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PFAS MEDIA >> 世界のPFASニュース >> 日本のPFAS規制の現状は?国内の動向や各省庁の取り組みについて解説

日本のPFAS規制の現状は?国内の最新動向や各省庁の取り組み

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投稿日:2024年5月21日(2025年3月10日更新)

※ 本記事は「日本のPFAS規制の現状は?国内の動向や各省庁の取り組みについて解説」を更新したものになります。

2人の男性調査員の採取

PFAS(有機フッ素化合物)は、世界的に規制が強化されている化学物質の一つです。日本でも輸入や製造を規制する動きが強まっており、各省庁で様々な議論が交わされています。

そのため、日本の企業は、規制に関する最新情報や今後の方向性などを把握しておくことが大切です。

この記事では、日本におけるPFAS規制の動向や各省庁の取り組みについて詳しく解説します。

 

INDEX

 

 

PFAS(有機フッ素化合物)とは?

バクテリアの分析

有機フッ素化合物とは、炭素とフッ素が強力に結合することで生まれる化合物です。そのうち「ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物」を総称して「PFAS(ピーファス)」と呼び、約1万種類以上の物質があるとされています。

PFASの中には、撥水・撥油性や熱・化学的安定性等の物性を示すものがあり、それらの特性を活かして、幅広い用途で利用されてきました。

 

その一方で、自然環境で分解されにくく、長く残留し続けて蓄積していく特徴もあり、一部の地域では高濃度のPFAS検出事例が発生しています。

国内外で研究が進む中、人や動植物の健康・生育等へ影響を及ぼす可能性が指摘されており、世界中で規制強化に向けた議論が高まっています。

2025年2月時点でPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)の規制対象であり、日本でも法規制や環境管理の対象となっているPFASが次の3つです。

 

  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)

 

PFASについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向まで

PFASとは

 

 

PFASが健康に与える影響

PFASが健康に及ぼす影響について、世界中で研究が進められています。

食品安全委員会が2024年6月に発表した資料「有機フッ素化合物(PFAS)の食品健康影響評価について」によれば、動物実験からは肝臓機能や体重減少等に影響を及ぼす可能性が指摘されており、人に対しては、コレステロール値の上昇や免疫系等との関連が報告されています。

ただし、どれだけの摂取量でどの程度健康に影響を及ぼすのかについては、確定的な知見はまだ報告されていません。

PFASによる健康影響については、下記の記事で詳しく解説しています。

 

【関連記事】PFASが人体に及ぼす影響は?健康リスクや国内の汚染事例

PFASとは

 

PFASが使用されているもの

PFASの中でも、PFOSとPFOAは、幅広い用途で使用されてきた化学物質です。各物質が使用された代表的な製品については、以下の表をご参照ください。

 

PFOS、PFOAが使われていた製品
PFOS 半導体用反射防止剤・レジスト、金属メッキ処理剤、泡消火薬剤など
PFOA フッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤、撥水剤、カーペット等の繊維製品など

参考:PFOS、PFOAに関するQ&A集 2024年8月時点|環境省

 

上記の製品以外で、フッ素コート剤を使用したフライパンや撥水スプレー等があります。しかし、これらの製品に使用されているフッ素樹脂は、PFOS・PFOAとは別の物質です。

過去にフッ素コート剤の製造過程でPFOAが使用されていたこともありますが、2013年末に企業の自主的な取り組みとしてその使用が全廃されました。

 

 

日本におけるPFAS汚染の状況

2人の男性技術員

日本では、全国各地の河川や地下水、水道水など、様々な場所でPFASの調査が行われています。

PFOSとPFOAには、国内の法律によって暫定目標値や指針値が設定されていますが、その値を超過する地点は多く報告されています。

以下に現在公表されている汚染状況の一部をまとめました。

 

