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EPA(米国環境保護庁)はどんな組織?PFAS規制の内容と併せて解説

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投稿日:2024年5月21日(2025年7月23日更新)

EPA記事

日本において、PFAS(有機フッ素化合物)の規制は環境省が主体となって行いますが、米国ではEPA(米国環境保護庁)が主体となって進めています。同国におけるPFASの規制を知るうえで重要な組織となるため、併せて押さえておきましょう。

この記事では、EPAがどのような組織で、具体的に何を行っているのかをわかりやすく解説します。

 

INDEX

 

 

EPA(米国環境保護庁)とはどんな組織か?

EPA

EPAとは「Environmental Protection Agency」の略で、日本の環境省に相当する中央省庁のような存在です。水、大気、土壌、生物、衛生、法律などの専門官だけでなく、環境犯罪を調査するための捜査官も在籍しています。

 

EPAの具体的な活動内容

EPAの具体的な活動内容は、日本の環境省のように、人の健康および大気・水質・土壌などに関する環境の保護や保全を行うことです。具体的には、以下の内容が主に行われています。

 

  • 環境に関する規制の策定と施行
  • 環境問題に関する調査と研究
  • 一般消費者や企業への情報提供および教育活動

 

EPAでは、農業・電力・自動車など多くの分野を対象に、大気・水・化学物質・廃棄物・汚染浄化など様々な規制を行っています。

環境問題に関する調査は、空気・水・健康リスクなど多くのテーマで行われており、それらの調査内容を公開することで情報を発信しています。

また、アスベストや鉛といった有害物質に対する個別の対策も行っており、PFAS対策もその一つに含まれます。

 

 

EPAによるPFAS関連の規制動向

PFASに対するEPA(米国の環境保護庁)の主な取り組み

EPAはPFASに対して、環境調査から規制の立案、施行にいたるまで様々な施策を講じてきました。ここでは、EPAによる規制の取り組みの中でも代表的なものを解説します。

 

2021年2月:PFASの規制強化に意欲

EPAでは、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)の有害性情報を入手した1990年代より、様々なPFAS対策を講じてきました。近年では2019年に、PFASに対処するための包括的国家アクションプランを発表しています。

2021年のジョー・バイデン政権時には、ノースカロライナ州環境品質局 (DEQ)長官としてPFAS汚染解決に尽力したマイケル・リーガン氏が、EPA長官に就任しました。リーガン氏は、就任前の2月に行われた承認公聴会でPFASに関して次のように述べ、PFAS規制強化に意欲をみせました。

 

  • バイデン政権下のEPAがPFASを最優先事項の一つとして取り扱う
  • PFASに関わる排水上限や水質基準の設定を目指す
  • 規制の施行までは各州政府が独自の対応をとりやすいように、連邦政府が採り得るあらゆる方法で支援していく

 

2021年10月:戦略ロードマップを公表

2021年10月、EPAからPFAS戦略ロードマップ(PFAS Strategic Roadmap: EPA’s Commitments to Action 2021-2024)が発表されています。これは、2021年から2024年にかけて、EPAがPFASに対処するための具体的な取り組みについて説明したものです。

この取り組みでは「研究」「規制」「浄化」の3つに重点を置き、各々に次のような目標が掲げられました。

 

目標 代表的な取り組み例
研究
  • PFASに関するエビデンスを構築し、毒性値などを確立させる
  • 曝露経路、人間の健康や生態系への影響に対する科学的理解を深める
規制
  • 可能な限り法的権限に基づく規制を行う
  • 製造業者などにPFASに対処する責任を負わせる
浄化
  • PFASの処理・廃棄・浄化などの技術を加速させる

 

掲げた目標を達成するために、「化学物質安全・汚染防止」「水道」「大気」「研究開発」などの担当局が期間内に実施する対策を提示しています。その後、2023年12月と2024年11月には、戦略ロードマップの進捗報告書がEPAから公表されました。

ユーロフィン日本環境株式会社では、EPAのロードマップを日本語でわかりやすく要約した資料や、米国連邦政府のPFAS対策・戦略についてまとめた資料を配信しております。

ぜひこちらからダウンロード下さい。

 

EPAのロードマップを日本語でわかりやすく要約した資料や
米国連邦政府のPFAS対策や戦略についてまとめた資料を配信しております。

ぜひこちらからダウンロード下さい。

米国のPFAS戦略 EPA(米国環境保護庁)のPFAS対策 2021~2024年までの取り組みと目標 具体的な行動

 

2023年10月: 報告ルールの策定

EPAは2023年10月に、TSCA(有害物質規制法)に基づくPFASの報告に関する規則を米国の官報で公表しました。この規則には、以下の内容などが盛り込まれています。

 

  • 報告すべきPFASの範囲
  • 報告内容
  • 報告形式

 

EPAでは対象となるPFASを構造で定義しており、該当する可能性があるPFASを少なくとも1,462種類特定しているとのことです。2011年1月1日以降のいずれかの年に、対象のPFASおよびPFAS含有製品を製造・輸入した全ての企業が報告義務を課せられました。

該当企業は、使用や生産量、廃棄などに関する情報をデータで報告する必要がありますが、2025年3月時点で未だに提出期間は始まっておりません。当初は2024年11月に提出を開始する予定だったものの、準備が間に合わず、提出開始が2025年7月へ延期されています。

 

2024年4月:PFASの飲料水基準を最終決定

EPAは2024年4月に、6種類のPFASについて飲料水基準の最終決定を公表しています。内容は以下の通りです。

 

