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1日に摂取しても問題ないPFASの摂取量は?日本と海外の基準を比較

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投稿日:2025年9月1日

pfasの分子構造と用途

PFAS(有機フッ素化合物)は、環境や人体に残存し続ける特性を持つ化学物質の総称です。

世界各国の研究で一部のPFASが健康に影響を及ぼす可能性が指摘されていることから、摂取しても健康に問題がないとされるPFAS摂取量の目安について知りたい方も多いでしょう。

本記事では、日本が定めている耐容一日摂取量(TDI)や、各国の摂取量基準との比較データについて解説します。

 

INDEX

 

 

PFASの耐容一日摂取量(TDI)とは

pfasの耐容一日摂取量-tdi-イメージ

PFAS(有機フッ素化合物)は、水や油をはじく性質や熱への強さを活かして、衣類や食品包装、泡消火薬剤など様々な製品に使われてきた化学物質の総称です。

分解されにくく環境や体内に残りやすい特性から、一部のPFASには健康に悪影響を与える可能性があると考えられており、日本を含む各国で「TDI(耐容一日摂取量)」が定められています。

TDIとは、ヒトが一生涯にわたって毎日摂取し続けても健康への影響がないと推定される1日あたりの摂取量の目安です。

日本政府が定めているPFASのTDIは、以下の通りです。

 

対象物質 TDI(耐容一日摂取量)
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸) 20 ng/kg/日
PFOA(ペルフルオロオクタン酸) 20 ng/kg/日

 

PFASについてより詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向までPFAS

 

 

耐容一日摂取量(TDI)の算出方法

TDI算出プロセスイメージ

TDI(耐容一日摂取量)は、主に「証拠の確かさが強い」と判断された動物試験の結果に基づき、ヒトへの影響を推定して設定されています。その際、観察された影響の中で最も低い用量で生じたものに着目し、安全側に配慮して算出されるのが一般的です。

日本ではこのような手法に加え、各国・各機関が実施した毒性評価のうち「妥当と考えられる評価値」の中から、さらに安全側に立った最も低い値を選定するという方針が取られています。

そのため、動物試験の結果を主軸に、疫学研究なども参考にしながら慎重に検討された数値といえるでしょう。

日本のTDIを設定するにあたって主に検討された動物試験や疫学研究の結果については、以下の通りです。

 

評価対象 結果
動物試験 PFOS:投与により、胎児等の死亡、出生児体重の低下、眼が開く時期の遅れなどが確認される。

PFOA:投与により、出生児の体重増加の抑制、骨の形成の遅れなどが確認される。
※いずれもヒトの暴露量よりも多く投与した結果 
疫学研究  母体血を介した胎児のばく露と、出生児体重の低下との関連は否定できないが、知見は限られており、出生後の成長に及ぼす影響は不明。低出生体重児(2,500 g未満)等については評価した報告は限られている。

引用:PFASに関するハンドブック|環境省

 

動物実験から人体へのTDIを算出する際には、まず動物実験により健康影響が見られた用量をもとにヒトへの用量を推計し、さらに不確実係数を考慮して計算しています。PFOSは出生時体重の低下、PFOAは骨の形成の遅れが根拠として採用されています。 
なお、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)については、評価を行うための十分な科学的知見が得られていないため、2025年8月の時点ではTDIの算出が困難とされています。

PFASが人体に及ぼす影響や健康リスクについては、下記の記事でも詳しく解説しています。

 

【関連記事】PFASが人体に及ぼす影響は?健康リスクや国内の汚染事例

悩む女性

 

 

日本と世界各国との耐容摂取量の比較

検査イメージ

日本では、環境省がPFOSとPFOAのTDIを設定しています。

他国でも、EPA(米国環境保護庁)や、EFSA(欧州食品安全機関)などが人体への影響が懸念されるPFASに対する耐容摂取量や指針値を独自に定めています。

ここからは、米国やEUを含む各国の耐容摂取量についてご紹介します。

 

米国

米国ではPFASによる健康影響評価を進めており、EPAは2024年にPFOSとPFOAに対する正式なRfD(参照用量)を設定しました。

RfD(Reference Dose)とは、ヒトが生涯にわたって毎日摂取しても健康への悪影響が生じないと推定される1日あたりの摂取量を指すもので、日本で用いられるTDI(耐容一日摂取量)と同様の概念です。

また、PFOS・PFOA以外のPFASについても、EPAは過去の毒性評価に基づき、以下の評価値を提示しています。

 

対象物質 RfD(または評価値)
PFOS 0.1 ng/kg/日
PFOA 0.03 ng/kg/日
GenX(HFPO-DA) 3 ng/kg/日
PFBS 300 ng/kg/日
PFNA 3 ng/kg/日
PFHxS 2 ng/kg/日

参照1:Human Health Toxicity Assessment for Perfluorooctane Sulfonic Acid (PFOS)|EPA
参照2:Human Health Toxicity Assessment for Perfluorooctanoic Acid (PFOA)|EPA
参照3:PFOS、PFOA 以外の PFAS に係る国際動向|環境省

 

これらの値は、EPAが2024年4月に公表した毒性評価報告書および、過去にATSDR(米国毒性物質疾病登録庁)が公表した関連報告をもとに整理しています。

特にPFOSとPFOAについては、複数の疫学研究で示されている免疫系への影響(特にワクチン後の抗体価低下を含む抗体応答の抑制)を主要な根拠として評価が行われ、最終的にEPAがRfDを設定しています。

GenX、PFBS、PFNA、PFHxSについては、EPAの既存の毒性評価や動物試験で確認された臓器影響をもとに評価が行われています。

GenXでは肝臓影響や腎機能変化、PFBSでは腎臓影響や甲状腺ホルモン関連の変化、PFNAでは肝毒性や免疫影響・発達影響、PFHxSでは神経発達影響・甲状腺影響・免疫影響などがエンドポイントとして報告されています。

