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PFASの一種であるGenXとは?化学物質の特性や規制の動向

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投稿日:2024年8月26日(2026年1月23日更新)

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PFAS(有機フッ素化合物)は、環境残留性や生物蓄積性などの観点から国際的に規制が強化されている化学物質群です。

こうした規制の進展に伴い、一部用途では代替物質の導入が進みました。

その代表例の一つがGenX(HFPO-DA)です。近年、GenX自体の安全性や環境影響についても検討が進んでおり、各国で管理方針の見直しが行われています。

 

INDEX

 

 

GenXとはPFASの一種

GenXとは?

GenXは、米国の化学メーカーがフッ素樹脂を製造する際の代替技術として開発し、商標登録した名称です。

この製造プロセスで用いられる化学物質が「HFPO-DA(ヘキサフルオロプロピレンオキシドダイマー酸)およびそのアンモニウム塩」であり、一般的にはこれらを総称して「GenX」と呼びます。

HFPO-DAは、その構造上、PFAS(有機フッ素化合物類)の一種に分類されます。

そのため、GenXは一部のPFASの代替物質として広く利用される一方で、近年ではその安全性や環境への影響が国際的に懸念され始めています。

 

GenXはPFOAの代替物質として使用 

GenXは、優れた耐熱性・耐薬品性をもつPFOA(ペルフルオロオクタン酸)の代替物質として開発され、多くの製造工程で用いられてきました。

PFOAは、焦げ付き防止加工、撥水・防汚コーティング、電子基板など幅広い用途で長年使用されてきましたが、その環境残留性や毒性が問題視され、2019年のPOPs条約第9回締約国会議(COP9)で附属書A(廃絶)に追加されました。これにより、各国で製造・輸入・使用の禁止が進められています。

この規制に先立ち、PFOAの代替物質としてPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)やGenXなどの新たな化学物質が導入されました。しかし、PFHxSも2022年のPOPs条約第10回締約国会議(COP10)で附属書Aに追加され、国際的に製造・使用が禁止されています。

このためGenXについても、その安全性や環境影響についても各国で評価・議論が進められています。

 

 

GenXが環境や人体に及ぼす影響

実際にGenXが環境や人体に対してどのような影響を及ぼすのか、その事例について解説します。

 

GenXの水環境における影響

米国ノースカロライナ州のケープ・フィア川流域では、GenXを含む新規PFASが飲料水源から検出された事例が報告されています。

2016年に科学誌「Environmental Science & Technology Letters」に掲載された研究では、同地域の河川水を分析した結果、GenXが既存のPFAS(PFOAなど)と並んで重要な水質汚染物質として確認されました。論文では、「従来の水処理技術では、PFOAよりもGenXの除去のほうが困難である」と指摘されています。

その後の調査で、約20万人以上の住民がGenXを含む飲料水を摂取していた可能性が明らかとなり、州当局や企業に対して対策を求める動きが広がりました。

さらに、2023年12月に発表された研究「GenX uptake by wheat and rice in flooded and non-flooded soils: a greenhouse experiment(浸水土壌と非浸水土壌における小麦と稲によるGenXの吸収)」では、温室実験の結果、GenXを含む水を吸収した小麦および稲で成長抑制の可能性が示唆されています。

 

GenXの人体における影響

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GenXの人体への影響については、現在も世界各国で研究が続けられています。

EPA(米国環境保護庁)は、GenXに関する毒性評価を行い、2021年10月に初めて公表、2023年3月に技術ファクトシートを更新しました。

この評価では、肝臓を主要な標的器官とし、腎臓、免疫系、生殖発達にも影響を及ぼす可能性があるとしており、従来型PFASと同様に環境中で残留し、健康影響をもたらす可能性があることを示唆しています。

 

 

日本国内でGenXの規制は定められていない

日本でもPFASに関する様々な対策が進められており、主な規制内容は以下の通りです。

 

