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PFOSを含む廃棄物はどう処理すべき?処理方法と注意点について解説

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投稿日:2024年8月8日(2025年7月23日更新)

廃棄物

PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)は、PFAS(有機フッ素化合物)の一種です。PFASは通称で「永遠の化学物質(フォーエバー・ケミカル)」と呼ばれており、一度環境中に放出されると、長期間分解されず残存し続ける特性を持っています。

そのため、人体や環境へ影響が懸念されるPFOSを含んだ廃棄物は、適切な方法で処理しなければなりません。この記事では、PFOS含有廃棄物の処理方法や注意点について詳しく解説します。

 

INDEX

 

 

PFOSとは

PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)は、優れた難燃性・界面活性・耐薬品性などの性質をもち、消火剤や半導体など幅広い用途で使用されてきました。

その一方で難分解性・高蓄積性・長距離移動性などの特性もあり、環境中に放出されると分解されにくく、長期間残存し続けることが確認されています。

環境や食物連鎖を通してPFOSが体内に入った場合は「徐々に体外に排出される」とされていますが、長い時間が必要になります。EFSA(欧州食品安全機関)の調査では、体内に取り込まれたPFOSの量が半分になるまでの期間(半減期)を約5年と推定しています。

 

【関連記事】PFOSとはどんな物質なのか?人体への影響も含めて解説

若い女性の研究者

 

PFAS(有機フッ素化合物)とは

PFAS(有機フッ素化合物)は、炭素とフッ素の結合をもつ有機フッ素化合物のうち「ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物」を総称したものです。

PFASは1万種類以上あると推定されており、炭素数など構造の違いによって性質が異なります。中でも加工に適しており、撥水・撥油性や熱・化学的安定性などの物性をもつ一部のPFASは、撥水剤・コーティング剤・界面活性剤など多くの分野で重宝されてきました。

その中でも、特に汎用性が高い代表的な物質の一つがPFOSです。

PFASは環境や人体への影響が懸念されていますが、有害性が指摘されているのは一部のPFASに限られています(2025年5月時点)。ただし、PFASに関する研究や調査は国内外で進められているため、今後の動向と最新情報には注意が必要です。

PFASについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向まで

pfas

 

PFOSの規制内容

PFASの規制は世界中で進んでいますが、その中でもいち早く規制されたのがPFOSです。

PFOSは、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)において、2009年に附属書B(製造・使用・輸出入の制限)への追加が決定され、国際的な規制が始まりました。

POPs条約の加盟国である日本も条約の規制を受けて、PFOSを2010年に化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)の第一種特定化学物質に指定し、規制を始めています。これにより、国内でのPFOSの製造・輸入・使用が原則禁止となりました。

2025年時点の化審法では、下記3種類のPFASが第一種特定化学物質に指定されており、PFOSと同様の規制を行っています。

 

  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸):2010年に指定
  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸):2021年に指定
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸):2024年に指定

 

PFOAはPFOSと並んで幅広い用途で活用され、PFHxSは主にPFOS・PFOAの代替物質として使用されてきました。

日本におけるPFAS規制の詳しい内容は、下記の記事で解説しています。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)の規制対象物質とは?種類や使用用途

科学技術の研究

 

 

PFOS含有廃棄物の処理方法

PFOS含有廃棄物の処理方法

PFOSなどのPOPs対象物質を含む廃棄物については、POPs条約のほか、バーゼル条約の規制も関連します。

バーゼル条約は、有害廃棄物の国境を越える移動や処分に関する国際的な取り決めを定めたものであり、対象物質の個別指定は行わず、それらを含む廃棄物の移動・処理を規制する枠組みです。

POPs条約で廃絶および制限に指定された物質を含む廃棄物が、各国の法律で有害廃棄物と定義されることでバーゼル条約の対象となり、輸出入や処理の際に規制が適用される流れが一般的です。

同条約の規制対象であるPFOSの含有廃棄物について環境省は、適正な処理を確保するため「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」を2022年に公表しました。

