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PFAS規制の例外的な取り扱いは?世界と日本の動向について

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投稿日:2025年4月30日

PFAS規制

PFAS(有機フッ素化合物)は環境中で分解されにくく、生態系や人体への影響が明らかになったことで世界的な規制強化が進んでいます。

しかし、日本を含む多くの国では、代替技術の整備の遅れや社会的な需要の大きさを理由に、一部で例外的な使用が認められるケースがあります。

この記事では、日本と世界におけるPFAS規制の現状と、例外措置が取られる場合の代表的な事例について解説します。

 

INDEX

 

PFAS(有機フッ素化合物)とは?

PFAS分析

PFAS(有機フッ素化合物)は、炭素とフッ素が強く結びついた構造を持つ化学物質の総称で、約1万種類以上が存在するとされています。

撥水性、撥油性、耐熱性、化学的安定性の高さなどの特徴から、フライパンのコーティング剤や衣類の撥水加工、半導体製造など様々な用途で使用されてきました。

一方で、一度環境中に排出されたPFASは自然分解されにくく、長期間残留することが問題視されています。特にPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)や、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)などの一部のPFASは、人体の健康や生態系への影響が懸念されています。

PFASについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向まで

PFAS

 

 

日本におけるPFASの法規制の内容

PFASの危険性

PFOSやPFOAなど一部のPFASは、国内の法律で規制や制限の対象になっています。ここでは、PFASに関連する法律の種類と、その規制内容について詳しく解説します。

 

化審法による規制

化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)とは、化学物質が国内の環境や人の健康に与える影響を未然に防ぐことを目的にした法律です。

2024年12月時点では、PFOS、PFOA、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)の3種類が化審法の第一種特定化学物質に指定されており、対象物質の製造・使用・輸入等が原則禁止されています。

PFOSは2010年に一部の用途を除いて第一種特定化学物質に指定され、2018年には全ての用途での使用が原則禁止になりました。

PFOAは2021年に指定され、製造・輸入、使用が原則禁止とされています。PFHxSも同様に、2024年2月から第一種特定化学物質に指定されました。

ただし、代替技術が確立されていない一部の用途については、特定の条件下で例外的な使用が許可されています。例えば、泡消火薬剤などの在庫の使用については、厳格な基準のもとで管理されています。

 

水道法による規制

日本の水道法では、PFOS・PFOAなど一部のPFASについて、明確な水道基準項目としての規定はありません。しかし厚生労働省は、水道水に含まれるPFASの暫定目標値を設定しています。

厚生労働省が定めた水道水に含まれるPFASの暫定目標値は、PFOSとPFOAの合算値で50 ng/L以下となっています。この暫定目標値は、科学的知見や国際的な動向を踏まえて策定されました。

水道事業者には、この暫定目標値を超えた場合に水質改善措置を講じることが求められています。具体的な改善措置の方法としては、暫定目標値を超えた井戸の停止や水源の変更といった対策が過去に実施されてきました。

近年では水道法に改正の動きがあり、環境省は2024年12月24日に水道水に含まれるPFASの暫定目標値から水道法上の水質基準へと引き上げる方針を発表しています。

環境省は2026年4月からの施行を目指しており、これが実現すれば、今後は法律による検査や改善がより厳格化する可能性があります。

 

水質汚濁防止法による規制

水質汚濁防止法とは、日本の公共用水域や地下水の汚染を防止し、環境保全と公衆衛生の向上を目的とした法律です。

2023年2月に水質汚濁防止法の改正があり、PFOSとPFOAが指定物質に追加されました。

PFOSとPFOAについては事故時の応急措置や届出などの規定が適用され、製造や取り扱いを行う特定事業場には周知することが求められます。

また、PFOS・PFOAを含む泡消火薬剤の使用に伴い、物質が公共用水域に流出した場合は、流出状況を関係自治体に報告することも求められます。

 

 

PFASを含む泡消火薬剤の例外的な措置

PFASと消火器

化審法ではPFOSやPFOAの製造・輸入・使用が原則禁止されていますが、PFASを含む泡消火薬剤の使用については、例外的に認められています。

 

化審法の泡消火薬剤の例外措置について

化審法の第一種特定化学物質に指定されている化学物質が、製品の製造に不可欠であり、環境汚染の恐れがない場合に限って、例外的にその使用を認める場合があります。

この例外的な扱いを「エッセンシャルユース」といいます。

海外では、EU(欧州連合)のREACH規則(化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則)において、衣類の撥水性・撥油性を付与するためのPFAS使用がエッセンシャルユースの具体例として挙げられるケースもあります。

化審法では、現在まで第一種特定化学物質にエッセンシャルユースが認められた事例はありません。しかし、PFASを含む泡消火薬剤に関しては、以下の条件での使用が認められています。

 

用途 内容
航空機や一部の特殊消火設備 泡消火薬剤として、PFOSを含む消火剤は引き続き航空機や特定の防火設備で使用が許可されています。石油コンビナートや空港施設など、火災時に高い消火性能が要求される場面で必要とされるため、PFOS等を含む消火剤が保管・使用されています。

