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PFHxAはどのような化学物質?使用用途や規制動向

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投稿日:2024年9月9日(2026年2月18日更新)

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PFAS(有機フッ素化合物)は、環境や人体への影響が懸念されており、世界各国で規制が強化されている化学物質です。

このうち一部のPFASは、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)で廃絶・制限対象に指定されており、これらの製造と使用は原則として禁止されています。

規制対象外のPFASについても国によって規制が議論されており、近年耳にする機会が増えているPFASの一つがPFHxA(ペルフルオロヘキサン酸)です。

本記事では、PFHxAの使用用途や規制動向について詳しく解説します。

 

INDEX

 

 

PFHxAとはPFASの一種

PFASは1万以上の種類があるといわれており、PFHxAもその一種です。

炭素とフッ素が強固に結びついた構造を持つPFASは化学的に安定している一方で、環境や人体への影響が懸念されています。

その中でも、複数の研究結果から人の健康に影響を与える可能性が高いとされている以下のPFASは、POPs条約で規制対象となり、製造と使用が原則的に禁止となりました。

 

  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)

 

また、2025年4月28日〜5月9日に開催されたストックホルム条約第12回締約国会議(COP12)では、新たに「長鎖ペルフルオロカルボン酸(LC-PFCA)とその塩及びLC-PFCA関連物質」が附属書A(廃絶)に追加されることが決定されました。

2025年12月時点では、PFHxAの製造と使用は禁止されていませんが、名称が似ているPFHxSと混同されやすいため注意しましょう。

PFASの特徴について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向まで

pfas

 

 

PFHxAの主な使用用途

PFHxAとは?

PFHxAは化学的な安定性の高さから、主に製品の性能を向上させる目的等で使用されてきました。主な用途は、次の通りです。

 

PFHxAの主な使用用途
繊維製品、食品包装品、防水スプレー、化粧品、泡消火薬剤、研磨剤および洗浄剤、電子機器や半導体、腐食防止剤など

 

PFHxAはPFOAの代替物質として利用される事例が多く、PFOAはこれまでに、撥水・撥油剤やコーティング剤などの製造で重要な役割を果たしてきました。

 

【関連記事】PFOAとは?人体への影響や各国の動向、法規制の情報について

PFOA

 

PFHxAはPFOAと同様の性質を持ちながら、体内半減期がPFOA等より短いことから、生物蓄積性は相対的に低いと報告されています。また、短鎖PFCAは長鎖PFCA(例:PFOA)より毒性が低いとする見解もあるため、代替物質として利用されてきました。

 

PFHxAが環境や人体に及ぼす影響

PFHxAが環境や人体に及ぼす影響については、EPA(米国環境保護庁)が2023年4月に毒性評価結果を公表しています。EPAはPFHxAについて、加水分解や光分解などに耐性をもっていることから、他のPFASと同様、環境中で自然分解されにくいと指摘しました。

また、ヒトがPFHxAに十分にばく露された場合、肝臓、発生、造血、内分泌への影響を引き起こす可能性が高いことが示されていると結論づけています。その一方で腎臓や生殖、免疫など他への影響については、評価するには根拠が不十分と判断しています。

PFHxAに関する知見は更新される可能性があるため、関連する評価や規制動向の継続的な確認が重要です。

 

PFHxAは短鎖PFASとして懸念されている

PFASは明確な定義はないものの、炭素数により「長鎖」「短鎖」と区別されることがあり、PFHxA(炭素数6)は短鎖PFASに分類されることが多いとされています。

短鎖PFASは、規制が進む長鎖PFASの代替として使用されるケースが多く、生物蓄積性が低い可能性があると想定されている一方で、環境中での蓄積が広範囲に及んでいるなどの懸念点が指摘されています。

2018年にヨーロッパで発表された論文(※)では、PFHxAを含む短鎖PFASについて、土壌や水中での移動性が高いこと、最終的な分解生成物の残留性が極めて高いことなどを挙げ、環境への懸念を示しました。また、短鎖PFASは一度環境中に放出されると残留しやすく、恒久的なばく露につながる点も課題として挙げられています。

