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PFASは中国でも厳格な規制へ。最新の法規制の流れと企業に必要な対応策

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投稿日:2024年6月26日(2025年9月10日更新)

※ 本記事は「PFOAは中国でも厳格な規制へ。法規制の流れと企業に必要な対応策」を更新したものになります。

中国国旗 

世界的にPFAS(有機フッ素化合物)の規制が進む中、一部のPFASは中国においても厳しい規制が行われています。

特に人体や環境への有害性が懸念される一部のPFASは、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)で国際的な規制を受けています。

また、2025年5月には、POPs条約の規制対象として新たなPFASの追加が決定されました。中国に生産拠点を持つ企業は、各国の規制動向と並行して中国国内のPFAS規制を把握することがより重要になります。

この記事では、中国におけるPFAS規制の内容や最新の規制動向について解説します。

 

INDEX

 

 

PFASは中国でも問題になっている

科学の発展

 

2021年1月に発表された清華大学の研究結果では、「調査対象都市において、約1億人の飲料水中で国際的な健康リスク基準を超えるPFAS濃度が検出された」と結論付けられています。

この研究では、中国66都市の飲料水サンプル526個が分析されました。研究結果の一部を下記にまとめています。

 

【研究結果の要点】

  • 中国東部と南西部が他の地域と比べてPFAS曝露リスクが高い
  • 飲料水中に含まれるPFAS(18種類)の合計濃度が最も高かった都市:

自貢市(502.9 ng/L)、連雲港市(332.6 ng/L)、常熟市(122.4 ng/L)、成都(119.4 ng/L)、無錫市(93.6 ng/L)、杭州市(74.1 ng/L)

※参考:日本における水道水の暫定目標値は、PFOS及びPFOAの合算値で50 ng/L以下

 

また、FDA(米国食品医薬品局)では、2022年に小売店で収集した魚介類サンプルに含まれるPFASの検査を実施しており、2024年に検査結果と見解が公表されています。

検査結果によると、「中国産の二枚貝(アサリ・ハマグリなど)の缶詰サンプルからPFASの一種であるPFOA(ペルフルオロオクタン酸)が検出された」とあり、さらに「その推定曝露量が健康に影響を及ぼす可能性が高い」と判断されています。

この結果を受けてFDAは、2025年2月に中国産の二枚貝を製造または加工する企業8社を輸入警告(輸入を拒否する)対象としたことを発表しました。中国でのPFAS汚染が国内に留まらず、国外の取引にも影響していることから、PFAS問題の深刻さがうかがえます。

PFASについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向まで

pfas

 

 

中国はPOPs条約に基づいたPFAS規制案を提案

POPs条約では、毒性や難分解性、生物蓄積性、長距離移動性などの性質をもつPOPs(残留性有機汚染物質)に対する規制を行っています。

中国は2004年にPOPs条約に加盟しており、条約の規定に従って国内でもPOPsの製造や使用、排出の削減を提案して取り組んできました。

POPs条約における規制対象は、附属書A「廃絶」、附属書B「制限」、附属書C「非意図的生成物」で指定されています。PFASについては、現在3種類が附属書に記載されており、内容は次の通りです。

 

対象物質 規制対象
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸) 附属書B(製造・使用・輸出入の制限)
PFOA(ペルフルオロオクタン酸) 附属書A(製造・使用、輸出入の原則禁止)
PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸) 附属書A(製造・使用、輸出入の原則禁止)

 

POPs条約で規制対象となった物質は、各締約国の国内法で規制することとなっており、中国では「中国厳格制限有毒化学目録(リスト)」を通じてPFAS規制を行っています。

 

 

中国におけるPFAS規制の最新動向

工事現場の男性

中国ではPFASの問題に対する様々な取り組みが継続的に行われてきました。ここでは、現時点で実施されているPFAS規制の最新動向について詳しく解説します。

 

重点管理対象新汚染物質リスト(2023年版)によるPFAS規制

中国の生態環境部は、2022年12月に「重点管理対象新汚染物質リスト(2023年版)」を公布し、2023年3月1日に発効されています。同リストは、これまで2020年版が施行されていましたが、2023年版の施行と同時に廃止となりました。

このリストに掲載されている化学物質は、特定の用途を除いて製造・加工・輸出入の禁止や廃棄などの措置が求められています。2023年版では、すでに記載されていたPFOSに加え、PFOAとPFHxSも指定されており、それぞれに必要な措置が細かく規定されました。

 

PFOSについては2019年にすでに禁止済み

PFOSは、2019年公開の重点管理対象新汚染物質リストに含まれており、他のPFASよりも先に製造禁止などの規制対象となっています。

2020年度版中国厳格制限有毒化学目録以降では、PFOSの輸出入を行う際には「有害化学物質輸出入環境管理通知書」が必要であり、その用途についてはPOPs条約の許可用途であることが定められました。

