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環境省のPFAS対策とは?受託企業における取り組みを詳しく解説

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投稿日:2025年12月8日

環境省

日本におけるPFAS(有機フッ素化合物)対策は、環境省が中心的な役割を担っており、多岐にわたる取り組みが進められています。

また、国は研究機関や民間企業などの外部組織に事業を委託することがあり、こうした受託企業も日本のPFAS対策において不可欠な存在です。

この記事では、環境省が実施する最新のPFAS対策と、受託企業の取り組み事例について詳しく解説します。

 

INDEX

 

 

環境省におけるPFAS対策の方向性

会議室と日本国旗

 

PFASは炭素とフッ素からなる化学物質で、撥水・撥油性や熱・化学安定性といった特性から、これまで様々な分野で利用されてきました。

しかし、環境や人体への影響が懸念されたことで、一部のPFAS(PFOSやPFOAなど)はPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)の規制対象に追加され、世界的に規制が進められています。

日本でも、条約で規制対象となったPFASは化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)の第一種特定化学物質に指定され、製造や輸入が禁止されました。

こうした流れを踏まえ、環境省に設置された「PFASに対する総合戦略検討専門家会議」では、日本における今後のPFAS対策の方向性が議論されています。 

 

化審法の規制対象
  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)
PFAS対策の方向性 「製造・輸入等の禁止」「廃棄物の適正処理の推進」「水環境中の暫定目標値の設定」などに加え、さらなる対策強化に向けた必要な取り組み(一部抜粋)

  • 管理の在り方について
    「正確な市中在庫量の把握などの管理強化」「泡消火薬剤の更なる代替促進」「環境中への流出防止」など
  • 暫定目標値等を超えてPFOS、PFOAが検出されている地域等における対応
    「対応の手引きの充実による飲用ばく露防止の徹底」
  • リスクコミュニケーション
    「Q&A集を活用した丁寧なリスクコミュニケーションの実施」
  • 存在状況に関する調査の強化等
    「環境モニタリングの強化」「化学物質の人へのばく露モニタリング調査の本調査の実施に向けた検討」

参考:PFASに関する今後の対応の方向性  令和5年7月・PFASに対する総合戦略検討専門家会議|環境省

 

なお、PFAS対策は環境省が主に対応していますが、経済産業省や農林水産省なども対策に取り組んでおり、各省庁や国の機関と連携しながら進められています。

国内のPFAS対策についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

 

 【関連記事】日本のPFAS規制の現状は?国内の最新動向や各省庁の取り組み

2人の男性調査員

 

ここからは、環境省が実施する取り組みの中から、主要な事項を紹介します。

 

PFASに関する施策やガイドラインの策定

環境省では、化審法や水道法、水質汚濁防止法などに基づくPFAS規制を行っています。

管理対象は、化学物質そのものだけでなく、水道水・公共用水域・廃棄物など多岐にわたり、それぞれに応じた施策が講じられてきました。

また、自治体や事業者が適切にPFAS対策を進められるよう、環境省は以下のガイドラインを公表しています。

 

  • PFOS及びPFOAに関する対応の手引き(第2版)
  • PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する 技術的留意事項

 

さらに、2025年3月には自治体での施策立案や現場対応に役立つ「PFASハンドブック」も作成され、いずれも環境省の公式サイトから閲覧可能です。

参照:有機フッ素化合物(PFAS)について|環境省

 

全国の水道水や公共用水域における存在状況の調査

環境省はPFASのリスク管理を進めるため、全国の水道水や公共用水域における存在状況を継続的に調査しています。

調査結果は随時公表されており、水道水については2024年度調査の1件、公共用水域については2019年度以降に行われた数件の調査結果が公開されています。

なお、水道水は暫定目標値、公共用水域は指針値(暫定)として「PFOS及びPFOAの合算で50 ng/L以下」が設定されています。

水道水については、2026年4月1日から同じ数値が水質基準項目として施行され、法的拘束力を持つようになります。超過が確認された場合には、自治体と連携して必要な対応が取られています。 

また、環境省では水道水や公共用水域の調査に加え、PFASを含む泡消火薬剤の在庫量についても把握を進めています。

 

PFASの測定方法を策定

環境省は、PFASの存在状況を正確に把握するため、測定方法を策定し公式サイトで公開しています。現在公表されている測定方法は、公共用水域・水道水・土壌における PFOS、PFOA及びPFHxSを対象としたものです。

ただし、土壌については現時点で基準値が定められていないため、定量下限値は水質の測定方法を参考に設定しています。

 

【関連記事】土壌汚染の調査はどのように行うべき?対象地や調査手順について解説

土を掬う手

 

2025年にPFASの濃度低減に向けた技術提案を公募

ひらめきのイメージ

 

国は担当する事業を外部組織に業務委託することがあり、環境省においても様々な事業の委託が行われています。2025年には、PFASに関する事業の公募が行われ、7月24日に選定結果が公表されました。

