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アジア諸国のPFAS規制の現状は?規制の傾向と最新動向について

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投稿日:2025年9月24日

ラボで検査している女性研究員

アジア各国では、独自のPFAS規制が段階的に進められています。

近隣諸国との取引が多い日本企業にとって、それぞれの国での規制内容を正確に把握しておくことは、製品の輸出入や事業運営の観点からも非常に重要です。

本記事では、アジアにおけるPFAS規制の最新動向を、国別にわかりやすく解説します。

 

INDEX

 

PFASが規制される理由

白衣の人が書類記入

PFAS(per- and polyfluoroalkyl substances:有機フッ素化合物)は、OECD(経済協力開発機構)の定義によれば 「少なくとも1つの完全にフッ素化されたメチル基(–CF₃)またはメチレン基(–CF₂–)を含む化合物」 を指し、1万種類以上が存在するとされています。

耐熱性・撥水性・化学的安定性などの特性を持つことから、フライパンのコーティング、撥水加工衣料、食品包装材、泡消火薬剤など、身近な製品や産業用途に幅広く利用されてきました。

しかし、環境中で分解されにくく、生物の体内に長期間蓄積する性質を持つため、残留性有機汚染物質(POPs)としてのリスクが国際的に指摘されています。

こうした背景から、日本を含む多くの国や地域でPFASに対する規制や監視が強化されています。ただし、規制の対象や内容は国によって異なるため、最新の動向を正しく把握しておくことが重要です。

PFASについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

 【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向までPFAS

 

 

アジア各国のPFAS規制

水辺で水の検体を確認

日本と距離の近いアジアの国々では、各国が独自のPFAS規制を導入しています。ここでは、アジア各国のPFAS規制動向について紹介します。

 

中国

中国では、2023年3月より施行された「重点管控新汚染物質リスト(2023年版)」に基づき、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)の3物質が新汚染物質として指定されました。

これにより、これらの物質の製造・加工・使用・輸入・輸出には、生態環境主管部門への申請・許可取得が必要となり、無許可での取り扱いは禁止されています。

2024年12月には河南省政府より、「重点管控新汚染物質リスト(2024年版)」に基づくPFAS関連物質の追加管理案が公表されました。対象にはPFOA、PFHxSおよびそれらの塩・関連物質、C9〜C20のペルフルオロカルボン酸(PFCAs)などが含まれています。

さらに、2025年2月には生態環境省傘下の環境条約実施技術センターが全国規模での意見募集を開始したと報じられており、中国におけるPFAS規制は今後さらに強化される可能性があります。

この草案では、対象物質のリストや濃度閾値、監視対象としての分類などが示されており、中国におけるPFAS規制が今後さらに強化される可能性があります。

 

 【関連記事】PFOAは中国でも厳格な規制へ。法規制の流れと企業に必要な対応策
中国国旗と検査の様子

 

韓国

韓国では、PFOAの製造と使用について、2026年6月まで一定の条件下での猶予措置を認めつつも、原則として規制が進められています。また、2022年にはPFHxSが新たに規制対象として追加されました。

これらの規制はPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)に基づいており、韓国環境部ではこれに対応する形で、PFASの段階的な管理強化を進めています。

加えて、韓国独自の化学物質規制制度であるK-REACH(韓国におけるREACH規則)でも、PFASを含む有害化学物質の登録、評価、制限が行われており、一定量以上の製造・輸入事業者には登録や届出義務が課されています。

PFASを含む製品を取り扱う企業は、K-REACH上での分類や用途別の規制内容を確認し、輸出入に関する適正な対応が求められます。

 

シンガポール

シンガポールでは、環境保護管理法(EPMA)に基づき、2022年10月22日以降、PFOAおよびPFHxSの製造や輸入、輸出が禁止されています。さらに、PFASを含む消火剤の段階的廃止も進められており、対象物質の取り扱いには注意が必要です。

シンガポールでは、環境保護管理法(EPMA)に基づき、PFOAおよびPFHxSの製造・輸入・輸出が2022年10月22日以降原則として禁止されています。
また、国家環境庁(NEA)は、POPs条約に基づく取り組みの一環として、PFASを含む消火剤の段階的な廃止を進めています。

2024年3月の通知によると、PFOS・PFOA・PFHxSのいずれかを含む泡消火薬剤については、2025年12月31日までに使用を終了し、適切に廃棄するよう義務付けられています。また、2026年1月1日以降は輸入や使用が全面的に禁止されるため、販売や移転、再充填も同様に禁止対象となります。対象物質を含む製品の取り扱いには特に注意が必要です。

これらの措置により、シンガポールにおけるPFAS規制は今後さらに厳格化される見通しです。

 

台湾

台湾では、環境部(MOENV)が中心となり、PFASに対する規制を段階的に強化しています。

PFOS・PFOAについては、「毒性化学物質管理法」に基づく特定化学物質として指定されており、製造・輸入・使用に対して厳しい制限が設けられています。

2024年3月には、PFHxSおよび関連物質についても同法に基づく規制対象への追加が正式に告示されました。改正内容では、これらの物質を新たに第1類毒性化学物質(製造・輸入・使用に許可が必要)に分類し、輸入許可制度や情報届出義務などが適用されます。

今後は、PFHxSの規制開始に向けた実施スケジュールや関連業種へのガイダンスなどが検討されており、PFAS全体に対する管理がさらに強化される見込みです。

 