 

PFASを含む泡消火薬剤は、緊急時に航空機などの安全を確保する目的であれば、一部の使用が認められています。

しかし、厳しい管理や申請の手続きを行ったうえで、限定的な用途でしか使用が認められていません。また、漏出や環境への放出を防ぐための厳格な管理基準が義務付けられています。

 

例外になる理由

日本でPFOSを含む泡消火薬剤に例外的な措置が認められている理由は、過去に製造されたPFOSを含有した泡消火薬剤の在庫が現在も存在しており、これらの完全な廃棄が容易ではないためです。

特に消防活動のような緊急事態においては即時対応が求められるため、代替品への移行が完了していない状態で消火器を処分してしまうと、危険な事態に陥る可能性があります。

また、既存の消火設備を全面的に改修するには時間とコストがかかることから、現行の在庫を適切に管理しつつ、必要に応じて使用する方針が取られています。

 

  

海外におけるPFAS規制の例外事例を紹介

消火

海外のPFAS規制においても、例外的な使用が認められる場合があります。ここでは、海外におけるPFAS規制の例外事例について紹介します。

 

米国

米国は各州で法律が異なるため、州ごとに独自のPFAS規制を導入しています。一部の州では、PFASの例外的な使用を認めている事例もあります。

ニューヨーク州では、一般的な衣料品と雨天時の屋外用衣料品を区別して、段階的にPFASの使用を禁止しています。具体的には、個人用防護具を含む、着用者を健康または環境の危機から保護するように設計された職業用ユニフォームに関しては、PFASの規制は適用されません。

また、米国のDOD(国防総省)は、泡消火薬剤に使用される水性フィルム形成泡の使用を排除する措置を講じています。しかし、艦船で使用している泡消火薬剤については、2026年10月までこの措置の適用を免除しています。

 

EU(欧州連合)

EUのREACH規則では、一部の作業員の防護服に使用する撥水加工の用途では、例外的にPFASの使用を認める方針が示されています。

2023年に5つのEU加盟国(デンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン)は、ECHA(欧州化学品機関)に約1万種類のPFASを規制する法案を提出しました。これによって、これまで例外的に認められていたPFASの扱いが今後変わる可能性もあります。

一部では医療技術やクリーンエネルギーの観点からPFASの例外的な使用を求める声も挙がっており、今後の動向に注目が集まります。

 

POPs条約

POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)は、環境中で分解されにくく、生物蓄積性が高い有害物質の規制を目的とした国際条約です。

POPs条約では、PFOSが附属書B(制限)に、PFOAとPFHxSが附属書A(廃絶)に指定されています。

しかし、代替手段が未整備である場合、締約国は特定の期間内での「特定の適用除外」や「許容される目的」の登録が認められています。

 

その他の国の例外的な使用事例

日本や米国、EUの他にもPFAS規制を導入している国では、例外的な使用が認められるケースがあります。

例えば、オーストラリアでは、例外的にPFASを含む泡消火薬剤の使用が認められていますが、この例外が適用されるのは関係当局や水上船舶の乗組員などです。

またカナダでは、泡消火薬剤の例外的な使用を認めていますが、段階的に規制していく方針を示しています。

PFAS規制を実施している国でも、完全にPFASの使用を制限することなく、必要に応じて例外措置を取り入れているケースが多いことがわかります。

 

 

PFAS規制の例外について正しく理解する

日本では、化審法や水道法、水質汚濁防止法でPFASを規制しています。一方で、泡消火薬剤等に関しては、社会的なニーズの高さや処分に必要なコスト面の問題から、例外的な使用を認めている点を理解しておきましょう。

また日本だけでなく、米国やEU、カナダなどのPFAS規制においても、各国の事情によって例外的な使用を認めています。

生活の安全とリスクを考慮して、慎重かつ段階的なPFAS規制が求められています。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本総研 河原崎海

ユーロフィン日本総研株式会社

浜松PFAS事業部 PFASグループ

Manager 河原崎 海

<経歴>

2002年 神奈川大学工学部応用化学科 卒業

2004年 神奈川大学工学研究科応用化学専攻 修士課程 修了

2018年 静岡県立大学大学院 薬食生命総合学府 食品栄養科学専攻 博士課程 単位取得満期退学
学士・修士課程では膜分離、博士課程では食品中の機能性成分に関する研究を行う。

2004年 (一財)静岡県生活科学検査センター入所後、水道水・環境試料の分析に従事し、2012年から農薬メーカー傘下の受託ラボにて食品・農薬分析、試験法開発、異物解析、食品中ノンターゲット分析事業の立上げや、農薬GLP・食品衛生法登録検査機関・ISO17025試験所認定の取得や維持管理を行う。ユーロフィングループ参画後は、品質保証、ラボ移転業務に従事し、2021年からユーロフィン日本総研にてアスベスト事業部統括とラボ移転を担当し、2024年からPFASラボの立上げを担当。

<発表>

 

 

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