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PFAS規制は国際会議でどう変わる?最新の決定内容と影響を解説

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投稿日:2025年10月15日

国際会議

スイスで開催されたPOPs(残留性有機汚染物質)に関する国際会議の議論結果が、2025年5月13日に環境省と経済産業省より発表されました。

PFAS(有機フッ素化合物)に関しては、POPs条約第12回締約国会議(COP12)において新たなPFASが規制対象となることが決定したため、日本における今後の動向には注意が必要です。

この記事では、POPs条約COP12における最新情報と、日本のPFAS規制への影響について解説します。

 

INDEX

 

POPs条約とは

POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)は、残留性有機汚染物質の製造や使用、排出などを規制する条約です。

毒性・難分解性・生物蓄積性・長距離移動性などの性質を持つ化学物質が規制対象で、これらから環境や人の健康を保護することを目的に策定されました。POPs条約では、附属書で対象物質などを規定しています。主な内容は以下の通りです。

 

  • 附属書A(廃絶):製造・使用、輸出入の原則禁止
  • 附属書B(制限):製造・使用、輸出入の制限
  • 附属書C(非意図的生成物):排出の削減及び廃絶

 

現在は日本を含む186ヵ国とEUが加盟しており、各締約国には条約を担保するための規制が求められています。(2025年9月時点)

POPs条約についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

 【関連記事】ストックホルム条約(POPs条約)におけるPFOSの規制内容とは?

議会

 

 

POPs条約COP12が2025年に開催

国際会議で握手

2025年4月28日から5月9日にかけて、有害物質に関する3つの国際会議(POPs条約・バーゼル条約・ロッテルダム条約の締約国会議)が、スイスのジュネーブで合同開催されました。

そのうち、POPs条約の締約国会議(COP12)において、PFASに関する重要な決定が下されています。

 

POPs条約COPとは

POPs条約の加盟国が参加する締約国会議は、これまでに今回を含めて12回開催されてきました。締約国会議は「COP(Conference of the Parties)」と略されることが多く、2025年のPOPs条約第12回締約国会議の場合、回次と組み合わせて「COP12」と表記されています。

議論の内容は、POPs条約の補助機関であるPOPRC(残留性有機汚染物質検討委員会、POPs検討委員会)における検討事項や、締約国からの提案事項です。規制対象の新規追加や既存対象物質の見直しなどの審議を行い、決定を下しています。

 

PFASに関する過去の事例

POPs条約では、これまでに3つのPFASに対して廃絶や制限などの規制を決定しています。

 

POPs条約におけるPFASの決定事例
PFAS 決定時期 決定事項
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸) COP4(2009年) 附属書Bに追加
PFOA(ペルフルオロオクタン酸) COP9(2019年) 附属書Aに追加
PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸) COP10(2022年) 附属書Aに追加


PFOSは他の2つと異なり、附属書A(廃絶)ではなく、目的や一部用途によって制限付きで使用を許可する附属書B(制限)に追加されています。

ただし、COP9でPFOAが廃絶対象となった際に、PFOSの制限範囲に対する見直しも行われ、より厳しい条件での制限となりました。

 

POPs条約COP12における決定内容

POPs条約COP12では、POPRC第20回会合(2024年9月)での勧告事項や締約国からの要請事項などについて議論されました。その結果、附属書A(廃絶)への新規追加や、既存対象物質の規制内容の更新が決定しました。

 

POPs条約附属書A(廃絶)に追加
物質名 用途 一部除外用途
クロルピリホス 殺虫剤など 規定あり
中鎖塩素化パラフィン
(炭素数14~17までのものであって塩素の含有量が全重量の45%以上であるもの)
金属加工油剤・難燃性樹脂原料など 規定あり
長鎖ペルフルオロカルボン酸(LC-PFCA)とその塩及びLC-PFCA関連物質
(炭素数9~21までのもの)
フッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤など 規定あり

参考:ストックホルム条約第12回締約国会議(COP12)の結果の概要2025年5月13日 |経済産業省

 