概要は下記の通りで、PFOSとPFOA含有廃棄物の保管から分解までの処理方法について記載しています。

 

対象
  • PFOSまたはPFOA使用製品、もしくはPFOSまたはPFOAの原体が廃棄物になったもの
  • それらの製造、使用、廃棄等の段階から排出されるPFOS等またはPFOA等を含有する固形状または液状の廃棄物
記載項目
  • 保管(保管場所、掲示、保管容器など)
  • 処理委託(運搬や処分の委託)
  • 収集運搬
  • 分解処理(分解処理方法、管理目標値の設定、分解処理時の遵守事項、処理施設の構造など)

引用:PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する 技術的留意事項 令和4年9月 環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課|環境省

 

本文書では、泡消火薬剤に分類されるものが、主なPFOS含有廃棄物として想定されています。PFOSが付着した容器や配管、洗浄水、ふき取った布なども、含有廃棄物として取り扱わなければなりません。

また、化審法や廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律・廃棄物処理法)などの関連する法令も順守したうえで処理を行う必要があるとしています。

 

【関連記事】PFOSを含有する泡消火器とは?規制動向と背景について解説

消化、アクシデント

 

 

PFOS含有廃棄物を取り扱う際の注意点

工場内部

「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項(以下、留意事項)」では、対象となる廃棄物や、保管・運搬・分解などの処理に必要な事項を細かく記載しています。

この留意事項は、環境省のホームページから確認することが可能です。

ここでは、PFOS含有廃棄物(及びPFOA含有廃棄物)を取り扱うにあたり、本留意事項の中でも特に注意すべき点や、必要なタスクに焦点をあてて解説します。 

 

適切な処理ができる業者に委託する

PFOS含有廃棄物の運搬または処分を委託する場合は、以下の条件を満たした業者を選ぶ必要があります。このとき、PFOS含有廃棄物の取り扱いに十分な知識や技術を有しているかの確認も必要です。

 

  • 産業廃棄物の運搬や処分が業として許可されている
  • 事業範囲にPFOS含有廃棄物の取り扱いが含まれている

 

また、廃掃法の規定通り、引渡し時のマニフェスト(産業廃棄物管理表)公布と処理終了後のマニフェスト保管も義務付けられており、保管期間は5年とされています。

さらに、委託する際には次の事項を、あらかじめ処理業者に通知することが必要です。

 

  • PFOS含有廃棄物であること
  • 数量
  • 種類・性状
  • 荷姿
  • PFOS含有廃棄物を取り扱う際に注意すべき事項

 

環境省や一部の自治体などでは、ホームページ内で産業廃棄物処理業者の検索が可能になっており、委託できる業者がわからない場合に活用できます。

 

保管方法に関する規定

PFOS含有廃棄物の保管について、留意事項では保管場所や容器について記載しています。保管場所は複数の要件を満たす必要があり、詳細は下記の通りです。

 

保管場所に必要な要件
  • 周囲に囲いを設ける
  • 次に掲げる要件を備えた掲示板(縦・横ともに60 cm以上のサイズ)を見やすい箇所に設ける
    • PFOS含有廃棄物の保管場所である旨
    • 保管するPFOS含有廃棄物の種類
    • 積み上げ高さ
    • 保管場所の管理者氏名または名称、連絡先
  • PFOS含有廃棄物が保管場所から飛散、流出、地下浸透、並びに悪臭が発散しないよう適切な措置を講ずる
  • ねずみの生息や蚊、はえその他の害虫が発生しないようにする
  • PFOS含有廃棄物に他の物が混入しないための必要な措置を講ずる

引用:PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する 技術的留意事項 令和4年9月 環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課|環境省

 

上記の基本要件に加えて、関係者以外が容易に立ち入ることができない場所が保管場所として求められており、雨水などで流出しないように「屋内保管や床をコンクリート化または合成樹脂のシートなどで被覆する措置」も必要としています。

