化審法の第一種特定化学物質とは?規制の内容とPFASとの関連性

投稿日:2025年12月24日

第一種特定化学物質とは、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)で指定される物質の一つです。
化審法では化学物質の性状に応じた規制を行っており、中でも第一種特定化学物質は製造や輸入が厳しく制限されるため、企業活動に大きな影響を与えます。
本記事では、化審法の第一種特定化学物質について詳しく解説するとともに、PFAS(有機フッ素化合物)規制との関連性や最新情報なども合わせて紹介します。
INDEX
化審法とは
化審法は、新たに製造・輸入される化学物質の事前審査や市場に出た後の管理措置、化学物質の種類に応じた規制措置などについて定めた法律です。
化学物質は「分解性」「蓄積性」「人や動植物への毒性」などの性状や、環境中での残留状況に応じて分類されています。
| 物質の種類 | 概要 | |
| 第一種特定化学物質 | 「難分解性」「高蓄積性」「人への長期毒性又は高次捕食動物への長期毒性」がある物質 | |
| 監視化学物質 | 「難分解性」「高蓄積性」があり「人への長期毒性又は高次捕食動物への長期毒性」は不明の物質 | |
| 第二種特定化学物質 | 人の健康や生態への影響リスクがある物質 | |
| 優先評価化学物質 | 人や生態への影響などについて優先的な評価が必要とされている物質 | |
| 一般化学物質 | 上記4種以外の化学物質 | |
| 特定一般化学物質 | 一般化学物質のうち、人の健康や生態に悪影響を及ぼすおそれのある物質 | |
参考:化審法の体系|経済産業省
規制内容は分類された化学物質によって異なっており、最も厳しいものが第一種特定化学物質になります。
化審法について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
【関連記事】化審法とはどんな法律?役割や化学物質の対象範囲、PFASの分類について
第一種特定化学物質の規制内容と義務

第一種特定化学物質は、「難分解性、高蓄積性及び長期毒性又は高次捕食動物への慢性毒性を有する化学物質」と定義されています。
これは「自然環境で分解されにくく、また、体内に蓄積されやすく、人の健康や動植物の生態に影響を及ぼす可能性がある」物質を指し、2025年11月時点で当該物質に指定されている物質は39項目あります。
第一種特定化学物質に指定された場合、製造・輸入・使用などに厳しい規制がかかるため、事業等で規制物質を取り扱う可能性がある企業は、法規制に沿った対応が求められます。
ここでは、第一種特定化学物質の規制内容について詳しく解説します。
「製造」と「輸入」は原則禁止
第一種特定化学物質は「原則禁止」と認識されることが多いものの、化審法上は製造・輸入を完全に禁止しているわけではありません。
化審法では、一定の条件を満たした場合に限り製造・輸入を認める厳格な許可制としており、許可取得の可否が実質的な判断基準となります。
許可に必要とされる主な条件は次の通りです。
| 第一種特定化学物質の製造・輸入許可の主な要件 | |
|
※上記は許可取得で特に重要な要件を抜粋したものです。詳細は法令・逐条解説をご確認ください
参考1:化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律|e-GOV
参考2:化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 【逐条解説】|経済産業省
これらの要件は、環境汚染防止の観点で定められており、製造や輸入の数量抑制、企業の事業安定性や製造管理能力を求める内容となっています。
しかし、いずれの要件も厳しいことから、許可を取得するのは非常に困難です。
また「需要が生じることは限定的な場合に限られるため、第一種特定化学物質の製造や輸入は原則として認められない」といわれており、実際には原則禁止と同等とされています。
「使用」と「製品輸入」には制限がある
第一種特定化学物質の使用には制限があり、試験研究用途と政令で定める「例外的に認める用途(エッセンシャルユース)」以外での使用は禁止されています。
エッセンシャルユースは、下記の条件を満たす場合に限り認められますが、2025年11月の時点で容認された用途のある第一種特定化学物質は3つのみです。
- 他の物による代替が困難
- 使用による環境汚染が生じず、人や動植物への悪影響がない
また、第一種特定化学物質自体の輸入は原則禁止ですが、第一種特定化学物質が使用された製品にも制限があります。
化審法では「第一種特定化学物質が使用されている場合に輸入できない製品(政令指定製品)」を定めており、製品が条件に該当した場合は輸入を行えないため注意が必要です。
取扱事業者としての義務
第一種特定化学物質の取扱事業者に課せられる義務は、取扱方の種類によって異なります。
具体的な内容を以下にまとめました。
| 取扱方 | 課せられる義務 | |
| 製造 |
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| 輸入 |
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|
| 使用 |