既存対象物質の規制内容更新
物質名 更新内容
ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及び PFOA関連物質及びペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸フルオリド(PFOSF) 次の泡消火薬剤用途における製造及び使用の適用除外を2030年6月2日まで延長
・液体燃料から発生する蒸気の抑制
・液体燃料による火災のために配備されたシステム(移動式及び固定式の両方を含む。)
UV-328 次の用途において、2030年末までの使用に関する適用除外を追加
航空機の断熱ブランケット及びデッキ用の水密テープ、航空機の構造及び機械、内装、電気系統、非常用、推進、環境制御、飛行制御システム用のポリウレタン及びポリアミド接着剤、ポリウレタンコーティング

参考:ストックホルム条約第12回締約国会議(COP12)の結果の概要2025年5月13日 |経済産業省

 

改正された附属書の発効は、国連事務局が改正に関する情報を各締約国に送付してから1年後とされています。COP12の改正における発効日は、2025年5月時点では未だ公表されておりません。

 

 

長鎖PFCAがPOPs条約の規制対象に

水球内にPFAS

POPs条約COP12において、PFASの一種である「長鎖PFCA(ペルフルオロカルボン酸)」の附属書A(廃絶)追加が決定しました。ここでは、長鎖PFCAについての概要やCOP12による規制内容について解説します。

 

PFCA(ペルフルオロカルボン酸)とは

PFCAはPFASの一種で「ペルフルオロカルボン酸」と呼ばれる化学物質群の総称です。

単体ではなく一つのグループを総称することから、「ペルフルオロカルボン酸類(PFCAs)」と呼ばれることもあります。

PFCAには、炭素の数(炭素鎖の長さ)で様々な種類があり、その数によって短鎖PFCAや長鎖PFCAとまとめられることもありますが、明確な定義はありません。そのため、PFCAに関する情報を確認する際は、該当する炭素数を確認することが大切です。

PFCAについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

 【関連記事】PFCAとは?物質の特徴と最新の規制動向について解説
研究室で使用される複数のガラスフラスコと液体

 

POPs条約COP12で決定した長鎖PFCA規制の内容

POPs条約COP12で決定した長鎖PFCAの規制内容は、附属書A(廃絶)追加による「製造・使用・輸出入の原則禁止」です。

対象の長鎖PFCAは、炭素数9から21までのPFCAとされており、フッ素ポリマー加工助剤、熱媒体、界面活性剤などに使われてきました。

また、長鎖PFCAの規制では、次の用途における適用除外についても規定されています。

 

  • 交換部品として設計された半導体
  • 大量生産を中止した自動車の交換部品

 

ただし、適用除外にはそれぞれのケースで条件・期限が設けられているため、注意が必要です。詳細については、POPs条約の会議文書の内容を確認することが推奨されます。

 

EUでは2023年からPFCA規制を開始

EUの機関であるECHA(欧州化学品庁)は、長鎖PFCA(炭素数9から14)の規制開始を2023年2月22日に公表しています。

EUでは、REACH規則(化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則)を策定しており、対象の長鎖PFCAを同規則の制限対象物質に加えて規制を始めていました。

ECHAの見解によると、「長鎖PFCAはPFOAの代替物質として使用される可能性がある」とのことで、規制によって代替物質として使用されることを防止できるとしています。

規制は2023年2月25日より適用され、対象となった6つの長鎖PFCAは、EU全域において市場への流通ができず、ほとんどの用途で使用できません。

REACH規則について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

【関連記事】【最新版】ヨーロッパ輸出で注意すべきREACH規則のPFAS規制リスト

調査員

 

 

日本のPFAS規制と今後の影響

水辺にPFASと書かれた缶

日本ではPFASに対して、POPs条約だけでなく国内外の動向も踏まえて、様々な対策を講じてきました。ここでは、国内の主なPFAS規制の内容や、POPs条約による影響について解説します。

 

日本におけるPFAS規制の内容

日本でPFAS規制に関係する主な法律は、以下の3つです。

 

  • 化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)
  • 水道法
  • 水質汚濁防止法

 