 

PFOS含有廃棄物の保管容器

PFOS含有廃棄物の保管容器については、次の3つの条件を満たしたものを用いるとしており、容器にはPFOS含有廃棄物である旨の表示が必要です。

 

  • 密閉できること
  • 収納しやすいこと
  • 損傷しにくいこと

 

PFASを含む使用済活性炭の取り扱い

不適切な保管状態であった使用済活性炭からPFOAなどが流出した事例を受け、2025年3月に環境省から「PFOS等を含む水の処理に用いた使用済活性炭の適切な保管等について」が発出されました。

PFOS等を含む廃棄物は種々ありますが、特にPFOSを含む水を処理した活性炭はそれらを多量に含んでいる可能性があり、保管方法によっては雨水等により流出するリスクがあります。この通知では、活性炭の保管状況を定期的に確認するなどして、環境中への流出を生じさせないように保管することを改めて求めています。

また、「PFOSなどが保管中に万が一溶出した場合には、関係自治体に情報共有することが望ましい」と記載されています。

 

運搬方法に関する規定(案)

運搬の際に求められている事項は次の通りです。

 

  • PFOS含有廃棄物が飛散、流出しないようにすること
  • 悪臭、騒音又は振動によって生活環境の保全上支障が生じないようにすること
  • 運搬車と運搬容器はPFOS含有廃棄物が飛散、流出、悪臭漏れのおそれがないものであること
  • PFOS含有廃棄物がその他の物と混合しないように、他の物と区分して運搬すること

 

運搬時の飛散や流出、曝露を防止する観点からの留意事項となっており、積込み・積卸し時の容器からの漏洩や損傷の目視確認も必要です。

また、運搬時の事故時に適切な対応をとるために、必要な物品や設備を備えることも求められています。

 

最終的には分解処理を行う

PFOSは残留性が高いため、留意事項でも「その他の廃棄物で実施されているような、脱水等の分解処理を行わない性状で埋立処分されることは、POPs条約に照らして不適切」と記載されています。

そのため、処分においては確実な分解処理(分解効率:99.999 %以上)が求められています。

PFOS含有廃棄物の処分は現時点において、約850 ℃以上の焼却(PFOA含有廃棄物の場合は約1,100 ℃以上推奨)による分解処理が要件を満たす処分方法です。

ただし、分解処理中に生じる排ガスや排ガス中のフッ素化水素(フッ素及びその化合物として)、廃水などの濃度については、他の関連法規の遵守が別途必要となります。

また、分解処理を行う前には「管理目標値の設定」や「確認試験の実施」が求められており、分解効率と管理目標値の要件を満たす場合には、焼却以外の分解処理を実施することも可能です。

PFASの処分工程や処分場の詳細については、下記の記事で解説しています。

 

【関連記事】PFASの処分場とは? PFASの処分方法と注意点について

ごみの山

 

 

コラム:PFAS含有廃棄物に関する最新の研究

海中の廃棄物

 

この章では少し視点を広げて、PFOSを含む廃棄物と関連する「PFAS全体の研究動向」について、2025年5月時点で最新の研究動向を紹介します。

PFOSを含む廃棄物の国内動向を予測する補足情報として、PFAS含有廃棄物の最新研究や分析技術の進展を理解する一助になれば幸いです。

 

PFOSの潜在的なリスク評価も重要

PFASに関する調査や議論では、対象の物質単体だけでなく、その物質になる前の段階である前駆体物質も懸念されています。

PFOSの前駆体物質としては、EtFOSE(エチルペルフルオロオクタンスルホン酸アミドエタノール)が知られており、撥水・撥油剤や紙のコーティングなど様々な用途で使われてきました。一部の研究によって「EtFOSEは好気条件下で、活性汚泥、土壌、海底底質の微生物反応によってPFOSを生成する」と報告されています。