ただし、重点管理対象新汚染物質リストにおいて「2024年1月1日から輸入および輸出は禁止」という期限がついており、2025年8月時点では製造だけでなく輸出入も禁止されています。

 

2024年に河南省がPFAS関連物質の追加管理案を提出

河南省では、2024年12月に重点管理対象新汚染物質(2024年版)を通知しました。このリストには、PFOS・PFOA・PFHxSが含まれており、製造や加工などの禁止や制限事項を細かく記載しています。

このリストは地方自治体による独自の管理措置であり、国家レベルで公布されている「重点管控新污染物清单(2023年版)」とは別に策定されたものです。

また、PFASに取り組む自治体は河南省の他にもあり、取り組み内容や進捗具合に差があるものの、国全体としてPFASの監視体制が強化されつつあります。

中国におけるPFASに関する取り組みの一例

なお、中国では飲料水について、生活飲用水の衛生基準が定められています。2022年3月の改訂でPFOSとPFOAが水質参考指標(PFOS:40 ng/L、PFOA:80 ng/L)として追加されましたが、あくまで参考指標のため法的規制がないのが現状です。

 

2025年の第12回締約国会議でPFCAsが新たに附属書Aに追加

中国が加盟するPOPs条約の第12回締約国会議(COP-12)が、2025年4月29日から5月9日にかけて開催されました。この会議で、PFASの一種である長鎖PFCAs(ペルフルオロカルボン酸類)が条約の附属書A(廃絶)に追加されることが決定されています。

PFCAは「ペルフルオロカルボン酸」と呼ばれる化学物質群の総称で、炭素の数が9から21の長鎖PFCAs(C9〜C21)が、規制対象として製造や使用を禁じられます。

これにより、中国の重点管理対象新汚染物質リストでも内容が更新される可能性があるため、今後の動向に注意が必要です。

 

 

PFASを含む製品の輸出時の注意点

中国のPFAS規制では輸出に関する規制も行っているため、PFASに関する製品を日本から中国へ輸出する場合には注意が必要です。

重点管理対象新汚染物質リスト(2023年版)では、収載したPFASの輸出入について、以下のような記載があります。

 

PFOS PFOSを輸入または輸出するには「有害化学物質輸入(輸出)環境管理届出書」を申請する必要がある(2024年1月1日から輸入および輸出は禁止)
PFOA PFOAは「中国厳格制限有毒化学目録(リスト)」に含まれているため、輸入または輸出する場合は「有毒化学物質輸入(輸出)環境管理排出通知」を申請する必要がある
PFHxS 輸入及び輸出は禁止

 

PFHxSに加え、PFOSについても現在は輸出入が禁止されているため、規制対象の中で中国へ輸出できるPFASはPFOAのみとなります。

PFOAは製造や加工が原則禁止とされていますが、一部の用途においては監査を受けたうえでの使用が認められています。

また、PFOAは2023年版の「中国厳格制限有毒化学目録(リスト)」にも記載されたため、輸出入する場合は「有毒化学物質の輸入(輸出)環境管理公表通知書」を中国の生態環境部に申請しなければなりません。ただし、申請は中国輸出入企業の義務となるため、中国へ輸出する場合は、輸出先への情報伝達が必要となります。

 

 

中国への輸出はPFAS非含有を証明することが重要

世界的にPFAS規制の動きが加速する中、中国でも対応が強化されています。

2025年のPOPs条約締約国会議では、長鎖PFCAsが新たに廃絶対象物質として採択され、今後の中国国内でのPFAS規制も一層進むと予測されています。

こうした背景から、PFASを含む製品や原材料を中国へ輸出する際は、PFAS非含有である証明が求められる可能性が高まっています。特に日本企業が中国とPFAS関連物質の取引を行う際には、輸出規制や使用制限の影響に十分な注意が必要です。

今後も規制の適用範囲や対象物質の拡大が予想されるため、最新の動向を常に把握し、必要な準備や社内対応を進めておくことが重要です。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 藤田 潤さん

ユーロフィン日本環境株式会社

ラボラトリー事業部 POPsグループ

PFAS・PCBチーム 藤田 潤

<経歴>

2021年 神奈川大学 理学部 卒業

クルマエビの卵巣成熟度を評価する新たな指標遺伝子の探索について研究を行う。
卒業後、株式会社アルプスビジネスサービスに入社し、絶縁油に含まれるPCB分析を携わる。
2022年よりユーロフィン日本環境株式会社でPCB分析を行い、2023年よりPFAS分析に従事。

<発表>

2023年9月 第30回日環協・環境セミナー全国大会「水中の揮発性PFAS分析法の検討」
資料はこちらからダウンロードいただけます。

 

 

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