JavaScript is disabled. Please enable to continue!
Mobile search icon
PFAS MEDIA >> 世界のPFASニュース >> PFAS,2025

2025年のPFAS規制動向まとめ|国内外の規制の動きと最新情報

Sidebar Image

投稿日:2025年12月22日

PFAS検査イメージ

2025年は、国内外でPFAS(有機フッ素化合物)をめぐる政策や規制に大きな進展があった一年です。

日本では水質基準の見直しや食品関連の新たな評価が進み、国際的にはPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)で長鎖PFCAsが新たに規制対象として追加されるなど、PFAS管理の枠組みがさらに強化されました。

本記事では、2025年のPFASに関する代表的なニュースを、国内と海外に分けてわかりやすく解説します。

 

INDEX

 

 

国内のPFAS規制に関する最新動向

日本国内のPFAS規制動向イメージ

2025年は、水道水質基準の改正やミネラルウォーターの成分規格設定、農畜水産物におけるばく露評価の公表など、国民の生活に関わるPFAS関連の動向に注目が集まりました。

ここでは、企業の対応にも影響する主要な発表や行政の動きを中心に、押さえておきたいポイントを整理します。

 

6月:国内でPFAS水質基準の見直しが決定

2025年6月30日、環境省はPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)及びPFOA(ペルフルオロオクタン酸)について、水道水の水質基準を新たに設定する省令改正を公布しました。

これにより、2026年4月1日から、PFOS及びPFOAは水道水における水質管理目標設定項目から水質基準項目へ位置付けが変更され、暫定目標値として用いられてきた「PFOS及びPFOAの合計値で50 ng/L以下」が、そのまま水質基準における基準値として適用されます。

また、水道法施行規則の改正により、施行後はPFOS及びPFOAに関する水質検査について、水道事業者等に対しておおむね3か月に1回以上の実施が求められます。

さらに、公共用水域及び地下水については、PFOS及びPFOAの合計値50 ng/Lとして設定されていた「指針値(暫定)」が、「指針値」として正式に位置付けられました。

 

6月:ミネラルウォーターのPFOS及びPFOAの基準値を決定

消費者庁は2025年6月30日、消費者庁はミネラルウォーター類(殺菌または除菌を行うもの)におけるPFOS及びPFOAの成分規格を新たに設定しました。

規格値は、PFOSとPFOAの合計で50 ng/L以下とされており、水道水の水質基準と同じ濃度が採用されています。これにより、飲用機会の多いミネラルウォーターについても水道水と同水準の管理が求められることになります。

なお、成分規格は告示日から施行されますが、事業者の準備期間として2026年3月31日までの猶予期間が設けられています。猶予期間内に製造管理や検査体制の整備など、基準値に適合するための対応が求められます。

 

7月:2024年に実施した水質調査の結果が公開

環境省は2025年、全国の水道水におけるPFOS及びPFOAの調査結果を公表しました。

今回の公表では、暫定目標値を超過した地点の状況や、これまでのフォローアップの進捗が示されています。

2020(令和2)年度から開始されたモニタリングでは、暫定目標値を超過した水道事業等の数は年々減少しており、令和6年度9月30日時点では、調査に協力した事業者の中で暫定目標値を超過した事業者はゼロとなりました。

また、給水人口の状況については、98.2%が暫定目標値以下の水質であることが確認されています(残りは専用水道および未確認)。これにより、多くの地域で水道水におけるPFOS及びPFOAの管理が着実に進んでいることが示されています。

 

7月:PFOS等の濃度低減のための対策技術公募が選定

環境省は2025年7月、PFOSやPFOA等の濃度低減を目指す「対策技術の実証事業」において、実証対象となる技術を選定したことを公表しました。

令和7年4月〜5月に実施された公募には74件の応募があり、審査の結果、土壌、地下水、産業廃棄物最終処分場の浸出水に関する計9件の技術が採択されました。

選定された技術には、吸着・分離、分解、処理後のモニタリングなど、PFASの低減に向けた多様なアプローチが含まれています。

環境省は、これらの実証で得られた成果を地方自治体や関係事業者に提供し、今後の汚染対策や技術導入の検討に役立てる方針を示しています。

 

【関連記事】環境省のPFAS対策とは?受託企業における取り組みを詳しく解説

環境省

 

8月:農畜水産物に含まれるPFASのばく露評価を公表

農林水産省は2025年8月、令和6年度に実施した国産農畜水産物に含まれるPFASの実態調査や試験研究の結果として、PFOS・PFOAのばく露評価を公表しました。

調査対象となった流通品14品目について、分析結果(濃度)と平均消費量を用いて総摂取量を試算したところ、PFOSで0.10 ng/kg体重/日、PFOAで0.08 ng/kg体重/日と算出されました。

