予後予測に与える影響について

CTCは転移性乳がん患者の40~60%で検出される。予後予測のマーカーとしての有用性を明らかにする目的で、転移性乳がん患者の治療前(ベースライン、BL)、1サイクルの新たな治療後、および増悪後におけるCTC数を計測し、CTC動態(CTC(KIN))、無増悪生存期間(PFS:Progression Free Survival)、および全生存期間(OS:Overall Survival)への影響を検討した。転移性乳がん患者におけるBLおよび1サイクルの新たな治療後のCTC数とBLと新たな治療後間のCTCの動態は転移性乳がんにおける予後予測の有力なマーカーに成り得ることが示された。

 

CTCの評価は末梢血7.5mLあたりCTC5個以上で陽性、5個未満で陰性とし、BLのCTC数(CTC(BL))から1サイクルの新たな治療後のCTC数(CTC(1C))までのCTC(KIN)を、CTCが陰性のままか、または、陽性から陰性に変わったかといった観点で分類した。腫瘍反応 はRECIST基準(抗悪性腫瘍薬などの固形がんの腫瘍縮小効果判定に一般的に用いられる基準)によって2、3カ月毎に、CTC数の変化はCTC腫瘍進行時(CTCPD)に評価した。CTC数とその動態はその他の予測因子や腫瘍反応に伴い変化がみられた(n=326)。そのうちCTC陽性は31%(115/326)がBLで、31%(51/162)が1サイクルの新たな治療後であり、39%(28/72)が腫瘍進行時であった。追跡期間中央値は15.9カ月であった。PFSとOSの単変量解析中央値はCTC(BL)陰性と比較し、CTC(BL)陽性で有意に減少した。また、CTC(1C)陰性と比較したCTC(1C)陽性群でも同様の結果を示した。多変量解析ではCTC(BL)は独立した予後因子で、CTC(KIN)は腫瘍の進行の予測因子として有用である。

 

CTC(BL)やCTC(1C)、CTC(KIN)はPFSとOSに対して有意な関与が見られ、CTC(BL)からCTC(1C)までのCTC(KIN)は連動性を示した。従って、CTCの動態は個別化医療に向けた診断テストを標準化するために迅速で有益な情報を提供する。

 


 

次に、坂森優一らによって行われた化学療法後の転移性非小細胞肺がん患者における予後因子としてのCTCの意義についての前向き研究の報告を紹介します。

 


 

Circulating tumor cells as a prognostic marker in metastatic non-small-cell lung cancer patients receiving chemotherapy.
Yuichi Sakamori et al.
Abstract #11041

 

化学療法を受けた転移性非小細胞肺がん患者における予後予測マーカーとしてのCTC

 

セルサーチシステムを用いて、化学療法を受ける前のCTC(ベースラインCTC)、1サイクルの化学療法後、および2サイクルの化学療法後のCTCを解析したところ、統計学的な有意性はみられなかったものの、X線検査結果とCTC数の動的変化において正の相関傾向が観察された。

 

化学療法前のCTC陽性率(CTCが1個以上)は29.8%(36/121)であり、1サイクルの化学療法後では22.0%(26/118)、2サイクルの化学療法後では21.4%(24/112)が陽性であった(n=121)。ベースラインCTC数はN3リンパ節転移、M1bグレード、2個以上の転移巣をもつ患者で高かった。統計学的には有意ではないが、X線検査結果とCTC数の動的変化との間に相関傾向が観察された。多変量解析では、X線検査も含めて、ベースラインCTC数はPFSやOSに対して有意な予後不良因子であった。化学療法治療前と治療後の両時点でCTCが陽性だった患者は両時点でCTC陰性であった患者に比較し、PFSとOS共に有意に短縮された。

 

統計学的有意性は無いが、X線検査結果とCTC数の動態間に正の相関傾向が示唆された。確証が必要だが、CTCを継続的に計測する方法は非小細胞肺がん患者における予後判定のマーカーになると考えられる。

 


 

この他にも、「DNA二重鎖分解マーカーとしてのγH2AX(phosphorylated histone protein)について、PARP阻害剤を投与された患者における薬効評価としてCTCにおけるγH2AX レベルを測定する」という研究報告、「進行性去勢抵抗性前立腺がんにおけるCTC数は転移部位、PSA値、骨関連マーカー、腫瘍グレードとは独立した予後予測マーカーとなりうる。CTC数は転移の状態や骨微小環境、低酸素、腫瘍サイズに反映される可能性があるため、前向きに検討されるべきだ」という意見、臨床現場からは、「現在のセルサーチシステムでは採血から72時間以内に検査せねばならず、採血後すぐに解析し、患者の治療方針に活かしたいが、検査センターの営業日の都合で金曜午後以降では出検できないのは問題だ。また、腫瘍細胞によってはCTCの検出感度が下がるのも課題の一つである」という意見等もあり、がん治療分野におけるCTC解析への注目度の高さが伺えました。今後、CTC解析がより幅広くがん治療において活用されるためには、より簡便で迅速に検査できる新たな検出系の確立が急務と考えます。

 

【表 血中循環腫瘍細胞の測定方法】

血中循環腫瘍細胞の測定方法(CTC Table)

 

米臨床腫瘍学会(ASCO:American Society of Clinical Oncology)’13年次集会(2013/5/31~6/4@シカゴ)

 

【免責事項】

  • このホームページに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。当社はこのホームページの使用ならびに閲覧によって生じたいかなる損害にも責任を負いかねます。

  • このホームページの掲載情報を参考にしてお客様ご自身が各種試験を行うにあたっては、関連法令等で定められている義務に従い、お客様ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。

  • 当社は、お客様の便宜のためにこのホームページから他のホームページへのリンクを設定する場合がありますが、リンク先のホームページに含まれている情報、サービス等については、一切の責任を負いかねます。

  • リンク先のホームページは、そのホームページが掲げる条件に従い、お客様ご自身の責任においてご利用下さい。

  • このホームページのURLや情報は予告なく変更される場合があります。

 

 

なお、本件に関するお問い合わせは、お問い合わせフォームよりお願いいたします。