調査名 調査対象 調査地点 PFAS超過地点
令和2年度有機フッ素化合物全国存在状況把握調査
(2021年6月22日公表)
河川
海域
地下水
湧き水
全国143地点 12都府県の21地点
令和4年度公共用水域及び地下水のPFOS及びPFOA調査
(2024年3月29日公表)
河川
湖沼
海域
地下水
38都道府県
1,258地点
16都府県の111地点
水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査
調査対象期間:2020年~2024年9月
(2024年12月24日公表)
水道水(上水道) 3,595件
※水道事業者等による回答件数
(件数)
 2020年:11件
 2021年:5件
 2022年:4件
 2023年:3件
 2024年:0件
※対象期間内のいずれかで、超過が確認された件数(重複を除いた件数)は14件
専用水道 1,929件
※設置者の内、検査を実施したという回答件数
対象期間内で全42件
調査期間終了後、新たに2件の検出報告あり

 

調査結果から、水道水や水道水源になる河川・地下水等、PFASによる汚染が全国各地で報告されていることがわかります。なお、PFAS超過が確認された地点では、飲用用途の水でないことの確認や、飲用に使用されないように都道府県等において対応を行っています。

また、環境省では全国調査や常時監視における調査結果を地図上にまとめた汚染マップも公開しており、日本の汚染状況が一目でわかりやすくなっています。

調査は引き続き行われているため、最新の情報に注視しましょう。

 

 

日本におけるPFAS規制の現状

日本でのPFAS規制の状況と変更点

日本におけるPFASの規制は、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)によって、PFOS・PFOA・PFHxSの製造や輸出入が原則禁止されています。

水道水や公共用水域においては、国が定めた暫定目標値・指針値が設定されているものの、現状では各事業者への要請にとどまっており、法的効力はありません。

 

水道法による飲料水の規制

日本では飲料水として利用される水道水は、水道法に基づく水質基準を満たす必要がありますが、PFOSとPFOAは、2025年2月時点で水質基準に含まれていません。

厚生労働省は2020年に、PFOSとPFOAを水質管理目標設定項目に位置付け、合計で50 ng/L以下とする暫定目標値を定めました。水質管理目標設定項目は水質管理上で注意喚起すべき項目であり、仮に目標値を超過した場合、水道事業者等に改善措置等が要請されます。

なお、PFHxSについては、調査時点で不明点が多い等の理由から、2021年に水質管理目標設定項目より下位の要検討項目に追加され、目標値は設定されていませんでした。

しかし、PFHxSを含むPFASの汚染事例が相次いだことを受け、2024年12月、環境省での検討会議で水道水におけるPFASの取り扱いの改正方針がついに議題に上がりました。

公表された方針案は次の通りです。

 

  • PFOSとPFOAを水質基準項目へ変更し、基準値は目標値と同じく合計で50 ng/Lとする
  • PFHxSは引き続き要検討項目に設定する
  • 施行は2026年4月1日を予定する

 

PFOSとPFOAが水質基準項目へ引き上げられた場合、水質検査等が義務化され、これまでの要請とは異なり、法的効力を持つことになります。また、この方針案が決定されたという報道もあったため、PFOSとPFOAの管理体制は、2026年に大きく変わると予想されています。

 

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(飲料⽔中のPFAS規制を進めている国や、各国の最新基準値、現在までのPFAS規制の動向など)

ぜひこちらからダウンロード下さい。

 

 

化審法による輸出入や使用の規制

化審法は、人の健康や動植物の生息・生育等に影響を及ぼす化学物質を対象に、製造・輸入の審査や管理、使用制限等について定めた法律です。

この中で、PFOS・PFOA・PFHxSが第一種特定化学物質に指定されており、製造・輸入等が原則禁止となっています。

また、2024年7月には、環境省が「PFOAの分枝異性体又はその塩」「PFOA関連物質」についても第一種特定化学物質に追加指定することを発表し、段階的な施行を経て2025年1月に全面施行されています。

さらに、「PFHxS関連物質」についても、第一種特定化学物質への追加指定の動きがあり、2025年以降に関連する省庁での審議が行われる見込みです。

 

水質汚濁防止法による水質規制

水質汚濁防止法は、公共用水域や地下水の水質汚濁を防止し、環境や国民の健康を守ることを目的とした法律です。公共用水域への排出や水質汚濁の状況監視、緊急時の措置等について規定されています。