今回の公募は「PFOS等の濃度低減のための対策技術の実証事業」に対する技術提案です。

環境省によると、「高濃度のPFASを含む土壌・排水・地下水などが確認されたものの、国内における濃度低減の対策実施例が限られている」ことが背景にあるとしています。

公募は効果的な対策技術に関する知見を充実させることを目的としており、得られた知見は地方自治体などに広く提供される予定です。

この公募は、3種類の測定対象別に実施され、74件(計50社)の技術提案が集まり、その内9件(計8社)が本事業における実証対象技術として選定されました。

選定された事業者は、下表の通りです。 

 

PFOS等の濃度低減のための対策技術の公募
1 土壌中のPFOS・PFOA濃度を低減させる技術【土1】
対象 指定範囲の土壌に含まれるPFOS及びPFOA
選定事業者 株式会社 鴻池組
清水建設株式会社
株式会社 環境管理センター
株式会社 大林組
2 水中のPFOS・PFOA濃度を低減させる技術【水1】
対象 産業廃棄物最終処分場(管理型)の放流水に含まれるPFOS及びPFOA
選定事業者 株式会社 エコサイズ
3 水中のPFOS・PFOA濃度を低減させる技術【水2】
対象 産業廃棄物最終処分場(安定型)の浸透水(集排水管により集水され公共用水域へ排水されるもの。)に含まれるPFOS及びPFOA
選定事業者 株式会社 奥村組
清水建設株式会社
株式会社 日立ハイテク
株式会社 エマルションフローテクノロジーズ

 参考:「PFOS等の濃度低減のための対策技術の実証事業」の公募について 2025年04月21日報道発表|別添1~4|環境省

 

また、2024年にも受託企業(1社)によるPFAS浄化に関する実証試験が行われています。

この際の公募は土壌汚染対策推進の一環として汚染物質を限定せずに行われたものですが、PFAS対策に関する実証試験の貴重な一例となっています。 

 

 

環境省のPFAS対策案件の受託企業が行う取り組み事例

PFASと記載されたフラスコに河川水を汲む様子

 

環境省のPFAS対策に関する受託企業は、2024年度と2025年度を合わせて計9社あります。

受託企業は、それぞれが有する独自の「PFASの汚染防止や濃度低減の技術」に基づき選定されました。

ここでは選定された技術に加え、受託企業が行っているPFASに対する取り組みを紹介します。

 

株式会社 流機エンジニアリング

流機エンジニアリングは、空気や水、粉塵など環境対策に関する設備を提供する企業です。トンネル工事や環境対策工事、航空産業、原子力関連施設など多くの分野において活躍しています。

PFASに関しては「ECOクリーンLFP」という独自の浄化技術を用いた水処理装置を開発しており、沖縄県(湧水公園)の汚染水浄化に採用されました。また、2025年2月より「17日のPFAS勉強会」を定期的に開催し、PFASに関する情報交換の場も設けています。

 

環境省で選定された技術(2024年)
揚水及びフィルターと機能性粉体を用いた処理法によるPFAS地下水汚染の拡大防止技術

 

株式会社 鴻池組

2015年に積水ハウスグループの一員となった鴻池組は、土木・建築を中心とした事業を展開する企業です。トンネル工事や環境・災害対策工事、様々な施設の建築工事を手がけており、災害廃棄物の処理にも積極的に取り組んでいます。

PFASに対する取り組みでは、高温の加熱水蒸気を用いたPFAS分解技術の開発を行っています。

2024年1月1日の発表内容によると、環境省策定の「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」の要件に合致させるため、他社と共同で技術開発を進めており、実証試験結果も合わせて公開されています。

 

環境省で選定された技術(2025年)
PFOS・PFOAを含む土壌のロータリーキルン式熱分解処理による濃度低減技術

 

清水建設株式会社

清水建設は、建築や土木などの建設事業を中心に、不動産開発やエンジニアリングなど幅広い事業を展開している企業です。土壌、水質に対してPFAS浄化技術の開発を行っており、PFASの性質を利用して泡に吸着させることによる分離・回収技術を確立しています。 

確立された技術に関しては、「2022年度の沖縄における実証試験(PFAS汚染水)」や、「2023年度の米国内採取の汚染土壌における実証試験(PFAS汚染土壌、洗浄水)」での浄化実績があります。 

2024年6月には、米国内で採取された実汚染土壌を対象とした室内浄化試験を実施し、独技技術によってPFAS含有量の約99%を対象土壌から除去することに成功しています。

2025年の環境省による公募でも、2件の技術が選定されました。

 

環境省で選定された技術(2025年)
(1)PFOS等汚染土壌の浄化を目的とした分級洗浄技術
(2)分離・分解技術によるPFAS含有水の処理実証(泡沫分離/プラズマ)

 