そのため、廃棄物を処理する場合は、PFOSだけでなく「潜在的にPFOSを生成する可能性がある化学物質」にも注意する必要があるでしょう。

このような潜在的PFOSのリスク評価を実施する方法としては、「TOP(Total Oxidizable Precursor)Assay」を活用する方法があります。

TOP Assayは、酸化剤を添加して加熱分解し分析することで、将来的に毒性の高いPFOS・PFOAのような物質に変化する可能性のある前駆体(潜在的有害性)をリスク評価する方法です。

 

電子廃棄物から環境中へのPFAS浸出を確認

キーボードやケーブルなどの電子廃棄物(電子機器の廃棄物)に含まれるPFASに関する研究内容が、2025年1月に公開されました。

この報告では「電子廃棄物は世界で最も急速に増加している廃棄物の一つで、その多くが適切なリサイクルや廃棄処理を受けてない」とし、これらの廃棄物に含まれるPFASが浸出や揮発、粉塵発生、燃焼時の大気排出を通じ、環境に放出される可能性があるとしています。

この研究では、様々な電子機器を用いた浸出実験を実施しており、PFASの浸出量が最も多かった電子機器はケーブル(最大89 ng/L)であったとのことです。ケーブルの他、高濃度の順にキーボード、 電子ボード、 モニターが続いています。

また、最も多く検出されたPFASとして、次の結果も得られました。

 

PFASの種類 検出量
PFBA(ペルフルオロブタン酸) 最大42.2 ng/L
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸) 最大23.9 ng/L
PFHxA(ペルフルオロヘキサン酸) 最大23.7 ng/L
PFOA(ペルフルオロオクタン酸) 最大18.2 ng/L
PFHpA(ペルフルオロヘプタン酸) 最大16.7 ng/L

 

この研究報告では、電子廃棄物処理施設におけるPFAS放出を防ぐ適切な管理の必要性を訴えています。

 

バッテリー由来物質の検出がPFAS分析の改善に貢献

PFAS分析のためには、様々な分析方法が検討されており、開発や改良が続けられています。廃棄物管理施設におけるPFAS汚染の研究では、用いる分析法に関する新たな発見が報告されました。

数あるPFAS分析の中でEOF(抽出性有機フッ素化合物)分析は、抽出可能な有機フッ素化合物を分析する方法で、総PFAS量の把握などに使用されています。しかし、分析結果には未知の化合物が多く含まれており、その割合は様々なフッ素化合物と発生源に由来する可能性があるとのことです。

ここでは「バッテリー製造などで使用されるテトラフルオロホウ酸塩とヘキサフルオロリン酸が検出された」と報告されており、当該物質は無機フッ素ですが「未知な化合物の割合を大幅に減少させる」と示唆されています。

2つの物質の検出は大きな発見とされており「水の監視や処理を行うためのPFAS戦略に役立つ可能性がある」とのことです。

 

 

PFOS含有廃棄物の処理は適切な方法で行う

点検作業

PFOS含有廃棄物の処理には、廃掃法や留意事項により厳格かつ細かいルールが定められています。そのため、PFOS含有廃棄物の保管や運搬、分解などの処理を行う際は、必要に応じて専門的な業者に委託するなどし、適切に実施することが必須です。

また、廃棄物にPFOSが含まれていなくても、潜在的にPFOSを生成するリスクを抱えた化学物質があることにも留意し、適切な廃棄物処理を行いましょう。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 野島 智也さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ 
研究開発チーム

Specialist 野島 智也

<経歴>

2012年 筑波大学 理工学群 化学類 卒業
2014年 筑波大学 数理物質科学研究科 化学専攻 博士前期課程 修了
2014年にユーロフィン日本環境株式会社入社し、ダイオキシン分析に従事。

2020年からは有機分析チームの分析要員としてPFOS・PFOA分析の立ち上げに従事し、その後、R&Dグループとして国内の分析法、EPA法、ISO法等を立ち上げる。

2023年には独自法による排ガス中のPFAS一斉分析法を立ち上げる。

 

 

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