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PFOAはどのように規制されている?これまでの動向と合わせて解説

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投稿日:2024年4月24日

審判

PFAS(有機フッ素化合物)の中でも多く使用されてきたPFOA(ペルフルオロオクタン酸)。法律による規制が定められ、2021年には国内での製造・輸入などが禁止されました。

その結果、PFOAを使用しているメーカーは、保証方法・代替品の検討などを含めて、多くの対応に追われました。

なぜPFOAは厳格に規制されているのでしょうか。その背景には、どのような経緯があったのでしょうか。

本記事では、PFOAの規制内容、規制理由、企業の対応について解説します。

 

INDEX

 

 

PFOA(ペルフルオロオクタン酸)の法規制とは

PFOAは、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)に基づき、製造・輸入等が原則的に禁止されています。まずは規制の背景について解説します。

 

日本におけるPFOAはいつから規制されている?

2019年にPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)で、PFOAが廃絶の対象となる付属書Aに記載されました。
POPs条約を批准している日本は、 2020年に水道水におけるPFOAとPFOSを合算した暫定目標値が定めました。2021年には化審法でPFOAの製造・輸入などが禁止されています。

現在はさらなる規制の拡大や、強化へと進むのかを含めて、議論が進められています。

 

日本におけるPFOA規制の内容は?

日本におけるPFOA規制の内容は、現状では主に2つあります。一つ目は使用への規制、もう一つは水道水における規制です。

 

・使用の規制
PFOAの原則的な使用・製造・輸入禁止とは、下記の状態を指します。

  1. 製造・輸入の許可制(化審法第17条、第22条)
  2. 政令で定める製品で第一種特定化学物質が使用されているものの輸入の禁止(化審法第24条)
  3. 政令で指定された用途(エッセンシャルユース)以外の使用の禁止(化審法第 25条)
  4. 取扱い等に係る技術上の基準(化審法第28条)
  5. 環境の汚染の進行を防止するために特に必要があると認められる場合、第一種特定化学物質の製造・輸入業者等に対し、当該化学物質又は当該化学物 質が使用されている製品の回収等の措置命令(化審法第34条)

引用:経済産業省:第一種特定化学物質に指定することが適当とされたペルフルオロオクタン酸(PFOA)関連物質の個別の適用除外の取扱い及びこれらの物質群が使用されている製品で輸入を禁止するものの指定等について(案)、3ページ
https://www.meti.go.jp/shingikai/kagakubusshitsu/anzen_taisaku/pdf/2021_04_01_01.pdf

製品に意図的に含有しなかった場合でも、製造の副産物としてPFOAが発生し、製品に含有された場合も規制の対象となる場合があります。

 

・水道水における規制

水道水における規制は、2020年に法律で制定されました。PFOAとPFOSを合算して50 ng/Lと定められています。

しかし、これはあくまで目標値であって、規制値ではありません。管理方法や規制のあり方を巡って、専門家・行政・企業の間で様々な議論が起こっています。今後の動向に注目が必要です。

 

 

PFOAが規制される理由とは

海洋タンカー

PFOAを含めたPFASの環境への影響は、2000年代に議論され始めました。

当時、化学的に安定性の高いPFOAは製造業で広く使われていました。

しかし、世界中でPFOAを含むPFASが環境に長く残留する懸念が明確化し、2010年代以降、その対応策として使用しないという方法が採用され始めたのです。

現在では川や河川水に含まれるPFOAの濃度にも目標値が制定されており、規制の範囲は拡大しつつあります。

 

PFOAは海外でも規制されている?

PFOAはヨーロッパ諸国(EU)でも積極的に規制されています。特にPFOAの使用を禁止したPOPs条約は、ヨーロッパ諸国を含めて世界180ヶ国で批准されており、各国で法律による規制を実施しています。

また、アメリカはPOPs条約を批准していませんが、各州の法律により独自のPFOA規制が定められています。

 

PFOAが日本で規制された理由

PFOSを含めたPFASによる環境汚染の問題は2000年頃からヨーロッパやアメリカを中心に議論されていました。各国の研究が進む中で、PFASの一種であるPFOSが「環境に長く残留し続ける」として2009年に使用禁止。

PFOAも環境汚染の影響が考えられるとして、2021年に使用禁止となりました。

 

日本におけるPFOAの法規制の動向

日本におけるPFOA規制の動向は、以下のように進んできました。

2013年 国内メーカーがPFOAの製造を自主的に終了。
2014年 環境省によりPFASの一種であるPFOSとともに「要調査項目」として位置づけられる。
2019年 POPs条約によりPFOAが規制物質に追加。
2020年 水道水におけるPFOA・PFOSの濃度目標値が定められる。
2021年 化審法の第一種特定化学物質に指定。製造・輸入を禁止に。

 

 

PFOA規制に伴う企業の対応

ビルのある背景

PFOA規制に伴い、企業はPFOAを含有しない製品開発もしくは設計変更の実施を余儀なくされました。

 

2025年度までに有機フッ素化合物の生産中止へ

世界的な化学メーカー8社は、2006年に「PFOA自主削減プログラム」に参画。POPs条約でPFOAの使用が禁止される4年前の2015年末までに、PFOAの製造を終了しました。

この内の一社は、2025年までにPFASそのものの製造から撤退すると表明しています。

 

PFOA代替品の模索

PFOAの代替品の開発は、各メーカーで研究開発が進んでいます。例えば、非フッ素の代替品や、危険性の少ないフッ素化合物などが開発されつつあります。

 

PFOA FREE製品の開発

長らくフライパンのコーティングに使用されてきたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)。その製造の補助剤にもPFOAは使用されていました。しかし、各メーカーがPTFEの製造方法の改善に取り組んだ結果、現在では様々なPFOA FREEのフライパンが販売されています。

 

 

PFOAが引き起こす諸問題

PFOAを含む一部のPFASが引き起こす諸問題について解説します。

 

PFOAを摂取することで起こる人体への影響

PFOAを飲料水などから摂取すると、発がんのリスクが高まると懸念されています。しかし、その期間・量は明確になっていません。今後の研究成果が待たれます。

 

PFOAが水道水から検出

川や井戸など飲み水の水源からPFOA・PFOSが検出されたことを受け、国では2020年より調査を開始。2022年には法律でPFOA・PFOS含有量の目標値が定められました。

 

PFOAの水道水への含有量を全国で調査

2020年には、川や井戸など飲み水の水源を含めた全国の河川143地点で、PFOA・PFOSの含有量調査を実施しました。

 

 

PFOAの規制は今後厳しくなる可能性がある

PFOAの使用規制は現在最も厳しい状態にあり、これ以上厳しくなる可能性は低いと予測されています。しかし、環境や人体への影響についてはまだ研究で明らかになっていない部分が多いため、研究が進むにつれて規制が強まる可能性があります。

研究の内容次第では、その他のPFAS製品への規制の波及も予想できます。最新の動向を追い続けましょう。

 

 

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【参考資料】

 

 

記事の監修者

高藤 晋さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ
セールス・マーケティングチーム

Manager 高藤 晋

<経歴>

2012年 University of Otago 微生物免疫学部卒
2015年 東海大学大学院 博士前期 修了
2019年 横浜市立大学大学院 生命ナノシステム研究科博士後期課程修了
2019年 株式会社ベリタスに入社し、オルガノイド関連商材の展開に携わる。2024年より現所属。

オタゴ大学では、食品微生物など、東海大学ではトランスジェニック植物を使用したホルモン作用の解析、横浜市立大学では植物ホルモン化合物の定量分析などを行っていた。