同論文では、予防原則の観点から、短鎖PFASを高懸念物質(SVHC)として特定し、REACH規則(化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則)の制限(restriction)で環境や人体へのばく露を最小化すべきだと提案しています。

 

※参照:Short-chain perfluoroalkyl acids: environmental concerns and a regulatory strategy under REACH|Stephan Brendel,Éva Fetter,Claudia Staude,Lena Vierke,Annegret Biegel-Engler|German Environment Agency

 

 

PFHxAとPFHxSの違い

幾何学模様(青とオレンジ)

PFHxAとPFHxSは、いずれもPFOAやPFOSの代替物質として使用されてきました。化学構造が似ていることから混同されやすいため、違いを整理して理解する必要があります。
PFHxAはPFOAの代替物質として使用される機会が多く、2025年12月現在でPOPs条約によって製造や使用は禁止されていません。

一方、PFHxSはPFOSやPFOAと同様の性質を持ち、これらの代替物質として使用されてきた化学物質です。2022年にPOPs条約の附属書A(廃絶)への追加が決定し、製造や使用に対する規制が世界的に始まりました。

条約に加盟している日本でも、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)が整備され、2024年からPFHxSの製造と使用は原則禁止とされています。

PFHxSに関して詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

 

【関連記事】PFHxSとは?輸入が禁止される理由と対策について

 段ボール

 

 

PFHxAは国内で規制されていない

2025年12月時点でPFHxAは、水道水の水質基準として基準値が定められている物質ではありません。

一方で、環境省の「要検討項目と目標値(46項目)」では、PFHxAを含む8物質が要検討PFASとして位置付けられています。また、水質汚濁に係る環境基準の「要調査項目リスト(令和7年9月時点)」にも、PFHxAが要調査項目として記載されています。

国内におけるPFASの規制は主に化審法、水質汚濁防止法、水道法が関わっており、特にPFOSとPFOAはPFHxSよりも規制が強化されています。

PFHxAは現段階で水道水の水質基準の対象ではないものの、上記の通り「要検討PFAS」や「要調査項目」には含まれているため、今後の制度見直しや行政発表の動向は継続して確認しておくとよいでしょう。

国内のPFAS規制について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

 

 【関連記事】日本のPFAS規制の現状は?国内の最新動向や各省庁の取り組み

2人の男性調査員

 

 

海外におけるPFHxAの規制状況

地球の模型と子供の手

PFHxAは、2025年12月時点でPOPs条約のような国際条約による一律の規制対象にはなっておらず、日本でも化審法等による具体的な規制は行われていません。

一方で、PFASに関する議論が世界的に進む中、国や地域によってはPFHxAや関連物質を対象に、用途制限などの対応が検討・実施されているケースもあります。

以下では、海外の主な動向を国・地域別に整理します。

 

米国

米国はPFASに関する議論や対応が進んでいる国の一つで、連邦レベルではEPA(米国環境保護庁)が中心となって評価や指針の整備を進めています。

PFHxAについては、EPAがIRIS(統合リスク情報システム)で毒性評価を公表しており、十分なばく露がある場合に肝臓、発生、造血、内分泌への影響を引き起こす可能性が高いことが示される一方、腎臓や生殖、免疫などは現時点の根拠が不十分とされています。

またEPAは、水生生物の保護を目的とした淡水(急性)のベンチマークを公表しており、PFHxAは4.8 mg/L(1時間平均、3年に1回を超えない頻度)が示されています。これは飲料水の基準値ではなく、州などが水質基準を検討する際の参考となる数値である点に注意が必要です。

さらに米国では、州単位でもPFAS対策が進んでいます。イリノイ州では、コミュニティ水源井戸での検出を契機にPFHxAの健康勧告を設定しており、2025年4月11日付の更新で勧告値を0.0019 mg/L(1,900 ng/L)に改定しました(従来は0.0035 mg/L)。

イリノイ州がまとめた資料では、PFHxAについて連邦レベルのMCL(最大汚染レベル)・MCLG(最大汚染レベル目標値)が公表されていないことも明記されています。

 