インドネシア

インドネシアでは、商業省令第18号(2019年)「一定の危険有害化学物質の輸入規制に関する規定」に基づき、有害化学物質の輸入に対して管理措置が講じられています。

この省令では、PFOSおよびPFOAを含むPFASが危険有害化学物質の一部として分類されており、これらを輸入する際には事前に貿易大臣の許可を取得する必要があります。

また、輸入業者は許可の取得に加えて、輸入した化学物質の数量や用途、保管状況などを報告する義務を負っており、違反があった場合には輸入停止や法的措置の対象となる可能性があります。

 

タイ

タイでは、産業工場局(DIW)が管理する有害物質リスト(2022年版 第7版)において、PFOSやPFOAなどのPFASが規制対象に指定されています。これらの物質を製造、輸入、輸出、または使用する場合には、政府の許可や届出が必要とされています。

タイでは、産業工場局(DIW)が所管する「有害物質リスト(2022年 第7版)」において、PFOS、PFOAおよびその塩や関連化合物が、第3種有害物質として指定されています。

この分類により、これらのPFASを製造、輸入、輸出、または使用する場合には、事前に工業省の許可を取得することが義務付けられています。また、用途や量に応じた厳格な管理が求められ、違反があった場合には罰則の対象となる可能性があります。

今後も国際的な規制動向に合わせて、他のPFASについても順次リストへの追加や管理強化が進められる可能性があります。

 

規制検討中の国

上記で紹介した国々以外にも、アジア地域ではPFAS規制に関する検討や関心が徐々に高まっています。現時点では明確な法規制や枠組みが整備されていない国も多いものの、調査や制度整備に向けた動きが確認されています。

ベトナム
PFOSやPFOAを含む製品の使用管理に関する議論が進行中であり、国家技術規則(QCVN)へのPFAS関連条項の導入が検討されています。ただし、現時点で具体的な規制は確認されていません。

マレーシア
公式のPFAS規制は限定的ですが、PFOSやPFOAの環境中での検出に関する報告が行われており、飲料水への影響や管理の必要性が指摘されています。IPEN(国際汚染物質廃絶ネットワーク)による2019年の報告書では、PFASへの関心の高まりと調査の必要性が示されています。

インド
法的なPFAS規制は未整備ですが、工業活動によるPFAS汚染の懸念や、環境残留・人体影響に関する国内外の調査が進められています。IPENの報告では、PFOSやPFOAの使用履歴と国内での曝露リスクに関する言及がなされています。

 

 

EUや米国とアジアとのPFAS規制の違い

水辺でのサンプリング

EUや米国では、PFASに対する規制が先行して進められています。

EUではREACH規則に基づき、約1万種類のPFASを対象とする包括的な規制案が提出されており、製造・使用・上市の大部分を制限する方向で審議が進められています。

米国では、2024年にEPA(米国環境保護庁)が飲料水中のPFASに関する全国基準を策定し、PFOAおよびPFOSに対して最大4 ng/Lという厳格な濃度基準を導入しました。

これに対し、アジア地域ではPFOSやPFOAなど一部のPFASに対する規制が導入されているものの、対象物質や適用範囲は限定的で、全体としては制度整備の途中段階にある国が多い状況です。

また、EUや米国での規制強化は、グローバルサプライチェーンにも波及しています。PFASを含む製品を欧州に輸出する企業は、REACH規則による使用制限への対応が求められるほか、米国では州単位でPFASを含む特定製品の販売規制も進められており、部材選定や製品設計に影響を及ぼす可能性があります。

今後はこうした動きに追随する形で、アジア各国でもPFAS規制の強化が進むと考えられます。海外への輸出や調達を行う企業は、国際的な規制動向を注視し、早めの対応を検討しておくことが重要です。

日本国内のPFAS規制の現状については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

 【関連記事】日本のPFAS規制の現状は?国内の最新動向や各省庁の取り組み

2人の男性調査員

 

 

アジア諸国のPFAS規制の影響は大きい

アジア諸国と取引のある日本企業は多く、各国で進むPFAS規制の内容を正確に把握しておかなければ、輸出入の手続きや製品の設計・運用に支障をきたす可能性があります。

PFASに関する規制は、各国の政策や国際的な動向に応じて強化される傾向にあり、今後も新たな物質の追加や基準値の見直しが進むと考えられます。

アジア地域での事業活動を行う企業にとっては、最新の法規制情報を継続的に確認し、実務面での備えを早めに講じておくことが重要です。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本総研 河原崎海

ユーロフィン日本総研株式会社

浜松PFAS事業部 PFASグループ

Manager 河原崎 海

<経歴>

2002年 神奈川大学工学部応用化学科 卒業

2004年 神奈川大学工学研究科応用化学専攻 修士課程 修了

2018年 静岡県立大学大学院 薬食生命総合学府 食品栄養科学専攻 博士課程 単位取得満期退学
学士・修士課程では膜分離、博士課程では食品中の機能性成分に関する研究を行う。

2004年 (一財)静岡県生活科学検査センター入所後、水道水・環境試料の分析に従事し、2012年から農薬メーカー傘下の受託ラボにて食品・農薬分析、試験法開発、異物解析、食品中ノンターゲット分析事業の立上げや、農薬GLP・食品衛生法登録検査機関・ISO17025試験所認定の取得や維持管理を行う。ユーロフィングループ参画後は、品質保証、ラボ移転業務に従事し、2021年からユーロフィン日本総研にてアスベスト事業部統括とラボ移転を担当し、2024年からPFASラボの立上げを担当。

<発表>

 

 

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