PFOSとPFOAについては、2020年に水質汚濁に係る環境基準において、「人の健康の保護に関する要監視項目」に設定されました。この項目により、PFOSとPFOAの合計で50 ng/L以下という指針値が設けられています。

その後の審議の結果、2023年2月に水質汚濁防止法で指定物質に追加され、PFOSとPFOAに対し、事故時の応急措置や届出が義務付けられました。また、PFOSとPFOAを含む泡消火薬剤については、事故ではなく使用による流出についても情報提供を要請しています。

なお、PFHxSについては、不明点が多い等の理由で要調査項目として位置付けられ、現在も知見等の集積が行われています。

 

 

日本のPFAS規制における各省庁の取り組み

厚生労働省

国内のPFAS規制の検討・施行には多くの省庁が関わっており、それぞれが管轄領域における対策を実施しています。

対策の内容によっては、複数の省庁が連携をとりながら共同で担う場合もあります。ここからは、各省庁が主に実施しているPFASの取り組みについて紹介します。

 

環境省

環境省は、大気・水・土壌等の環境保全に関わる政策を担っており、水質汚濁防止法をはじめ環境に関する法令や水道法等の所管を行っています。

化学物質からの環境汚染防止対策も行っており、PFASに関する対応や規制検討においては、環境省が中心的な役割を担っています。

PFASに対する主な取り組みは以下の通りです。

 

環境省での主な取り組み
● 公共用水域等の水環境における指針値の設定(PFOSとPFOAの合計で50 ng/L以下)
● PFASの存在状況や水質に関する調査と研究
● 土壌中のPFAS暫定分析法の設定他、各分析法の公開
● 「PFASに対する総合戦略検討専門家会議」で総合的なPFAS対策を検討
● 「PFOS・PFOAに係る水質の目標値等の専門家会議」で水環境における目標値等を検討
● 「水質基準逐次改正検討会」で水道水の水質基準の見直し等を検討

 

2024年12月24日に開催された「令和6年度第2回水質基準逐次改正検討会」及び「第5回PFOS・PFOAに係る水質の目標値等の専門家会議」の合同会議では、水道水や公共用水域における
PFOSとPFOAの取り扱いについて議論され、水道水における取り扱いの改正案がまとめられています。

また、環境省では、PFASに関する一般消費者向けリーフレットの作成や、専門家会議の内容をまとめたWebサイトの公開等も行っており、国内で実施されているPFAS対策を総合的に情報発信しています。

 

厚生労働省

厚生労働省は、健康や医療、福祉、介護、雇用、年金等、人の健康や暮らしに関係する政策を担い、薬機法や社会福祉法等の法令を所管しています。

PFASに関する主な取り組みは次の通りです。

 

厚生労働省での主な取り組み
● 水道水中のPFOSとPFOAに対する位置づけ及び暫定目標値を設定(合計値として50 ng/L以下)
● 水道水中におけるPFOSとPFOAの検査方法策定
● 「水質基準逐次改正検討会」で水道事業におけるPFASの取り扱いを検討
● 「厚生労働科学研究」等で、水道におけるPFAS検出時の対応について検討

 

厚生労働省では水道に関する政策も担っており、水道水に関する分野でPFASに対する取り組みが実施されてきました。しかし、2024年4月に国土交通省と環境省に水道行政が移管されたため、取り組み内容は現在、環境省において引き継がれています。

 

経済産業省

経済産業分野を主とした政策を行っている経済産業省では、化学物質等の安全管理に関する政策も担っており、PFAS規制において重要な役割をもつ化審法等の法令を所管しています。

PFASに関する主な取り組みは次の通りです。

 

経済産業省での主な取り組み
● POPs条約に伴う対応
● PFOS・PFOA・PFHxSを化審法における第一種特定化学物質に指定、製造・輸入・使用等の規制措置の実施(※環境省と厚生労働省との共同対策)
● POPs条約の規制対象、または規制が検討されている化学物質に対する動向調査や代替物質等の検討

