JavaScript is disabled. Please enable to continue!

Mobile search icon
PFAS MEDIA >> PFAS解説書 >> PFAS,前駆体

前駆体PFASとは?特徴や問題点、分析方法について

Sidebar Image

投稿日:2024年12月16日

PFAS 検査

1万種類以上あるPFAS(有機フッ素化合物)には、日本の化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)等の法律で規制される物質がありますが、その他に環境中に放出された後、時間が経つと有害性が確認されているPFASへ変化する前駆体と呼ばれる物質があります。

前駆体については世界中で研究が進められている段階ですが、今後は国内外のPFAS規制に関わってくる可能性があります。

この記事では、PFASの前駆体物質の特徴や分析方法について詳しく解説します。

 

INDEX

 

 

PFAS(有機フッ素化合物)とは?

水のサンプリング

PFAS(有機フッ素化合物)とは、炭素とフッ素の強い結合を特徴とする化学物質群で、撥水性や耐熱性に優れた特性を持っていることから、工業製品や日用品に広く使用されています。

別名で「永遠の化学物質」とも呼ばれており、自然環境や人体内で分解されにくく、長期間蓄積し続ける性質があります。PFASによる曝露や汚染は世界的に問題視されており、国際的に規制が進んでいます。

日本では化審法でPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)や、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)などが第一種特定化学物質に指定されており、国内での製造及び輸入が原則禁止されています。

PFASについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向まで

PFASとは

 

 

前駆体のPFASについて

農業排水

前駆体に分類されるPFASは、環境中で有害性が確認されているPFASへ変化する可能性があるものを指します。しかし、2024年11月時点では、国内で水道水質基準や排水基準の対象にはなっていません。ここからは、PFASの前駆体について解説します。

 

前駆体とは?

前駆体とは、化学反応を経て別の物質に変化する元の物質のことです。一部のPFASは環境中で特定の条件を満たすことで分解され、PFCA(ペルフルオロカルボン酸)やPFSA(ペルフルオロスルホン酸)など、すでに有害であることが判明している別のPFASに変化する可能性があります。

前駆体自体もPFASの一種であり、工業製品や日用品で使用されることが多く、撥水剤や防汚コーティング剤などに含まれています。

前駆体の変化する先は、フッ素と結合している炭素の数に関係があり、たとえばフッ素と結合した炭素の数が8の前駆体は、同じく炭素数が8のPFOAやPFOS、あるいはそれ以下の炭素数のPFCAやPFSAに変化する可能性を秘めていることになります。

 

なぜ前駆体についても考慮すべきなのか?

前駆体も考慮すべき理由は、上述のようにこれらの物質が環境中でより有害性の高いPFASに変換される可能性があるからです。

FTOH(フルオロテロマーアルコール)や、FASE(パーフルオロアルカンスルホンアミドエタノール)などの前駆体は、一度環境に放出されると、分解を経てPFCA(PFOAが属するカルボン酸群)や、PFSA(PFOSが属するスルホン酸群)といった物質に変わる可能性があります。

しかし、前駆体として考えられる物質は機密として公開されていないものも多く、種類も膨大なため、環境中の前駆体の存在を確認できないケースも考えられます。

 

 

前駆体を分析する方法

PFAS 検査 分析

PFCAやPFSAの前駆体を分析する方法はいくつかあります。構造が分かっているものをLC-MS/MSでターゲット分析する方法や、構造が分からないものも含め全てのPFASを燃焼させ、出てきたフッ素の総量からPFASの量を推定する全フッ素分析法、前駆体をPFCAやPFSAに変換して将来的なリスクを評価するTOP Assayという方法が挙げられます。

 

 

国内の前駆体への規制動向

現在、前駆体について国内の水道水質基準や排水基準などは明確に定められていません。
しかし、これらの物質が環境中で有害なPFASに変化する可能性があることから、国内で規制の動きが進んでいます。

2023年7月、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令(化審法)の一部を改正する政令」が閣議決定され、「PFOA関連物質」として多数の前駆体が第一種特定化学物質に指定されました。

これは、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)の附属書改正を受けたものです。この規制により、PFOA関連物質を含有する製品の輸入が2025(令和7)年1月10日から原則禁止されています。

さらに「PFHxS関連物質」についても、第一種特定化学物質への指定手続きが進行中です。2023年5月には中央環境審議会から「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約の附属書改正に係る化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づく追加措置について(第四次答申)」が出され、これらの物質も規制対象に追加する方針が示されました。

 

 

前駆体にも注目しましょう

上述のように一部の前駆体は輸入の規制が始まっており、今後さらに規制が強化されていく可能性が高いでしょう。

前駆体については国際的な規制強化も検討されており、現在も世界中で研究が進んでいる段階です。今後も引き続き、前駆体を巡る世界の動向やニュースを定期的に確認することが大切です。

 

  

記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 野島 智也さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ 
研究開発チーム

Specialist 野島 智也

<経歴>

2012年 筑波大学 理工学群 化学類 卒業
2014年 筑波大学 数理物質科学研究科 化学専攻 博士前期課程 修了
2014年にユーロフィン日本環境株式会社入社し、ダイオキシン分析に従事。

2020年からは有機分析チームの分析要員としてPFOS・PFOA分析の立ち上げに従事し、その後、R&Dグループとして国内の分析法、EPA法、ISO法等を立ち上げる。

2023年には独自法による排ガス中のPFAS一斉分析法を立ち上げる。

 

 

ユーロフィンのPFAS分析については

こちらからお問い合わせください

お問い合わせ

 

 

関連記事

廃棄物

PFOSを含む廃棄物はどう処理すべき?処理方法と注意点

人体や環境への影響が確認されているPFOSが含まれる廃棄物は、適切な方法で処理する必要があります。PFOS含有廃棄物を処理する方法や注意点について解説。

実験風景

PFASの一種であるPFBSとは?特徴と規制の動向について

PFBSは物質の特徴や有害性への懸念から、米国やEUの一部の法律では規制対象になっています。PFBSの特徴と規制に関する最新動向について解説。

コンタクトレンズ

PFASはコンタクトレンズにも含まれている?健康への影響と安全性

様々な製品に使用されてきたPFASですが、コンタクトレンズにも含まれていることを示す研究もあり、その危険性について議論が進んでいます。コンタクトレンズに含まれるPFASの危険性などについて解説。

 

 

PFAS MEDIA TOPに戻る→


【参考資料】