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企業が知るべきPFASの条約・規則・規制のまとめ|国内外の最新動向

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投稿日:2025年11月4日

国際ビジネスを連想させる地球儀と裁判用ハンマー

PFAS(有機フッ素化合物)は、自然環境中で分解されにくく、長期間にわたり環境や人体に残留しやすい特性から、「永遠の化学物質」とも呼ばれる化学物質群です。一部のPFASには健康や環境への影響が懸念されており、世界各国で法規制の動きが加速しています。

特に米国やEUでは、国際条約よりも先行して独自の厳格な規制を導入しており、日本の制度にも影響を与えています。こうした動向を踏まえ、企業にとっては「どの規制が自社の製品や取引に関係するのか」を正確に把握することが重要です。

この記事では、PFASに関する国際的な条約や主要国の規制の中から、製品の取引や輸出入に関連する代表的な枠組みを紹介します。

 

INDEX

 

PFAS(有機フッ素化合物)の世界的な規制とは

環境保護と国際法を象徴する地球儀、ガベル、天秤

PFASは、炭素とフッ素の強固な結合を持ち、水や油をはじく特性から、食品包装、繊維、半導体など幅広い分野で利用されてきました。しかし、極めて分解されにくく、生体内や環境中に蓄積されることから、国際的に規制対象となる物質として注目されています。

近年では、一部のPFASに関する研究で毒性や発がん性などのリスクが懸念されており、法規制を通じて使用や排出を抑制する動きが世界中で進んでいます。

このような状況の中、欧州での大規模な飲料水汚染や米国での訴訟問題が社会的関心を集め、各国政府が規制強化に踏み切るきっかけとなりました。

また、PFASは1万種類以上あるとされ、その構造や毒性の違いから、物質ごとの評価や包括的な規制の難しさも浮き彫りになっています。

PFASについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

 【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向までPFAS

 

 

世界的にPFASを規制するPOPs条約

国際的な合意を象徴する書類署名の場面

POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)は、有害なPOPs(残留性有機汚染物質)から人の健康や環境を守ることを目的として、2004年5月17日に発効した国際条約です。

条約では物質の管理対象に応じて、附属書A(廃絶)、附属書B(制限)、附属書C(非意図的生成物)が設けられており、これらに記載された化学物質の製造・使用・輸出入が規制されています。

2025年4月29日から5月9日にかけて開催された第12回締約国会議(COP-12)では、炭素鎖9〜21の長鎖ペルフルオロカルボン酸(LC-PFCA)とその塩および関連物質を附属書Aに追加することが正式に決定されました。

2025年8月時点でPOPs条約の附属書に記載されているPFASは、以下の通りです。

 

附属書 記載されているPFAS
附属書A(廃絶)
  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)
  • LC-PFCA(長鎖ペルフルオロカルボン酸)
附属書B(制限)
  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)

 

 【関連記事】ストックホルム条約(POPs条約)におけるPFOSの規制内容とは?

議会

 

 

米国のPFAS規制

星条旗と天秤

米国では、EPA(米国環境保護庁)が2021年に「PFAS戦略ロードマップ(PFAS Strategic Roadmap)」を発表し、PFAS問題に対する包括的な対策を進めています。

さらに2023年には、TSCA(有害物質規制法)に基づき、製品の製造・輸入事業者に対してPFASに関する情報報告および記録保持を義務付ける規則が公表されました。

ここでは、米国におけるPFAS規制の中でも特に重要なPFAS戦略ロードマップとTSCA報告義務について解説します。

 

PFAS戦略ロードマップ

PFAS戦略ロードマップ(PFAS Strategic Roadmap)は、2021年10月にEPAが策定した2021~2024年版の包括的な戦略計画です。
研究(Research)、規制(Restrict)、浄化(Remediate)の3本柱に基づき、PFASによる環境・健康への影響に対処することを目的としています。

代表的なアクションプランとして、以下のような対策が掲げられていました。

 

  • 飲料水に関する国家基準(MCLs)の制定
  • 汚染浄化責任(責任主体の明確化)
  • 製造・輸入段階での規制強化
  • 毒性評価や科学的データ収集の促進

 

2024年には、7種類のPFASがTRI(有害物質排出目録)の対象物質リストに追加され、PFOSおよびPFOAがスーパーファンド法(CERCLA)の対象物質に指定されました。これにより汚染浄化費用の請求や法的責任追及が可能となったほか、4月には初めての全国飲料水基準(MCLs)が制定され、PFOAとPFOSに対して最大4 ng/Lという厳格な基準値が導入されています。

最新の動向として、2025年5月に「飲料水規制の一部実施期限を延長する案などの見直しをEPAが検討している」との報道がありました。ただし、EPAは同年5月の公式リリースで、PFOAとPFOSの基準値(MCLs)自体は維持すると明言しており、規制の方向性は引き続き厳格に保たれています。

 

 【関連記事】米国におけるPFAS規制の動向は?関連企業の報告が義務化へ
ニューヨーク、星条旗

 

【関連記事】米国のスーパーファンド法とは?特徴やPFAS規制との関係性
川に流れ込む工場排水

 

TSCA(有害物質規制法)

TSCA(有害物質規制法)は、米国において化学物質の製造・輸入・使用を規制する基本法です。

1976年に制定され、2016年の改正で、リスク評価・情報報告の義務が強化されました。

EPAは2023年、TSCA第8条(a)(7)項に基づき、2011年以降にPFASを製造(輸入を含む)した各個人に対して特定のデータをEPAに報告することを義務付ける規則を公布しました。

この規則に関する最新の報告期限は以下の通りです。

 