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|
| 取扱全般 |
|
|
参考:化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律|e-GOV
取扱全般では、製造・輸入・使用だけでなく、運搬や貯蔵なども含めた「第一種特定化学物質に係る事業全般」が対象となるため注意が必要です。
技術上の基準は第一種特定化学物質によって異なりますが、「保管方法や保管容器、容器等の点検及び漏出した際の措置」などの基準適合が求められます。
また、第一種特定化学物質を譲渡・提供する場合は、容器や包装又は送り状に「使用された製品であることや含有率、注意事項」などの表示が必要です。
規律違反による罰則
化審法では規律違反による罰則が規定されているため、取り扱いには十分注意する必要があります。
第一種特定化学物質に関する主な罰則は以下の通りです。
| 違反事項 | 罰則 | |
| 製造・輸入許可 | 3年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人については1億円以下の罰金 | |
| 使用制限 |
|
|
| 製品輸入 | 3年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人については1億円以下の罰金 | |
| 基準適合義務・表示義務 |
|
|
参考:化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律|e-GOV
また、経済産業省は2025年4月に、第一種特定化学物質の取扱に対する注意喚起を通知しています。
内容は「第一種特定化学物質が使用されている場合に本来輸入できない製品が、輸入・販売されていたこと」に対する注意喚起であり、この通知でも違反した場合の罰則について言及されています。
PFASは第一種特定化学物質に含まれている

PFASは、OECD(経済協力開発機構)が「分子内に少なくとも1つの完全フッ素化メチル基(–CF₃)またはメチレン基(–CF₂–)をもつフッ素化アルキル物質」と定義している化学物質群です。
この定義に該当する化学物質は非常に多く、現在では1万種類以上が存在すると推定されています。
PFASは、撥水性・撥油性、耐熱性、化学的安定性などの優れた特性から、工業用途から日用品まで幅広い分野で利用されてきました。一方で、難分解性、高蓄積性、長距離移動性といった性質をもつものも多く、これらは化審法における第一種特定化学物質の指定基準と一致する性質です。
本章では、そのなかでも実際に第一種特定化学物質に指定されているPFASについて、規制の経緯や例外措置を含めて詳しく解説します。
第一種特定化学物質に指定されるPFAS
2025年11月時点で、第一種特定化学物質に指定されている代表的なPFASは以下の物質です。
- PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
- PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
- PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)
PFOSは半導体用反射防止剤や金属メッキ処理剤、泡消火薬剤などに、PFOAはフッ素ポリマー加工助剤や界面活性剤などに使用されてきました。
一方、指定が最も遅かったPFHxSは、先に指定されたPFOSやPFOAの代替物質として利用されてきた経緯があります。PFHxSの用途もこれら2物質と類似しており、泡消火薬剤、金属メッキ処理剤、コーティング剤などに使用されてきました。
なお、2024年の政令改正により、PFOAの分枝異性体や関連物質(前駆体を含む)も第一種特定化学物質に追加指定されており、規制対象は拡大しています。
化審法におけるPFASの例外措置
化審法でエッセンシャルユースが定められたPFASは、PFOAの関連物質である「8:2FTOH(8:2フルオロテロマーアルコール)」と「PFOI(ペルフルオロオクチル=ヨージド)」の2物質です。
8:2FTOHでは「特定の医療機器製造に使用する原料物質」、PFOIでは「医薬品製造に使用する原料物質」の製造用途が例外的に認められています。
また、エッセンシャルユース指定はないものの、PFOS等を含有する消火器・泡消火薬剤などに対しても、例外的な取扱いが認められています。これは、既に製造・設置済みの製品在庫が多く、災害時のみの限定使用という特性上、短期間で代替製品に切り替えることが困難と判断されたためです。
そのため、PFOS等を含有する消火器・泡消火薬剤には「取扱上の技術基準」と「譲渡・提供時の表示義務」が設けられており、これらに従って取り扱う限り、化審法上の問題はないとされています。
ただし、PFOS等の環境排出抑制の観点から、可能な限り早期の代替品への切り替えが求められています。
【関連記事】PFAS規制の例外的な取り扱いは?世界と日本の動向について
第一種特定化学物質とPOPs条約の関係性
POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)は、残留性や毒性の高い物質から人や環境を守ることを目的とした国際条約です。条約では、規制対象物質に対して様々な規定を設けており、加盟国は国内で条約を担保する義務があります。