 

EU

EUでは食品中のPFASによる健康リスク評価に基づき、2020年にTWI(耐容週間摂取量)が設定されました。

この値は、疫学研究で報告されたワクチンへの抗体応答の低下など、免疫系への影響を最も重要な要素と位置付けたうえで設定された数値です。対象物質とTWIの数値については、以下の通りです。

 

対象物質 TWI
4種類のPFAS
(PFOS、PFOA、PFNA、PFHxS)
4.4 ng/kg/週
※PFOS、PFOA、PFNA、PFHxSの4種類合計値

参照:PFAS in food: EFSA assesses risks and sets tolerable intake|EFSA

 

オーストラリア・ニュージーランド

オーストラリアとニュージーランドでは、FSANZ(オーストラリア・ニュージーランド食品基準機構)が2016年にPFASの毒性評価を行い、PFOSおよびPFOAに対するTDIを設定しています。

 

対象物質 TDI
PFOS+PFHxS(※) 20 ng/kg/日
PFOA 160 ng/kg/日

参照:Health based guidance values for PFAS for use in site investigations in Australia
※PFHxSはTDI算出の証拠が不十分であるとし、予防措置としてPFOSとの合算基準値を設定

 

この評価は、当時利用可能だった動物実験の毒性データに基づき、PFOSでは親および仔の体重増加の低下、PFOAでは胎児毒性といった発達影響を主な根拠として設定されています。

一方で、ヒトを対象とした疫学データは、TDIの算出に用いるには不十分であると判断されています。その結果、より低用量での免疫影響などを重視した米国やEUの評価と比べると、FSANZのTDIは相対的に高い値となっています。

 

ドイツ

ドイツでは、PFOS、PFOAに加えて複数のPFASに対してTDIが設定されています。
これらの値は、当時利用可能であった動物実験データなどを根拠としており、肝細胞肥大、発達影響、免疫影響などの毒性評価をエンドポイントとして用いています。 

 

対象物質 TDI
PFOS 28.6 ng/kg/日
PFOA 20.37 ng/kg/日
PFBA 3,000 ng/kg/日
PFHxA 1,840 ng/kg/日
PFNA 16.7 ng/kg/日
PFBS 1,640 ng/kg/日
PFHxS 30 ng/kg/日

参照1:PFOS、PFOA に係る国際動向|環境省
参照2:PFOS、PFOA 以外の PFAS に係る国際動向|環境省

 

カナダ

カナダでは、動物試験による肝細胞への影響などをもとにTDIが設定されています。

PFOSのTDIは60 ng/kg/日と他国と比べても比較的高い数値となっています。

 

対象物質 TDI
PFOS 60 ng/kg/日
PFOA 21 ng/kg/日

参照:PFOS、PFOA に係る国際動向|環境省

 

英国

英国ではEU離脱後も独自にPFASの耐容摂取量を定めており、成人と小児で異なるTDIを設定している点が特徴的です。EUよりもさらに厳しい水準となっており、年齢別の曝露リスクを細かく評価しているのが特徴です。

 

対象物質 TDI
PFOS 成人:3.3 ng/kg/日
小児:10 ng/kg/日
PFOA 成人:3.3 ng/kg/日
小児:10 ng/kg/日

参照:PFOS、PFOA に係る国際動向|環境省

 

 

日本の耐容一日摂取量(TDI)の動向

日本のPFAS TDI

米国とEUが定めているPFASの耐容摂取量は、日本を含む各国よりも厳しく設定されている傾向があります。

これは疫学研究の結果を重視し、より低用量でも影響が出る可能性を考慮しているためと推測されます。また、米国、EU、ドイツはPFOSやPFOA以外のPFASに対して耐容摂取量を設定しているのも特徴です。

日本国内のTDIについては、環境省発行の「PFASに関するハンドブック」(令和7年3月)でも、「科学的知見が集積された場合は、TDIが見直される可能性がある」と明記されています。

また、TDIの見直しに向けた国内の取り組みとして、環境省は「PFASに関する総合研究」を推進しており、PFOS・PFOA以外のPFASの有害性評価や、母子を対象とした大規模な疫学研究など、科学的知見の拡充が進められています。

こうした研究成果や海外での評価結果を踏まえて、日本のTDIも将来的に見直される可能性があるといえるでしょう。

 

 

耐容一日摂取量(TDI)の最新情報をチェックする

日本は、PFASが人体に影響を及ぼす可能性のある摂取量の目安として、TDI(耐容一日摂取量)を定めています。

しかし、PFASの健康への影響はまだ不明な点が多く、国によって見解が異なることから、耐容摂取量の明確な目安は決まっていないのが実情です。

そのため、今後実施される研究の成果によって、適宜見直されていく可能性もあります。
TDIはPFAS規制に影響を与える要因の一つであるため、PFASに関連する製品やサービスを扱う企業は、国内のTDIの最新動向に注意しておくことが重要です。

 

 

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記事の監修者

町田

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ

研究開発チーム 町田 瑞希

<経歴>

2020年 神戸大学農学部 卒業
2022年 神戸大学大学院 卒業 細菌のゲノム縮小法の開発を行う。
卒業後、香料メーカーにて香気分析に従事し、香粧品、食料品の香気分析や天然物の重要香気成分の解明を行う。2024年にユーロフィン日本環境株式会社入社し、PFAS分析・社内独自法の開発に従事。

<発表>

2025年6月 第30回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会
「PFAS多項目の低コスト・迅速測定法の開発」

資料はこちからダウンロードいただけます。

 

 

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