株式会社 環境管理センター

環境管理センターは、土壌や水質、大気などの環境調査や分析、環境コンサルタントの事業を中心とした企業です。様々な領域の環境問題に対応するべく研究や浄化技術の開発を行っています。

PFASの分析方法の開発や環境水等の受託分析も行っており、2012年には「東京都内の水道水中の有機フッ素化合物濃度および組成分布」と題したPFASに関する論文も発表されました。

 

環境省で選定された技術(2025年)
汚染中心濃度に対応した超低負荷型PFAS固定化等技術

 

株式会社 大林組

大林組は国内の建築、土木事業を中心にしつつ、海外でも建築事業を行うなどグローバルな活動を行う企業です。また、エンジニアリング事業も行っており、1970年から国内外で取り組んでいる土壌汚染対策では、PFASを含む様々な技術が開発されてきました。

土壌に対するPFAS汚染対策技術の開発を行っており、土壌からの流出を抑制する技術や、オンサイトでの地下水の浄化技術が開発されています。 

 

環境省で選定された技術(2025年)
PFOS等汚染土壌の固化・安定化処理 ~汚染土壌からのPFOS等溶出抑制~

 

株式会社 エコサイズ

エコサイズは、水処理事業を中心に産廃事業や環境関連事業、省エネ設備の導入支援事業などを行う企業です。PFASに対する取り組みは公表されていないものの、水処理事業において水質検査に基づいた運用管理の提案などを行っています。

 

環境省で選定された技術(2025年)
カートリッジ式活性炭吸着装置および泡沫分離前処理装置を用いた活性炭再生循環運用による高濃度PFAS含有水の処理方法

 

株式会社 奥村組

奥村組は、土木・建築事業の他、不動産やエネルギー、地方創生への貢献など幅広い分野における投資開発事業も手がけています。技術開発分野にも力を入れており、環境技術として多くの土壌・水質環境修復技術が開発されてきました。

PFASに関しても、2024年9月に名古屋大学と共同で、水質、土壌を対象とした超強力触媒を用いた酸化分解技術を開発中であることを公表しており、さらに2025年8月には、神奈川県(相模原市)と共同で活性炭やイオン交換樹脂を用いたPFOS除去技術の実証試験を行うことを公表しました。

 

環境省で選定された技術(2025年)
PFAS除去用イオン交換樹脂を用いた処理実証

 

株式会社 日立ハイテク

HITACHIグループの日立ハイテクでは、半導体やヘルスケア、解析・分析のコアテクノロジーなど幅広い分野の事業をグローバルに展開しています。

PFASに関しては、2025年1月に東京科学大学と共同でPFAS検出に関する研究開始を公表。ペプチドを用いることで複雑なPFAS検出を簡便、迅速化するとの目的が示されています。また、同技術のPFAS除去技術への活用も検証する予定です。

 

環境省で選定された技術(2025年)
400kHz付近キャビテーション超音波–酸化ラジカルハイブリッドによるPFAS無害化モジュール ~処理量50 m³/日で原位置50 ng/L達成を目指す~

 

株式会社 エマルションフローテクノロジーズ

エマルションフローテクノロジーズは、2021年に設立された新しい企業です。原子力研究から生まれた溶媒抽出技術である「エマルションフロー技術」を活用し、資源循環や環境保全事業に取り組んでおり、PFAS除去にも注力しています。

同社によれば、この技術を用いることで多種多様かつ広範囲な濃度のPFASを99.9 %以上回収できると説明しています。ウシオ電機(株)の光によるPFAS分解技術との連携も行っており、その技術が環境省に選定されました。

 

環境省で選定された技術(2025年)
溶媒抽出技術、「エマルションフロー」を用いたPFOS等の濃度低減と光分解技術を用いた回収PFOS等の無害化に関する実証実験

 

 

日本のPFAS対策には多くの企業が動いている

日本のPFAS対策は、環境省が中心となって進められており、関連法規に基づく規制やガイドラインの策定、環境中の状況調査などが行われています。

また、取り組み内容によっては外部組織に業務委託することもあり、2025年には「PFASの濃度低減技術の公募」において8社の事業者がもつ技術が選定されました。

国内のPFAS除去技術は、多くの企業によって研究が進み、すでに実証段階に入っている技術もあります。今後の発表に注目していきましょう。

 

 

ユーロフィンのPFAS分析については

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記事の監修者

町田

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ

研究開発チーム 町田 瑞希

<経歴>

2020年 神戸大学農学部 卒業
2022年 神戸大学大学院 卒業 細菌のゲノム縮小法の開発を行う。
卒業後、香料メーカーにて香気分析に従事し、香粧品、食料品の香気分析や天然物の重要香気成分の解明を行う。2024年にユーロフィン日本環境株式会社入社し、PFAS分析・社内独自法の開発に従事。

<発表>

2025年6月 第30回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会
「PFAS多項目の低コスト・迅速測定法の開発」

資料はこちからダウンロードいただけます。

 

 

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