関連法規 規制内容
化審法(※1) PFOS(※2)、PFOA、PFHxSを第一種特定化学物質に指定し、製造・使用を原則禁止
水質汚濁防止法 PFOSおよびPFOAを指定物質に追加し、事故時の届出や措置を義務化
公共用水域および地下水の要監視項目として、両物質の合計値50 ng/Lを指針値に設定
水道法 PFOSおよびPFOAを水質管理目標設定項とし、同様に合計値50 ng/Lを暫定目標値として設定
※2026年4月1日からは、暫定目標値から水質基準値へと格上げされる予定

※1:化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)
※2:PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)

現時点では、GenX(HFPO-DA)は特別な規制措置の対象には含まれていません。

ただし、2025年6月に「水道水質基準における要検討項目(要検討PFAS)」として、同年9月には「水環境における要調査項目」に追加されました。今後の調査結果や国際的な動向次第では、規制対象への格上げが検討される可能性があります。

 

 

GenXに関する海外の規制動向

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PFASの規制は、一般的に国際的なPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)の決定を基盤として、各加盟国が国内法を整備する形で進められています。

2025年11月時点で、GenXはPOPs条約の規制対象には含まれておらず、世界的な製造や使用の禁止措置は講じられていません。

一方で、一部の国や地域ではGenXに対する懸念を踏まえ、独自に濃度基準や排出規制を設定する動きが進んでいます。

以下では、主要国・地域におけるGenXの規制事例とその基準値について解説します。

 

米国におけるGenXの規制動向

米国では、GenXを含むPFASの規制が進められていました。

EPAは2024年4月、「PFAS National Primary Drinking Water Regulation(PFASに関する国家一次飲料水規制)」を発表し、飲料水中のPFASに関する基準値を初めて包括的に設定しました。

この中でGenXについて最大汚染物質濃度(MCL)を10 ppt(ng/L)と定めており、複数のPFAS混合物に対しても、総合的な毒性指標を考慮した評価手法を導入していました。

しかしEPAは2025年5月に、GenXを含む3種のPFASおよびPFAS混合物に対する基準値を撤回・再検討する方針を発表しており、改定内容は2026年春に最終決定される予定です。

連邦レベルの規制は撤回された一方、各州法では独自の基準が設けられています。特に飲料水以外の分野で、土壌・地下水・大気に対する州独自の閾値や報告基準があり、代表的な州の取り組みは以下の通りです。

 

カテゴリー 内容
ニュージャージー州 土壌 住宅用 0.23 mg/kg、非住宅用 3.9 mg/kg。土壌浸出水(地下水移行水)0.40 μg/L。いずれも暫定基準で、2025年3月に正式な基準化の規則案が提出された。
アイオワ州 土壌・地下水 地下水源別に基準を設定:保護地下水 0.00001 mg/L、非保護地下水 0.00010 mg/L。土壌基準 0.18 mg/kg。
ネバダ州 土壌 報告濃度 0.00001 mg/kg。数値超過時に当局への報告義務がある。
イリノイ州 地下水 0.00001 mg/L(暫定浄化基準)。
ワシントン州 土壌・地下水 地下水浄化推奨レベル 0.01 μg/L(参考値として提示)。
ペンシルべニア州 土壌・地下水 土壌(住宅)0.66 mg/kg、(非住宅)9.6 mg/kg。地下水 0.01 μg/L。

 

EUが定めるREACH規則におけるGenXの規制動向

EUでは、REACH規則(化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則)に基づき、GenXを2019年7月に高懸念物質(SVHC)として認可候補リストに追加しました。

これにより、EU域内でGenXを製造・輸入・使用する事業者は、含有量(0.1 wt%以上)や年間取扱量に応じた情報開示・届出義務を負うこととなりました。製品中にGenXが含まれる場合には、サプライチェーン上での情報伝達や消費者への開示も義務化されています。

一方、飲料水に関しては個別物質ごとの規制ではなく、PFAS全体を包括したグループ規制が採用されています。

改正飲料水指令(Directive (EU) 2020/2184)の附属書III・パートBでは、「全PFASの合計値:500 ng/L」、「特定のPFAS 20物質(C4~C13のペルフルオロカルボン酸およびスルホン酸):合計100 ng/L」の2段階基準が設けられています。

