JavaScript is disabled. Please enable to continue!

Mobile search icon
PFAS MEDIA >> PFAS解説書 >> PFAS(有機フッ素化合物)の規制対象物質とは?主な種類や使用用途を解説

PFAS(有機フッ素化合物)の規制対象物質とは?種類や使用用途

Sidebar Image

投稿日:2024年6月4日(2025年6月6日更新)

※ 本記事は「PFAS(有機フッ素化合物)の規制対象物質とは?主な種類や使用用途を解説」を更新したものになります。

科学技術の研究

PFAS(有機フッ素化合物)は、1万種類以上ある化合物の総称です。PFASの一部の物質は、人の健康に影響を与えることを示唆されており、欧米や日本で規制が進められています。本記事では、日本の化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)で規制されているPFASの対象物質や、使用用途について解説します。

 

INDEX

 

 

PFASとは有機フッ素化合物の総称

女性の研究者

PFASとは、有機フッ素化合物のうち「ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(Per- and PolyFluoroAlkyl Substances)」と呼ばれる物質の総称です。

 

有機フッ素化合物とは

有機フッ素化合物とは、炭素とフッ素が結合している物質のことです。厳密には「少なくとも1つの完全にフッ素化されたメチル又はメチレン基(フッ素が結合している炭素原子にH、Cl、Br、I原子が結合していないもの)を含むフッ素化物質」と定義されています。

炭素とフッ素が結びつく「炭素鎖」と呼ばれるものの長さにより、物質の特性が異なるという特徴があります。例えば、炭素数が多ければ多いほど、生物蓄積性が上昇するとされています。

PFASは、撥水性・撥油性・耐熱性・耐薬品性などの優れた性質を持っています。そのため、半導体やフライパン、撥水スプレーなどに用いられてきました。

PFASが何に使われていたのか知りたい方は、下記の記事を参照ください。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?問題視される理由や具体的な規制を解説

PFAS

 

 

一部のPFASは規制対象物質となっている

PFASの一部の物質は、身近な物質として日々の生活に浸透しており、特段人体に影響がないものも多く含まれています。例えば、PFASであるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は通称テフロンとしてフライパンや液晶などで使われています。

しかし、PFOS・PFOAなどの一部のPFASは人の健康に影響を与える恐れがあるとされています。PFOS・PFOAは、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)により意図的な含有・製造が禁止されています。

日本でも化審法により、PFOS・PFOAは一部の用途を除き製造・輸入が禁止されています。

 

 

規制対象物質のPFASは3種類

PFASとキーボード

2025年5月現在、化審法で規制対象物質となっているPFASは以下の3種類です。

 

1. PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
2. PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
3. PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)

 

1. PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)

PFOSは有機フッ素化合物の一種であり、以下の図のように分子構造中に炭素が8個連なった炭素鎖を持つことから、通称「C8(シーハチ)」と呼ばれることもあります。

 

PFOS

 

PFOSは主に以下の用途などで幅広く使用されてきました。

 

  • 泡消火薬剤
  • 半導体
  • 金属メッキ
  • フォトマスク(半導体、液晶ディスプレイ)
  • 写真フィルム

 

PFOSはPFASの中でも早い段階で危険性が問題視され、世界的な規制が行われました。日本では2009年10月30日に、化審法によって原則製造・輸入が禁止されています。

また、水道水中のPFOS・PFOAの暫定目標値を「PFOS及びPFOAの合計値として50 ng/L以下」とし、全国の自治体でモニタリングが続けられています。

 

【関連記事】PFOSとはどんな物質なのか?人体への影響も含めて解説

PFAS 分析者

 

2. PFOA(ペルフルオロオクタン酸)

PFOAはPFOSと同様に有機フッ素化合物の一種で、分子構造中に炭素が8個(または9個)連なった炭素鎖を持つことから、「C8(シーハチ)」と呼ばれることもあります。

PFOAは、PFOSのスルホン酸基がカルボン酸基に置き換わった構造をしており、両者は類似した特性を持っています。

 

PFOA

 

PFOAは主に下記のような用途で使用されていました。

 

  • 泡消火薬剤
  • 繊維
  • 電子基板
  • 自動車
  • 食品包装紙
  • 石材
  • フローリング
  • 皮革
  • 防護服

 

PFOAは自然環境中で分解されにくく、生物の体内に蓄積しやすいことから、健康への悪影響が懸念されています。そのため、2019年5月には残留性有機汚染物質に関するPOPs条約において、製造・使用の廃絶に向けた国際合意がなされました。

日本でもこの合意を受けて、化審法により2021年10月から原則として製造・輸入が禁止されています。

 

【関連記事】PFOAとは?人体への影響や各国の動向、法規制の情報について

PFOA

 

3. PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)

PFHxSは、炭素数が6個の炭素鎖をもつPFASの一種であり、「C6(シーロク)」と呼ばれることもあります。
この物質は、化審法により規制されたPFOSやPFOAの代替物質として、主に以下のような用途で使用されてきました。

 

  • 衣類の撥水剤
  • 半導体用レジスト
  • 泡消火薬剤
  • 金属加工用のエッチング剤

 

しかしPFHxSも、PFOS・PFOAと同様に自然界で分解されず、人間を含めた生物の体内への残留による健康リスクが示唆されるようになりました。そのため、2022年6月にPOPs条約により廃絶すべき化学物質のリストに加えられています。