また、化審法は2001年より、環境省と厚生労働省も経済産業省とともに所管しています。

 

農林水産省

食料産業や食品安全に関する政策を担う農林水産省では、PFASを「リスク管理を優先的に行うべき有害化学物質の一つ」として位置づけています。

PFASに対する取り組みは以下の通りで、農林水産省のホームページで詳細や調査結果が公開されています。

 

農林水産省での主な取り組み
● 食品中に存在しうるPFASの含有実態の調査
● 食品中のPFASに関する試験研究
● PFOS・PFOAを含むPFASについての分析法開発
● 汚泥肥料中のPFOS・PFOAの分析法開発、公定法の公表
● 食品中のPFASに関する質問Q&Aの作成、公開

 

食品中のPFASに関する試験研究では、農地土壌や水等からのPFAS移行特性についての解明が現在も実施されています。

 

消防庁

消防庁(総務省)は、消防や救急のほか、災害や防災に関する対策を担っています。PFASに関しては、次のようにPFOSやPFOAを含む泡消火薬剤の対応に取り組んでいます。

 

消防庁での主な取り組み
● 各消防本部に対し交換及び代替の推進
● 泡消火薬剤の取り扱い基準遵守への周知
● 既存のPFAS含有泡消火薬剤の廃棄や処理方法の指導
● 泡消火薬剤の流出に対する届出の呼びかけ

 

食品安全委員会

食品安全委員会は、2003年に食品安全の分野において「科学的知見に基づき客観的かつ中立公正にリスク評価を行う機関」として内閣府に設置されました。PFASについても次のような取り組みが行われ、科学的な助言や情報を提供する独立機関として省庁を支えています。

 

食品安全委員会での主な取り組み
● 有機フッ素化合物(PFAS)ワーキンググループの設立
● PFOS・PFOA・PFHxSが人の健康に及ぼす影響を評価
● 健康影響評価の結果として、PFOSとPFOAのTDI(耐容一日摂取量)の設定
● 国内外の知見を収集、関係機関へ情報提供

PFASに関する最新の評価結果は2024年に公表されており、今後新たな知見が収集された場合は再評価を行う可能性を示しています。

 

 

日本企業もPFASへの対策が求められる

日本では、2010年に化審法でPFOSの輸出入や製造等が原則禁止となり、PFASの規制が始まりました。2020年には水道水や地下水の暫定目標値が定められ、全国の水道事業者等に対応を求めている状況です。

PFOSやPFOAについては、全国各地で高濃度の検出事例が発生しており、これを受けて「PFOSとPFOAを水道法上の水質基準へ引き上げることを決定した」との報道が2024年末にありました。

国内におけるPFAS規制の動きは、今後も強まっていく可能性が高いでしょう。今後は法的な規制だけでなく、社会の風潮として日本企業全体がPFASへの対策を求められることが予測されます。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本総研 河原崎海

ユーロフィン日本総研株式会社

浜松PFAS事業部 PFASグループ

Manager 河原崎 海

<経歴>

2002年 神奈川大学工学部応用化学科 卒業

2004年 神奈川大学工学研究科応用化学専攻 修士課程 修了

2018年 静岡県立大学大学院 薬食生命総合学府 食品栄養科学専攻 博士課程 単位取得満期退学
学士・修士課程では膜分離、博士課程では食品中の機能性成分に関する研究を行う。

2004年 (一財)静岡県生活科学検査センター入所後、水道水・環境試料の分析に従事し、2012年から農薬メーカー傘下の受託ラボにて食品・農薬分析、試験法開発、異物解析、食品中ノンターゲット分析事業の立上げや、農薬GLP・食品衛生法登録検査機関・ISO17025試験所認定の取得や維持管理を行う。ユーロフィングループ参画後は、品質保証、ラボ移転業務に従事し、2021年からユーロフィン日本総研にてアスベスト事業部統括とラボ移転を担当し、2024年からPFASラボの立上げを担当。

<発表>

 

 

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