このうち、GenXは20物質の個別リストには含まれていませんが、「全PFAS 500 ng/L」の規制枠に含まれる形で評価対象とされています。

土壌・大気などの環境媒体については、加盟国ごとの裁量に委ねられており、統一的なEU基準は2025年11月時点で存在していません。

 

オランダにおけるGenXの規制動向

EU加盟国のオランダは、国内で独自のGenX規制を進めています。同国のRIVM(国立公衆衛生環境研究所)は、2019年に政府の依頼を受けて「土壌および地下水に対するGenXのリスク限界値」に関する報告書を公表しており、その内容は以下の通りです。

 

用途 土壌リスク限界値
(μg/kg ds)
地下水リスク限界値
(μg/L)
住宅(庭つき) 100 102
子供の遊戯用地 23,000 -
家庭菜園 8 -
生態学的に重要な緑地 54 55
その他の緑地・産業・インフラ用地 960 710
農地 54 55
自然 3 -
地下水(飲料水として直接利用) - 0.66

参考:Tabel A|Risicogrenzen GenX (HFPO-DA) voor grond en grondwater|RIVM Briefrapport 2019-0027 M. Rutgers et al.

ただし、これらの値は、科学的データの不足などを理由に暫定的な値として定められており、将来的に改訂される可能性があるとされています。

さらに、RIVMは2022年9月の報告書で、表層水(地表水)中のPFASリスク限界値も公表しました。この基準は「人が一生を通じて安全に魚を食べられる水環境中のPFAS濃度」を示す指標であり、GenXについては10 ng/Lが暫定的な勧告値として設定されています。

また、オランダではREACH規則のSVHC指定に連動する形で、GenXを高懸念物質「ZZS:Zeer Zorgwekkende Stoffen」として独自に管理しています。

この国内制度では、GenXの大気排出許容値を1 mg/Nm³と定め、排出事業者に対して大気および水環境への排出量の届出、排出防止および最小化対策の実施報告などを義務付けています。

 

オーストラリアにおけるGenXの規制動向

オーストラリアでは、GenXを含む新規PFASの飲料水中の健康影響について、2025年6月にNHMRC(国立保健医療研究審議会)が科学的レビューを公開しています。

NHMRCのレビューでは、利用可能な毒性データや曝露情報を検討したうえで、現時点ではGenXに対して健康ベースのガイドライン値(HBGV:Health-Based Guideline Values)を設定するための科学的根拠が十分ではないと結論づけられています。

そのため、2024年に改訂されたオーストラリアの飲料水ガイドライン「ADWG(Australian Drinking Water Guidelines)」(Version 4.0)においても、GenXの個別の健康ベースガイドライン値は設定することはできないとしています。

NHMRCは今後の評価に必要なデータの不足を指摘しており、引き続き科学的知見を収集・検討していく方針を示しています。

 

 

GenXを取り巻く世界の動向の注視が必要

PFOAの代替物質として使用されてきたGenXを巡っては、近年各国の機関で毒性評価や環境残留性に関する研究が活発化しており、日本国内でも今後の科学的知見や国際条約の改正動向によっては、新たな基準や法的措置が検討される可能性があります。

しかし米国やオーストラリアが飲料水中の濃度について規制を導入しようとしたものの撤回しており、評価が難しい物質でもあるようです。

企業や研究機関においては、GenXを含むPFAS全体の規制強化の流れを注視しつつ、サプライチェーンの管理や代替技術の開発など、長期的な対応策を講じていくことが重要です。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 野島 智也さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ 
研究開発チーム

Specialist 野島 智也

<経歴>

2012年 筑波大学 理工学群 化学類 卒業
2014年 筑波大学 数理物質科学研究科 化学専攻 博士前期課程 修了
2014年にユーロフィン日本環境株式会社入社し、ダイオキシン分析に従事。

2020年からは有機分析チームの分析要員としてPFOS・PFOA分析の立ち上げに従事し、その後、R&Dグループとして国内の分析法、EPA法、ISO法等を立ち上げる。

2023年には独自法による排ガス中のPFAS一斉分析法を立ち上げる。

 

 

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