化審法は、人や動植物に悪影響を及ぼす恐れがある化学物質に対して、事前審査や製造、輸入、使用などの規制を行う法律です。PFASに関しては、PFOS・PFOA・PFHxSが第一種特定化学物質に指定されており、製造や使用が原則禁止とされています。

水道法では、水道水に関する規制を行っており、定められた水質基準への適合が必須です。

PFASについては現在、水質基準ではなく法的効力のない「水質管理目標設定項目(PFOS・PFOA)」と「要検討項目(PFHxS)」に設定されていますが、2026年4月にPFOSとPFOAを現在の暫定目標値から水質基準へ引き上げることが予定されています。

水質汚濁防止法は、工場などから公共用水域に排出される水を規制する法律です。PFASでは、PFOSとPFOAが指定物質に指定されており、事故時の応急措置や届出が義務付けられています。

日本のPFAS規制の現状をより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

 【関連記事】日本のPFAS規制の現状は?国内の最新動向や各省庁の取り組み

2人の男性調査員

 

POPs条約の影響を受ける化審法

POPs条約は加盟国に対し、製造や輸入の原則禁止(附属書A)や制限(附属書B)などを義務付けています。

そのため、POPs条約の附属書追加に伴い、現状国内で規制されているPFAS(PFOS・PFOA・PFHxS)以外にも、将来的に新たなPFASが第一種特定化学物質に追加される可能性があります。

日本でもCOP12の規制内容を受けて、環境省・厚生労働省・経済産業省の3省が長鎖PFCAを化審法の第一種特定化学物質に指定する政令改正案を公表しており、今後正式に規制対象に追加される可能性があります。

 

【関連記事】化審法とはどんな法律?役割や化学物質の対象範囲、PFASの分類について

化学薬品と規制

 

過去事例からみる規制の動向

POPs条約で規制対象となったPFASに対し、日本がこれまでに実施した主な対応を表にまとめました。

PFAS POPs条約追加決定  国内での対応
PFOS 2009年(附属書B) 化審法(第一種特定化学物質)規制 2010年
水道水の水質管理目標設定項目に追加 2020年
水質汚濁防止法(指定物質)規制 2023年
PFOA 2019年(附属書A) 化審法(第一種特定化学物質)規制 2021年
水道水の水質管理目標設定項目に追加 2020年
水質汚濁防止法(指定物質)規制 2023年
PFHxS 2022年(附属書A) 化審法(第一種特定化学物質)規制 2024年
水道水の要検討項目に追加 2021年

 

POPs条約に伴う国内の対応は「化審法における第一種特定化学物質への判定」から行われてきました。PFASの場合、水道水や水環境などにおける調査も開始され、国内外の動向を踏まえた対策を順次講じています。

POPs条約の規制が始まった際は、化審法だけでなく他の規制にも動きが出る可能性があるため、注意が必要です。

 

 

日本における今後の動向に注視が必要

2025年に開催されたPOPs条約COP12において、新たなPFASの附属書A(廃絶)追加が決定しました。

COP12で新たに規制されるPFASは炭素数9から21までの長鎖PFCA で、EUではPFCA の中でも一部の化学物質が2023年からREACH規則によって先行的に規制されていました。

日本でも長鎖PFCAの規制は化審法の改正案を通じて具体的に検討が進められており、製造や使用の制限が導入される方向性が明確になりつつあります。そのため、最新の審議状況をを継続的に確認することが重要です。

 

 

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記事の監修者

品質保証グループ

ユーロフィン日本環境株式会社 品質保証グループ

受託分析機関としての信頼性や適合性を担保するために、品質システムの整備や監視活動に従事。特に、当社では分析実施項目の大部分でISO/IEC 17025の認定を取得し、PFASについてもISO/IEC 17025認定を取得しており、それら認定の維持管理を主要業務としている。また、国内外のグループ会社と連携した相互監査や技能試験評価、品質会議など、世界中に展開しているEurofinsグループの強みを活かした取り組みも実施。

 

 

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