  • 製造業者(または輸入業者):2026年10月13日までに報告提出が必要
  • 中小企業で成形品(articles)のPFAS含有データのみを報告する場合:2027年4月13日までに提出

 

報告対象には、化学物質の構造や用途、製造量、曝露経路、環境放出の有無などが含まれており、PFASの流通・使用に関する網羅的な情報収集を目的としています。

 

【関連記事】TSCAの規制内容とは?法律の概要や報告の必要性について解説
商品の検品

 

 

EUのPFAS規制

欧州旗と天秤

EUでは、主にREACH規則、POPs規則、CLP規則の3つの法制度を通じてPFASの規制を行っています。それぞれの制度は目的や対象範囲が異なるため、EUと取引のある企業は各規則の概要と適用範囲を把握しておくことが重要です。

現在のEUにおけるPFAS規制の最新情報をさらに詳しく知りたい方は、下記のホワイトペーパーをご覧ください。

Vol.1ではEU全体のPFAS規制動向、Vol.2ではPOPs条約との関係、Vol.3ではREACH規則の役割や各国制度との比較を取り上げており、シリーズを通じてEUのPFAS規制の全体像を体系的に学べる内容になっています。

 

EUにおけるPFAS規制の現状を分かりやすくまとめた資料3部作を配信しております。
第1弾「EUにおけるPFAS規制の現状 -2025年最新の規制動向について-」
第2弾「EUのPFAS規制とPOPs条約の関係性 -国際的枠組みへの影響について-」
第3弾「EUのREACH規制 -欧州での役割と他規則‧各国規制との⽐較-」
★こちらからダウンロードいただくと、3部作全て閲覧いただけます。
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EUのREACH規則

 

REACH規則

REACH規則は、EU域内で流通するすべての化学物質について、登録・評価・認可・制限を義務付ける制度です。

製造者・輸入者・販売者などの事業者が、物質のリスク情報を事前にECHA(欧州化学品庁)に登録・共有する義務を負うことから、EU域内への輸出入に直接関わる法規制として企業活動への影響が大きい特徴があります。

2023年には、ドイツ・デンマーク・オランダ・ノルウェー・スウェーデンの5ヵ国が共同で、約1万種類のPFASに対する包括制限案をECHAに提出しました。

2025年8月時点では科学的評価を進めている段階であり、2025〜2026年に施行し、EU全体のPFAS規制が大幅に強化される見通しです。

 

【関連記事】【最新版】ヨーロッパ輸出で注意すべきREACH規則のPFAS規制リスト

調査員

 

POPs規則

POPs規則は、POPs条約のEU域内実施法として制定されたもので、POPsの製造、使用、輸出入、上市を厳格に制限または禁止しています。

PFOS、PFOA、PFHxSといった一部のPFASは、POPs条約に基づき附属書に追加されており、EUではこれに加え、条約よりも厳格な閾値や制限条件を設定している点が特徴です。

目的は、これらの有害物質の環境中への排出を最小限に抑えることであり、輸出規制にも直結しています。

 

【関連記事】残留性有機汚染物質に関する規則(POPs規則)(EU)2019/1021の改正について

 

CLP規則

CLP規則は、EU域内で流通する化学物質や混合物について、危険性の分類・表示・包装を義務付ける制度で、REACH規則と連携して運用されています。

2023年には改正があり、新たなハザードクラスとして以下の分類などが追加されました。

 

  • ヒトの健康に対する内分泌かく乱性
  • 環境に対する内分泌撹乱性
  • 難分解性・生体蓄積性・毒性(PBT)
  • 難分解性・移動性・毒性(PMT)

 

上記の改正は、明確にPFASが規制対象と決められたものではありませんが、今後一部のPFASがPBTやPMTに該当する可能性もあります。

CLP規則は消費者や事業者がPFASのリスクを正しく理解・管理するための基盤となっています。

 

【関連記事】ECHA(欧州化学機関)の役割とは?主な活動内容やヨーロッパへの影響

欧州旗

 

 

国内のPFAS規制

日本国旗を背景にした裁判用ハンマーと天秤

日本では、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)によって、PFASを含む製品の輸入や製造などに関する規制を行っています。

化審法は、人の健康や環境に有害なおそれのある化学物質に対して、事前審査と必要に応じた使用制限を設けることで、国民生活および環境の安全を確保することを目的とした法律です。

PFASに関する規制については、2010年にPFOS、2021年にPFOA、2023年にPFHxSが化審法の第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入・一部例外用途を除く使用が原則禁止されています。

企業が製品を輸出入する際には、指定物質の含有有無や用途制限への対応が求められており、国際的な規制との整合性を図る観点からも、輸出先の制度とあわせた管理体制の構築が重要になります。

 

【関連記事】化審法とはどんな法律?役割や化学物質の対象範囲、PFASの分類について

化学薬品と規制

 

 

各国PFAS規制の動向を把握しておきましょう

PFASを取り巻く世界の規制動向は、現在も進化を続けています。

特に2025年は、COP12によって新たなPFASがPOPs条約の附属書に追加されたほか、EUの包括的なPFAS規制案の審議が本格化するなど、国際社会のルール整備が急速に進んでいる状況です。

こうした変化に伴い、各国の法制度も見直しが進められる可能性があり、日本におけるPFAS規制も今後の国際的な合意や評価結果を受けて、拡充・強化される可能性があります。

製品の取引や輸出入に関わる企業にとっては、制度の変化を見逃さず、最新の規制動向に対応できる体制を整えておくことが不可欠です。各国の動きに注目しつつ、自社製品が規制対象となるリスクを早期に把握し、柔軟に対応していく姿勢が求められています。

 

 

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ユーロフィン日本環境株式会社
PFAS MEDIA編集部

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