日本でもこの国際的な動向を受け、2024年6月1日より化審法に基づき、PFHxSの製造・輸入が原則禁止となっています。

 

【関連記事】PFHxSとは?輸入が禁止される理由と対策について

防寒具

 

 

化審法で規制追加が検討されているPFAS

POPs条約では、PFHxA(ペルフルオロヘキサン酸)やその他のPFOA関連物質を附属書A(廃絶)への追加が検討されており、国際的な規制対象の拡大が進んでいます。

POPs条約の動向を受け、日本でもこれら物質に関する規制が今後さらに強化される可能性があります。

実際に日本では、2024年7月5日に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令」が閣議決定され、7月10日に公布されました。この改正により、PFOAの分枝異性体やその関連物質などが新たに第一種特定化学物質に指定され、2024年9月10日から製造・輸入が原則禁止となっています。

対象となる物質には、8:2 FTOHやPFOI(ペルフルオロオクチルヨージド)など、PFOAの分解生成物とされる化合物が含まれており、これらは環境中で分解されにくく、生態系や人体への影響が懸念されています。

ただし、代替技術が未確立である場合には、一定の条件を満たすことで例外的な使用が認められる制度も設けられています。

国内企業は規制対象の拡大に迅速に対応し、製品や製造プロセスの見直しを進める必要があるでしょう。

 

EUでは全面規制の動きが加速している

欧州(EU)でのPFAS規制スケジュール

EU(欧州連合)は、PFASに対して日本よりも厳しい規制を検討しています。

2023年1月には、デンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの5つの当局が合同で1万種類以上のPFASの製造・販売・使用(輸入を含む)を制限する規制案を提出しました。

この規制案には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂や、高分子(ポリマー)など、生活において幅広く普及しており、以前までは人体への影響が特段指摘されていなかった物質も含まれています。

非常に厳しい規制であると評価され、日本でも経団連がパブリックコメントを発表するなど、経済・社会への影響を懸念する声が挙がっているのが実情です。

また、ECHA(欧州化学品機関)は2023年2月25日に、化合物中の炭素数が9〜14のPFAS(PFCAs)の規制を開始し、PFCAsは特定の用途を除いて使用できなくなりました。

EUは今後代替できないもの以外でのPFAS使用を廃止しようと努めており、PFOS・PFOAの代替物質として安易にPFASを使用しないようにするためにPFCAsは規制されました。

 

【関連記事】ヨーロッパ(EU)でのPFAS規制内容は?各規制の対象と日本への影響

欧州旗

 

 

規制対象物質のPFASはごく一部だが動向に注意しよう

欧州旗

現状、日本では、PFOS・PFOA・PFHxSを始めとするPFASの規制が進んでいます。しかし、国連のPOPs条約、米国、EUの各国では、PFASの項目追加が検討されており、将来的に日本でも追加規制が行われる可能性があります。

すでに規制されているPFASだけではなく、現在議論されているPFASについても動向を確認することが重要です。特に、製造メーカー製品の輸出入などを行う企業は、規制されてから代替物質を探していたら、時代の流れに取り残される可能性があります。PFOS・PFOA・PFHxS以外のPFASを分析し、事前に対策を打つことが重要です。

 

 

ユーロフィンのPFAS分析については

こちらからお問い合わせください

お問い合わせ

 

 

記事の監修者

ユーロフィン日本総研 河原崎海

ユーロフィン日本総研株式会社

浜松PFAS事業部 PFASグループ

Manager 河原崎 海

<経歴>

2002年 神奈川大学工学部応用化学科 卒業

2004年 神奈川大学工学研究科応用化学専攻 修士課程 修了

2018年 静岡県立大学大学院 薬食生命総合学府 食品栄養科学専攻 博士課程 単位取得満期退学
学士・修士課程では膜分離、博士課程では食品中の機能性成分に関する研究を行う。

2004年 (一財)静岡県生活科学検査センター入所後、水道水・環境試料の分析に従事し、2012年から農薬メーカー傘下の受託ラボにて食品・農薬分析、試験法開発、異物解析、食品中ノンターゲット分析事業の立上げや、農薬GLP・食品衛生法登録検査機関・ISO17025試験所認定の取得や維持管理を行う。ユーロフィングループ参画後は、品質保証、ラボ移転業務に従事し、2021年からユーロフィン日本総研にてアスベスト事業部統括とラボ移転を担当し、2024年からPFASラボの立上げを担当。

<発表>

 

 

関連記事

男性調査員2名が採水

日本のPFAS規制の現状は?国内の最新動向や各省庁の取り組み

日本のPFAS規制の最新動向と各省庁の取り組みを解説。環境や健康への影響、今後の対応について詳しく紹介します。

女性製造業者

これまでのPFAS規制の歴史と動向は?現状と今後の規制を予測

国内でもの進められているPFAS規制。この記事では、POPs条約と化審法に注目して、これまでのPFAS規制の歴史と今後の動向予測について解説。

バーチャル工場

規制が厳格化するPFASへの対策とは?メーカー担当者が押さえたい注意点

変化するPFAS規制に対して、製品の製造・輸出入を行うメーカーはどのように対策を進めるべきか。製品製造や輸出入におけるPFAS対策と注意点について解説。

 

 

PFAS MEDIA TOPに戻る→


【参考資料】