これらは令和6年度に食品安全委員会が設定したTDI(耐容一日摂取量:各20 ng/kg体重/日)と比較して、いずれも十分に低い水準にあると評価されています。

農林水産省は今後、品目によりPFASの含有実態が大きく異なる可能性が示唆されたことを踏まえ、令和7年度には対象品目を拡大した含有実態調査や、特異的に高い値が見られた試料の実態把握・要因調査を進めていく方針です。

 

 

POPs条約のCOP12で新たに長鎖PFCAsが規制対象に

握手

POPs条約とは、人や環境に有害な影響を及ぼす残留性有機汚染物質(POPs)を世界的に廃絶・削減することを目的とした国際条約です。

2025年に開催された第12回締約国会議(COP12)では、PFOSやPFOAに続くPFASとして、LC-PFCAs(長鎖ペルフルオロカルボン酸)とその関連物質が、条約の附属書A(廃絶対象)に追加されることが決定しました。

この決定を受けて日本を含む締約国では、LC-PFCAsに対する規制強化が求められる可能性が出てきました。

日本国内でも化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)に基づき、LC-PFCAsの規制強化等に向けた審議が6月に開始されるなど、規制対応に向けた具体的な動きが加速しています。

 

 

海外の2025年PFAS最新動向

海外の規制マップイメージ

 

2025年は国内だけでなく、海外のPFAS規制も大きな動きが見られました。

本章では、特に動きの大きかった米国とEUを中心に、2025年に公表・決定された代表的な制度改正や政策動向をピックアップしてご紹介します。

 

米国はPFAS規制の開始時期を延期

米国は 2024年にPFOAとPFOSの飲料水中最大許容濃度(MCL)に法的拘束力を持たせる最終規則を公表しましたが、この遵守期限を2031年まで延長する方針を2025年5月に発表しました。

EPA(米国環境保護庁)は、2024年にPFOS及びPFOAの飲料水中のMCL(最大汚染物質レベル)に法的拘束力を持たせる最終規則を公表しましたが、2025年5月に「MCL自体は維持したうえで遵守期限を2031年まで延長する内容の規則案を策定する方針」を発表しました。

また、TSCA(有害物質規制法)の第8条(a)(7)に基づき、過去にPFASを製造・輸入した事業者に課されるデータ報告義務についても、報告期間の開始時期および提出期限が段階的に見直されています。

2025年5月の暫定最終規則により、多くの事業者の提出期限は2026年10月13日まで、小規模事業者のうちPFASを含む製品の輸入のみを行う事業者については、2027年4月13日まで延長されました。

一方で、国防権限法に基づき、TRI(有害物質排出目録)の報告対象とするPFASの範囲は拡大を続けており、2025年の報告(提出期限:2026年7月1日)には、報告対象PFASが205物質となることが示されています。

 

EUの食品包装に関する規制が決定

EUでは、2025年1月に規則「包装及び包装廃棄物規則(Packaging and Packaging Waste Regulation:PPWR)」が公布されました。これは包装材のリサイクル性向上や環境負荷低減を目的とした包括的な規則であり、その中で食品接触包装におけるPFAS規制も明確に位置づけられています。

PPWRでは、2026年8月12日以降、一定濃度以上のPFASを含む食品接触包装をEU市場に上市することが禁止されます。EU域外から輸出される食品包装も対象となるため、日本企業を含むサプライヤーは、輸出向け包装材のPFASフリー化や代替材料の検討を進める必要があります。

さらに、REACH規則(化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則)に基づき、約1万種類のPFASを対象とする包括的な製造・使用等の制限提案についても、ECHA(欧州化学物質庁)で検討・調整が続けられています。

EU加盟国であるフランスでは、2025年2月に「PFAS法(Loi PFAS)」が制定され、PFASを含む消費者製品の一部使用を段階的に制限・禁止する方針が示されました。

これにより、2026年1月以降、PFASを含む化粧品、スキーワックス、一般消費者向けの衣料品・靴およびそれらの防水剤について、原則として製造・輸入・輸出・市場投入が禁止されます(一部の防護・保安用途を除く)。

さらに2030年以降は、不可欠な使途や主権維持に不可欠な用途、産業用テクニカルテキスタイルなどを除き、PFASを含む繊維製品全般が規制対象に拡大される予定です。フランスへの輸出入を行っている国内企業は、今後PFAS法への対応も検討する必要があります。

 

【関連記事】【2025年施行】EUで進むPFAS規制強化|組織・規則の動向まとめ

規制

 