対象PFAS(※) MCL(最大汚染レベル) MCLG(最大汚染レベル目標)
PFOA 4 ng/L 0 ng/L
PFOS 4 ng/L 0 ng/L
PFHxS 10 ng/L 10 ng/L
PFNA 10 ng/L 10 ng/L
HFPO-DA(通称:GenX化合物) 10 ng/L 10 ng/L
PFHxS、PFNA、HFPO-DA、PFBSのうち2つ以上を含む混合物 1(単位のない指標「ハザード指数」) 1(単位のない指標「ハザード指数」)

引用|Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS) Final PFAS National Primary Drinking Water Regulation|EPA

(※)PFOA(ペルフルオロオクタン酸)・PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)・PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)・PFNA(ペルフルオロノナン酸)・HFPO-DA(ヘキサフルオロプロピレンオキシド二量体酸およびそのアンモニウム塩)・PFBS(ペルフルオロブタンスルホン酸)

 

飲料水のPFAS規制については、これまでにも生涯健康勧告値として暫定的な設定(2009年・2016年・2022年)をしてきましたが、いずれも法的効力がありませんでした。

この基準では、法的効力のあるMCL(最大汚染レベル)と、法的効力をもたないMCLG(最大汚染レベル目標)を設定しています。

5種類のPFASに対する個別設定だけでなく、PFASの混合物に対しても、ハザード指数(複数の有害物質が同時に存在する際、その合計値で健康リスクを測る基準)が設定されています。

EPAはこの基準により、今後数年間で「約1億人の飲料水中のPFAS曝露や数千人の死亡を防止」「PFASに起因する深刻な病気が数万件減少」などが達成できると予想しています。

 

2024年4月:スーパーファンド法でPFOS・PFOAを指定物質に追加

スーパーファンド法とは「包括的環境対処・補償責任法(CERCLA)」の通称名で、公衆衛生や環境を危険にさらす可能性のある有害物質の放出に対応するための法律です。化学や石油産業に課税を課し、管理されていない有害物質廃棄処理場などを浄化するための信託基金(スーパーファンド)にあてられています。

EPAは2024年4月に、PFOSとPFOAをスーパーファンド法に基づく有害物質に指定する規則を発表しました。この規則では、1ポンド(0.454 kg)以上のPFOSとPFOAの放出が確認された場合、24時間以内の報告が義務づけられています。

また、有害物質を放出し汚染させた者は、汚染の除去や修復などに対する費用負担といった財政的責任を負わなければいけません。当時のEPA長官であったマイケル・リーガン氏は、この施策により「EPAは多くの汚染場所に対処し、より迅速に浄化を達成できる」と述べています。

 

 

PFASに関わる分析方法「EPA Method」も公表

研究を行う女性研究員

EPAでは、化学物質による汚染の実態を知るための分析方法「EPA Method」も策定しています。

 

EPA Methodとはどのような分析方法なのか

「EPA Method」は、EPAが化学物質や汚染物質の濃度を測定するために開発した分析方法です。対象によっては、外部組織と共同で開発しており、公表された分析手順は公式サイトから確認できます。

EPA Methodには番号が付けられており、中でもPFASに関する分析法は、「EPA Method 533」「EPA Method 537.1」「EPA Method 1633」などが該当します。

いずれも、LC-MS/MS法と呼ばれる方法を採用した分析法ですが、各々によって試薬など用意するものは異なります。

 

EPA Method 1633の特徴とは

「EPA Method 1633」は、土壌・廃水・表層水・地下水・底質・埋立地浸出液・魚および他の組織試料など多くの試料に含まれるPFASを対象に、最大40項目を分析できる方法です。

EPAが公表している他の分析法「EPA Method 533」「EPA Method 537.1」と比較しても、分析可能なPFASの数が多いことが特徴です。
対象試料に含まれるPFASの全体像をより精密に捉えることができ、多角的な解析が実現します。

 

【EPAが公表した分析法の一例】

  EPA Method 1633 EPA Method 533 EPA Method 537.1
対象試料 環境中の水、土壌、生物の組織など 飲料水 飲料水
分析可能なPFAS数 40項目 25項目 18項目

 

ユーロフィン日本環境株式会社は国内の公定法にとどまらず、「EPA Method 1633」を導入するとともに国内初のISO17025認定を取得しました。その他、「EPA Method 533」「EPA Method 537.1」など、状況に応じて様々な分析法を用いたPFAS分析が可能です。

PFAS分析を依頼したい場合は、ぜひ一度ご相談ください。

 

 

EPAの規制動向には今後も注視すべき

メモを取る男性

米国は、PFASに対する規制をいち早く進めています。

2025年1月に就任したドナルド・トランプ大統領は、2月に「プラスチック製ストローを紙製ストローに置き換える取り組みを終了させる大統領令」に署名しました。これはコスト面だけでなく、一部の研究により紙ストローにPFASが含まれる可能性があると示唆されたことも理由の一つです。

米国に生産拠点を構えて輸出入を行う日本企業が決して珍しくない以上、今後EPAがどのような規制を設けるかには注目する必要があります。PFASに関連する米国の最新情報には常に注視しておきましょう。

 

 

ユーロフィンのPFAS分析については

こちらからお問い合わせください

お問い合わせ

 

 

記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 野島 智也さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ 
研究開発チーム

Specialist 野島 智也

<経歴>

2012年 筑波大学 理工学群 化学類 卒業
2014年 筑波大学 数理物質科学研究科 化学専攻 博士前期課程 修了
2014年にユーロフィン日本環境株式会社入社し、ダイオキシン分析に従事。

2020年からは有機分析チームの分析要員としてPFOS・PFOA分析の立ち上げに従事し、その後、R&Dグループとして国内の分析法、EPA法、ISO法等を立ち上げる。

2023年には独自法による排ガス中のPFAS一斉分析法を立ち上げる。

 

 

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