カナダ

カナダでは、カナダ保健省(Health Canada)が飲料水について、PFOS・PFOAのガイドライン値に加え、PFHxAを含む複数のPFASに「飲料水スクリーニング値(DWSV)」を示しています。

PFHxAについては、0.2 µg/L(0.0002 mg/L)のスクリーニング値が掲載されています。

その後、政府は2021年にPFASを一つのグループとして対策を行う意向を表明しており、ガイドライン値やスクリーニング値の見直しを進めています。

こうした見直しの途中段階として、カナダ保健省は2024年8月9日に「PFHxAを含む25種類のPFAS合計値を30 ng/L(0.03 µg/L)」とする飲料水の目標を発表しました。

同目標は、従来のPFOS・PFOAのガイドライン値と9種類のPFASのスクリーニング値に代わる暫定的な位置付けで、再評価が完了するまでのばく露低減を目的としています。

 

欧州

EU(欧州連合)は、PFHxA(その塩およびPFHxA関連物質)をREACH規則の附属書XVII(制限物質)に追加し、一定濃度以上での上市や使用を用途別で段階的に制限することを2024年に採択しました。

適用開始時期は用途によって異なり、例えば一部の用途では2026年4月10日から、衣類などの消費者向け製品では、2026年10月10日から順次制限が適用されます。

また、EUでは飲料水に対しても「全PFASの合計0.50 μg/L」「20種類のPFASの合計0.10 μg/L」の基準を2020年に設けました。20種類のPFASの中にはPFHxAも含まれており、加盟国は2026年1月12日までに国内の法整備が求められています。

加盟国の一つであるドイツは、2023年の飲料水条例改正でEUの枠組みに沿ったPFAS管理を取り込み、2026年1月12日から「20種PFASの合計 0.1 μg/L」を導入するとしています。加えてドイツでは、PFHxS・PFOS・PFOA・PFNAの4物質合計について、2028年から「0.02 μg/L」という追加の合算基準も設けています。

またPFHxAについては、ドイツのPFAS評価ガイドラインにおいて、地下水の評価基準値の一つとして6.0 μg/Lが示されています。

さらに、デンマークにおいても、独自のPFASグループ基準とEU基準よりも厳しい「PFHxAを含む22PFASの合計0,10 μg/L」の規定を設けるなどし、PFAS対策に取り組んでいます。

さらに、デンマークでもPFAS対策が進められており、飲料水の規定として「PFASの合計 0.10 μg/L」を設定しています。こちらはPFHxAを含む22種類のPFASを対象としており、対象物質の範囲という点ではEUの20種類よりも多い独自の基準となっています。

欧州でのPFAS規制について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

 

【関連記事】【最新版】ヨーロッパ輸出で注意すべきREACH規則のPFAS規制リスト

調査員

 

 

PFHxAの今後の動向に注意しましょう

POPs条約などの国際的な枠組みにより、PFOSやPFOAの原則的な製造・使用禁止が進む中、代替物質として利用される機会が増えていたPFHxSも2024年に同様の規制対象となりました。

PFHxAもPFHxSと同様に、代替物質として広く使用されていますが、環境や人体への影響が懸念される場合、将来的に国内でも規制が進む可能性があります。

規制の対象や基準値は国や制度ごとに更新されるため、最新の行政発表や関連資料を継続的に確認していきましょう。

 

 

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記事の監修者

緒方さん

ユーロフィン日本環境株式会社

ラボラトリー事業部 POPsグループ

PFAS・PCBチーム 緒方 駿

<経歴>

2017年 日本分析化学専門学校 生命バイオ分析学科 卒業
卒業後、リンパ球バンク株式会社に入社し、ANK療法に必要な細胞の培養などを行う。
その後2019年から田村薬品工業株式会社にて医薬品の理化学試験、微生物試験及びバリデーション取得などに従事。
2022年よりユーロフィン日本環境株式会社でPFAS分析や分析法導入などを行う。

 

 

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