オーストラリアがPFASの輸入規制開始

オーストラリアでは、PFASに対する規制が大幅に強化されています。2025年7月1日から、PFOS・PFOA・PFHxSおよびそれらの関連物質について、輸入・製造・使用・輸出が原則禁止となりました(一部の用途については例外あり)。

工業用化学物質環境管理基準(Industrial Chemicals Environmental Management Standard:IChEMS)に基づき、これら3種類のPFASが最も厳しい規制区分である(Schedule 7)に追加されたことによるものです。

(Schedule 7)に分類された化学物質は、環境に深刻または不可逆的な影響を及ぼすおそれがあり、本質的な用途がないと評価された物質と位置付けられています。

あわせて、これらのPFASを含む廃棄物についても、新たな処理要件が導入されており、廃棄段階での環境への放出抑制が求められています。なお、2025年7月1日時点ですでに市場に出回っている製品の使用については、一定の猶予が設けられています。

 

カナダがPFAS規制を本格化

カナダ政府は、毒性物質としてPFASの包括的な規制を本格化させています。

2025年3月に「PFASの状況に関する最終報告書」を公表し、フッ素ポリマーを除くPFAS類をCEPA(カナダ環境保護法)第64条の有害性基準を満たすと結論づけました。これに基づき、PFASをCEPAの(Schedule 1 part 2)に追加するための手続きが進められています。

リスク管理アプローチでは、PFASの用途を段階的に禁止する枠組みが示されており、フェーズ1として、PFAS(フッ素ポリマーを除く)を含む泡消火薬剤の使用禁止を優先的に進める方針が提示されています。

2025年夏から秋にかけて、こうした規制案に関する協議(パブリックコメント)の実施が予定されており、消防用途からのPFAS排出削減が最初のターゲットとされています。

さらに、PFASの排出実態を把握するためのデータ基盤整備として、国家汚染物質排出インベントリ(National Pollutant Release Inventory:NPRI)へのPFAS追加も検討されています。2024年9月には、131種類のPFASを新たに報告対象とする案が公表されており、2025年の排出分について2026年6月までの報告を求める方針が示されています。

 

 

2025年以降も国内外でPFAS規制が進む可能性あり

2025年は、COP12での新たなPFAS追加や、各国・地域での制度改正を通じて、PFASを個別物質ではなく物質群として包括的に管理する流れが一段と明確になった一年でした。

日本でも水道水質基準やミネラルウォーターの成分規格の見直し、農畜水産物におけるばく露評価など、生活に直結する分野での対応が進められています。

一方、米国では飲料水規制の遵守期限延長といった動きが見られるものの、EUやカナダ、オーストラリアでは、幅広いPFASを対象とした使用制限や報告義務の導入が進み、サプライチェーン全体での対応が求められつつあります。

PFASを取り扱う可能性がある企業や事業者は、自社の製品・原材料・排水・廃棄物がどの規制の対象となり得るかを整理しつつ、最新の動向を継続的に確認し、早めに対応方針を検討しておくことが重要です。

 

  

ユーロフィンのPFAS分析については

こちらからお問い合わせください

お問い合わせ

 

 

記事の監修者

門田さん

ユーロフィン日本環境株式会社

ラボラトリー事業部 POPsグループ PFAS・PCBチーム

Manager 門田 めぐみ

<経歴>

2008年 大阪女子大学 理学部環境理学科生物科学専攻 卒業
2010年 大阪府立大学大学院 理学系研究科分子科学専攻博士前期課程 修了
生理活性天然物の全合成に関する研究を行う。
卒業後はナガセケムテックス株式会社にて機能性材料の研究開発に従事。その後、2013年より協和発酵キリン株式会社にて医薬品の品質管理業務に携わる。
2016年よりユーロフィン日本環境株式会社に入社し、農薬やPCBなどの有機分析業務に従事。現在はPFAS・PCB分析チームのマネジメントを担当し、各種分析法の導入や運用体制の構築にも取り組んでいる。

<発表>

 

 

関連記事

環境省

環境省のPFAS対策とは?受託企業における取り組みを詳しく解説

環境省が進めるPFAS対策を解説。水道基準や指針値の改正、実証事業に採択された受託企業の取り組みも紹介。

飲料水をコップに注ぐ様子

PFASの基準値とは?日本と各国の飲料水基準や超過時の対応策

PFAS基準値を国際比較。日本の基準化動向とEU飲料水指令、各国のガイドライン・超過時対応を整理。

ラボで検査している女性研究員

アジア諸国のPFAS規制の現状は?規制の傾向と最新動向について

アジア各国におけるPFAS規制の最新動向を国別にわかりやすく整理。各国の法規制の違いや今後の規制強化の動きなどを解説。

 

 

PFAS MEDIA TOPに戻る→


【参考資料】