NPDWR(米国の一次飲料水規制)とは?飲料水規制とPFASの関係

投稿日:2026年2月18日

NPDWR(米国の一次飲料水規制)は、米国の飲料水に関する規制の枠組みの一つであり、PFAS(有機フッ素化合物)の規制にも大きく影響を及ぼす制度です。
しかし、米国で運用されている水関連の制度には、SDWA(安全飲料水法)など似た枠組みも多く、詳細な規制内容や最新動向が分かりにくいと感じる方もいるでしょう。
本記事では、NPDWRの主な役割やPFAS規制と関係する内容、2025年12月時点での最新動向について解説します。
INDEX
NPDWR(米国の一次飲料水規制)とは

NPDWRは、SDWA(安全飲料水法)を根拠とする米国の飲料水基準です。
米国の飲料水規制において重要な規制であり、特に米国向けに飲料水を取り扱う事業(輸出・販売、現地での供給や製造など)に関わる企業は、適用範囲や規制の内容を確認しておく必要があります。
NPDWRの役割と目的
NPDWR(National Primary Drinking Water Regulations)は、米国の公共水道システムに適用される飲料水基準です。飲料水中の汚染物質のレベルを制限し、公衆衛生を保護することを目的としています。
EPA(米国環境保護庁)はNPDWRの枠組みのもと、具体的な基準としてMCLG(最大汚染レベル目標値)とMCL(最大汚染レベル)を定めています。
MCLGは健康に基づく目標値であり、法的拘束力のない指標です。一方、MCLは法的に遵守が求められる基準として設定されています。
SDWAとの関係性
SDWA(安全飲料水法)は、米国の飲料水の安全性を守る法的枠組みであり、EPAはSDWAに基づいて、飲料水の汚染物質に関するNPDWRを設定する権限を持っています。
EPAはSDWAが定めるルールに従い、公共水道システムに対して法的に遵守が求められる水質基準(MCL)を定めるほか、モニタリングの実施や、基準を超過した場合の対応(対策の実施、違反時の通知など)を求めています。
そのため、NPDWRはSDWAを根拠に、公共水道システムに遵守が求められる規制として運用されています。
SDWAについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
【関連記事】SDWA(米国安全飲料水法)とは?法律の役割やPFASとの関連性
PFAS規制との関係性
NPDWRの規制対象となる汚染物質は多岐にわたり、微生物や化学物質など7つの主要なカテゴリに分類されています。具体的なカテゴリ分類は以下の通りです。
- 微生物
- 消毒剤
- 消毒副産物
- 無機化学品
- PFASを除く有機化学物質
- 特定のパーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)
- 放射性核種
上記の通り、カテゴリの一つにPFASが含まれており、2024年4月の最終決定により、PFASに関する6項目(うち1項目はPFAS混合物)について、法的強制力のあるMCLやMCLGが設定されました。
NPDWRという法的枠組みにPFASが組み込まれたことで、公共水道システムにはPFASの監視や違反時の通知、濃度低減に向けた対応が求められ、公衆衛生の保護が強化されています。
NPDWRによるPFAS規制

NPDWRでは、PFASに関する6項目(うち1項目はPFAS混合物)について、MCLおよびMCLGが設定されています。
事業等で米国の飲料水規制に関わる担当者は、対象となるPFASの規制内容を把握しておくことが重要です。
ここでは、NPDWRによるPFAS規制の具体的な数値について解説します。
飲料水に含まれるPFASが規制される背景
NPDWRによって飲料水中のPFAS規制が強化されている背景には、健康リスクへの懸念があります。
近年の研究や評価では、一部のPFASについて、腎臓がんや精巣がんなどとの関連が指摘されているほか、免疫系や心血管系、発達への影響などが懸念されています。
国民の長期的な健康リスクの観点から、EPAはPFASを規制対象として位置づけ、単一物質に加えて複数PFASが同時に存在する場合のリスクも踏まえた評価手法「ハザードインデックス(Hazard Index)」を取り入れています。
PFASが健康に及ぼす影響について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:PFASが人体に及ぼす影響は?健康リスクや国内の汚染事例
NPDWRで規制されているPFAS
EPAは、2024年4月10日にPFASに関するNPDWRの最終規則を公表しました。
現行の最終規則では、全米規模のPFAS飲料水基準の導入により、現在は6項目(うち1項目はPFAS混合物)が規制対象となっています。
規制対象となっているPFASの種類とMCL・MCLGは、以下の通りです。
| 物質名(化合物名) | MCLG | MCL | |
| PFOA(ペルフルオロオクタン酸) | 0 | 4.0 ppt(ng/L) | |
| PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸) | 0 | 4.0 ppt(ng/L) | |
| PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸) | 10 ppt(ng/L) | 10 ppt(ng/L) | |
| PFNA(ペルフルオロノナン酸) | 10 ppt(ng/L) | 10 ppt(ng/L) | |
| HFPO-DA(GenX化合物) | 10 ppt(ng/L) | 10 ppt(ng/L) | |
| 混合物(PFHxS、PFNA、HFPO-DA、PFBSのうち2種類以上を含む場合) | ハザードインデックス 1.0(単位なし) |
ハザードインデックス 1.0(単位なし) |
|
※本表にはNPDWRに含まれるPFASを記載していますが、PFHxS、PFNA、HFPO-DA(GenX化合物)、および混合物(ハザードインデックス)については、米国EPAが規制内容の見直しを検討している旨を公表しています。(次章にて記載)
現行のNPDWRではPFHxS、PFNA、HFPO-DA、PFBSのうち2種類以上を含む混合物には、ハザードインデックスを用いた基準が適用されます。
ハザードインデックスは、複数の化学物質が同時に存在する場合の健康リスクを評価するための指標です。現行基準上、1.0以下の場合は基準を満たしている状態と整理され、1.0を超える場合は、基準を満たしていない状態と整理されます。
NPDWRの最新動向

