PFCAとは?物質の特徴と最新の規制動向について解説

投稿日:2025年3月17日
PFCA(ペルフルオロカルボン酸類)は、世界的に規制が進むPFAS(有機フッ素化合物)の一種です。特にEU加盟国など一部の国では、PFCAを規制する動きが強まっています。
また、2025年にはPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)の規制対象になる可能性もあり、世界的に注目を集めています。
本記事は、PFCAの特徴や世界の規制動向について詳しく解説します。
INDEX
PFAS(有機フッ素化合物)とは?
PFCAはパーフルオロカルボン酸とも呼ばれる化学物質群の総称で、世界的に規制が進められているPFASの一種です。ここでは、PFCAの特徴について解説します。
PFCAはPFAS(有機フッ素化合物)の一種
PFCAを含むPFASは、炭素とフッ素の強い結合を持つ化学物質で、約1万種類以上の種類があります。撥水性や撥油性、高い耐熱性と化学的安定性を持つため、撥水剤や泡消火薬剤などの用途を中心に広く使用されてきました。
一方で、環境中で分解されにくく、生物の体内に長い期間蓄積する特性を持つことから、人の健康へ与える影響が懸念されています。
PFASについて詳しく知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向まで
PFCAの特徴
PFCAには、炭素鎖の長さによって複数の種類があり、結合する炭素鎖の長さによって「短鎖PFCA」や「長鎖PFCA」と分類されることもあります。
明確な定義は決まっていませんが、ここではC8以下を短鎖PFCA、C9以上を長鎖PFCAとします。C9〜C14のPFCAは、以下の通りです。
炭素鎖 | 化学物質 | |
C9 | PFNA(パーフルオロノナン酸) | |
C10 | PFDA(パーフルオロデカン酸) | |
C11 | PFUnDA(パーフルオロウンデカン酸) | |
C12 | PFDoDA(パーフルオロドデカン酸) | |
C13 | PFTrDA(パーフルオロトリデカン酸) | |
C14 | PFTDA(パーフルオロテトラデカン酸) |
C8のPFCAに該当するのが、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)です。PFOAは日本を含む複数の国で輸出入・使用・製造などが厳しく規制されているため、PFOAの代替物質として長鎖PFCAが使用されることもあります。
【関連記事】PFOAとは?人体への影響や各国の動向、法規制の情報について
世界のPFCA規制状況
2025年3月現在、PFCA全体の規制を検討する方針が世界各国で進められています。
各国の規制検討に強い影響を与えるのが、EUのREACH規則と、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)です。
REACH規則
REACH規則とは、EUにおける化学物質の登録や評価、認可、制限について定めた規制です。
2023年以降、REACH規則の附属書XVII(制限対象物質リスト)にC9〜C14の長鎖PFCAが追加されました。
これによって、一部の例外を除いて長鎖PFCAを含む製品の製造や流通が禁止されています。
【関連記事】【2024年度版】ヨーロッパ輸出で注意すべきREACH規則のPFAS規制リスト
POPs条約
POPs条約とは、残留性有機汚染物質を規制する国際条約です。POPs条約では、附属書A(廃絶対象)にPFOAとPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)、附属書B(制限対象)にPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)が記載されています。
2025年3月時点では、PFCAは規制対象物質に入っていませんが、2025年に開催されるCOP12にて、長鎖PFCAを附属書A(廃絶対象)に追加するか議論される予定です。
【関連記事】POPs(残留性有機汚染物質)とは?対象物質や規制内容について解説
飲料水に含まれるPFCAの規制
ヨーロッパでは、一部の国が飲料水に含まれるPFCAを規制しています。ここでは、EUとドイツが実施している飲料水のPFCA規制について解説します。
EU
EUでは、飲料水に含まれるPFASの目標値として、以下の数値を設定しています。
対象物質 | 目標値 | |
全PFAS | 500 ng/L | |
PFAS合計(20種類) | 100 ng/L |
全PFASにPFCAが含まれていることはもちろんですが、20種類のPFASにもC4〜C13のPFCAが含まれています。PFCAはどちらの目標値にも関係していることから、より注意すべき化学物質と考えられていることがわかります。
ドイツ
ドイツの飲料水規制でも複数のPFCAが規制対象になっています。各PFCAの目標値については以下の通りです。
対象物質 | 化学物質 | 目標値 | |
C4 | PFBA(ペルフルオロブタン酸) | 10,000 ng/L | |
C5 | PFPeA(ペルフルオロペンタン酸) | 3,000 ng/L | |
C6 | PFHxA(ペルフルオロヘキサン酸) | 6,000 ng/L | |
C7 | PFHpA(ペルフルオロヘプタン酸) | 300 ng/L | |
C9 | PFNA(ペルフルオロノナン酸) | 60 ng/L | |
C10 | PFDA(ペルフルオロデカン酸) | 100 ng/L |
PFCAなどPFAS合算値で目標値を設定する国がある中、ドイツは6つのPFCAそれぞれに対して目標値を設定しているのが特徴です。
EUにおけるPFAS規制の現状を分かりやすくまとめた資料を随時配信しております。
第一弾は、EUのPFAS規制を担う主要組織や産業別の影響、最新の規制動向などを
まとめた資料となっておりますので、ぜひこちらからダウンロード下さい。
国内のPFCA規制
2024年3月時点では、国内でPFCAを規制する法律はありません。しかし、2024年に公開された環境省の資料では、現在規制されていないPFASについて「必要に応じて必要な情報収集や調査、水環境中のモニタリングを進めるべき」との結論を記載しています。
今後方針が決定するPOPs条約や、各国の規制動向によっては、国内でもPFCAの規制が新たに導入される可能性も考えられます。
PFCAの今後の動向に注意
PFCAは、EU加盟国など一部の国で規制が進められています。一方、日本を含む多くの国では、まだPFCAを規制対象にする動きは見られていません。
しかし、2025年に開催されるCOP12の内容によっては、日本を含むPOPs条約加盟国で規制を検討する動きが活発になる可能性もあります。
PFCAを含むPFASに関連する製品やサービスを扱っている企業は、特にCOP12の最新情報に注意しながら、早めに対処する準備を整えておきましょう。
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こちらからお問い合わせください
記事の監修者
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ユーロフィン日本環境株式会社 ラボラトリー事業部 POPsグループ PFAS・PCBチーム 緒方 駿 |
<経歴> 2017年 日本分析化学専門学校 生命バイオ分析学科 卒業 |
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PFASの一種であるPFHxA(ペルフルオロヘキサン酸)。特にPFOAの代替品として幅広く利用されてきました。PFHxAの概要や使用用途について詳しく解説。 |
【参考資料】
- REPORT OF AN OECD WORKSHOP ON PERFLUOROCARBOXYLIC ACIDS (PFCAs) AND PRECURSORS|OECD
- ANNEX XVII TO REACH – Conditions of restriction|ECHA
- POPs条約|経産省
- PFAS に関する今後の対応の方向性令和5年7月|環境省
- PFOS 及び PFOA に関する国内外の動向について|環境省