日本は2002年に本条約に加盟しており、条約に対応するための国内法が化審法です。ここでは、第一種特定化学物質とPOPs条約の関係性について解説します。
POPs条約は第一種特定化学物質指定に直結する
POPs条約の主な規制内容は以下の通りです。
- 製造・使用・輸出入の原則禁止(附属書A)
- 製造・使用、輸出入の制限(附属書B)
- 非意図的生成物(附属書C)の排出削減と廃絶
- 在庫(ストックパイル)や廃棄物の適正処理
規制対象となる物質の条件は「毒性・難分解性・生物蓄積性・長距離移動性」をもつことで、この条件は化審法における第一種特定化学物質の指定条件と一致しています。
POPs条約で新たに附属書入りした物質は、日本国内でも第一種特定化学物質として指定される可能性が極めて高く、事実上直結するといえます。このため、定期的に開催されるPOPs条約締約国会議(COP)の決定内容には注意が必要です。
国内のPFAS規制もPOPs条約が起点
第一種特定化学物質に指定されたPFASは、以下のように、いずれも指定前にPOPs条約で規制が決定しています。
| PFASの種類 | POPs条約規制が決定 | 第一種特定化学物質に指定 | |
| PFOS | 2009年(附属書B) | 2010年 | |
| PFOA | 2019年(附属書A) | 2021年 | |
| PFHxS | 2022年(附属書A) | 2024年 | |
また、国内では化審法による規制だけでなく、環境中や水道水に含まれるPFASへの対策も開始されました。POPs条約が起点となり、現在もPFASに関する様々な調査や議論が行われています。
国内のPFAS規制について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
【関連記事】日本のPFAS規制の現状は?国内の最新動向や各省庁の取り組み
2025年のPOPs条約締約国会議で新たなPFAS規制が決定
2025年4月から5月にかけて開催されたPOPs条約第12回締約国会議(COP12)において、新たなPFAS規制が決定しました。
この会議では、新たに3物質を同条約の附属書A(廃絶)に追加することを決定しており、そのうちの1つがPFASである「LC-PFCAs(長鎖ペルフルオロカルボン酸)」(※)です。
決定を受け、国内では2025年10月3日付けで「長鎖ペルフルオロカルボン酸を含む3物質を化審法における第一種特定化学物質に指定する案」が発表されました。詳細については2026年以降に審議予定とされており、今後の動向に注意が必要です。
POPs条約締約国会議とPFAS規制の関係性について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
【関連記事】PFAS規制は国際会議でどう変わる?最新の決定内容と影響を解説
(※)炭素数が9から21までのもの、その塩と関連物質も含まれる。
第一種特定化学物質を理解して新たなPFAS規制に備えよう
第一種特定化学物質は、環境中で分解されにくく、生物や人への影響が懸念される物質として、化審法で最も厳しく管理される区分です。
PFOS・PFOA・PFHxSに続き、2025年のCOP12では長鎖PFCAsが附属書Aに追加されるなど、PFAS規制は世界的に加速しています。
国際的な規制決定は、国内の第一種特定化学物質指定へとつながる傾向が強く、企業は原料・部材・製品の中に対象物質が含まれていないかを継続的に確認する必要があります。
今後も新たなPFASの規制が検討される可能性があるため、最新動向を把握し、代替物質の検討やサプライチェーンとの情報共有など、早めの対策を進めておくことが重要です。
ユーロフィンのPFAS分析については
こちらからお問い合わせください
記事の監修者
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ユーロフィン日本環境株式会社 ラボラトリー事業部 POPsグループ PFAS・PCBチーム 藤田 潤 |
|
<経歴> 2021年 神奈川大学 理学部 卒業 クルマエビの卵巣成熟度を評価する新たな指標遺伝子の探索について研究を行う。 <発表> 2023年9月 第30回日環協・環境セミナー全国大会「水中の揮発性PFAS分析法の検討」 |
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【参考資料】
- 化審法とは|経済産業省
- 化審法の体系|経済産業省
- 第一種特定化学物質|経済産業省
- 化審法データベース 第1種特定化学物質|独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)
- 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律|e-GOV
- 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 【逐条解説】|経済産業省
- 化審法Q&A|経済産業省
- 回答一覧|化審法について(概要・総論)|経済産業省
- エッセンシャルユースについて|経済産業省
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