NPDWRによるPFAS規制については、2025年5月にEPAから新たな方針が示されました。
現行の規制内容を維持する方針を示す一方で、一部の内容については見直しが検討されており、あわせて公共水道システムの対応スケジュールに関する議論も進んでいます。
ここでは、2025年12月時点で公表されている情報をもとに、NPDWRの最新動向を整理します。
PFOS・PFOAの規制を維持し他のPFASは再検討
EPAは、2025年5月14日に飲料水中のPFOSおよびPFOAに関する現行の基準を維持する方針を発表しました。
これにより、PFOS・PFOAに関する規制は現行の枠組みで継続される見込みです。
一方で、PFHxS、PFNA、HFPO-DA(GenX)および、これら3物質にPFBSを加えた混合物(ハザードインデックス)の規制判断については、撤回したうえで再検討する意向が示されています。
また、2024年4月に最終化されたPFASのNPDWRでは、公共水道システムに対し、3年以内(2027年まで)に初期モニタリングを完了することが求められています。
2027年以降の公共水道システムの監視強化
PFASのNPDWRでは、初期モニタリングの完了後も公共水道システムに対してPFASの監視が継続して求められます。
モニタリングの結果、飲料水中のPFASがいずれかのMCLを超過している場合は、5年以内(2029年まで)に濃度低減に向けた対応を実施するとともに、違反に関する通知を行うことが求められます。
一方でEPAは、遵守期限について追加の猶予期間を設ける方針を示しており、期限を2031年まで延長する案が検討されています。
背景としては、水道システムが実行可能な対応を講じるための時間を確保する目的が挙げられています。
日本国内の飲料水規制の動向

日本国内では、水道水に関するPFOS及びPFOAの扱いについて、大きな変更が進められています。
環境省は、2025年6月30日に省令改正を公布し、これまで暫定目標値として運用されてきた「PFOS及びPFOAの合算で50 ng/L」を、水道水の水質基準における基準値として位置付ける方針を示しました。施行時期は2026年4月1日からです。
これにより、水道事業者等には、PFOS及びPFOAに関する水質検査の実施と基準値の遵守が求められます。
検査回数は原則として3か月に1回を基本としつつ、施行前の検査等によりPFAS汚染の可能性が低いと考えられる場合には、簡易水道と専用水道について一定の条件のもとで半年に1回または1年に1回へ頻度を減らせることが示されています。
さらに、PFOS及びPFOA以外のPFASについては、要検討項目としての整理も進められており、既に要検討項目となっているPFHxSは据え置きとしたうえで、7物質を要検討項目に追加して情報・知見を収集する方針案が示されています。
NPDWRと国内外の水道水のPFAS規制動向に注目
NPDWRはSDWAに基づく法的拘束力のある米国の飲料水基準です。現行の最終規則では、PFASに関して6項目(うち1項目は混合物)を対象に、MCLおよびMCLGが設定されています。
ただし、2025年5月の公表により、混合物(ハザードインデックス)など一部の規制内容は再検討の対象となり、あわせて公共水道システムの遵守期限に関する追加の猶予も検討されています。今後の動向については、引き続き注視が必要です。
また日本国内でも、水道水に関するPFASの位置づけや運用は今後変化する可能性があります。米国に限らず、国内外の最新の指標や制度動向を確認し、必要に応じてPFAS検査などの対応を早期に検討しましょう。
ユーロフィンのPFAS分析については
こちらからお問い合わせください
記事の監修者
![]() |
PFAS分析を行うユーロフィングループのネットワークを活かして、国内外の様々なPFASにまつわる情報を配信しています。 |
関連記事
![]() |
PFASの基準値とは?日本と各国の飲料水基準や超過時の対応策 PFAS基準値を国際比較。日本の基準化動向とEU飲料水指令、各国のガイドライン・超過時対応を整理。 |
![]() |
企業が知るべきPFASの条約・規則・規制のまとめ|国内外の最新動向 PFASに関する条約・規制の最新動向をご紹介。輸出入・製造に関わる企業が押さえるべきポイントを解説します。 |
【参考資料】
- EPA Announces It Will Keep Maximum Contaminant Levels for PFOA, PFOS|EPA
- National Primary Drinking Water Regulations|EPA
- Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS) NPDWR Implementation|EPA
- Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS)Final PFAS National Primary Drinking Water Regulation|EPA
- 米国環境保護庁(EPA)、PFASの第一種飲料水規則(NPDWR)を最終決定したと公表 (前半1/2)|食品安全委員会
- Understanding the PFAS National Primary Drinking Water Proposal Hazard Index|EPA
- 「水質基準に関する省令の一部を改正する省令」及び「水道法施行規則の一部を改正する省令」の公布等について|環境省
- 水質基準に関する症例改正の概要について|環境省






