JavaScript is disabled. Please enable to continue!

Mobile search icon
PFAS MEDIA >> PFAS解説書 >> 水道法

水道法の水質基準とは?2026年のPFAS規制見直しと企業の対応

Sidebar Image

投稿日:2026年3月16日

蛇口から出る水道水

国内では、水道法に基づき水道水の水質基準が定められています。現状ではPFAS(有機フッ素化合物)のうち、特にPFOS及びPFOAが水道水の管理対象として扱われていますが、2026年以降は制度上の位置付けや関連項目の扱いが見直される予定です。

本記事では、水道法の特徴や役割を整理したうえで、水質基準と2026年以降のPFASに関する見直しのポイント、さらに企業の担当者が確認しておきたい対応例について解説します。

 

INDEX

 

 

水道法とは

調査員2名が水辺で調査している様子

水道法とは、清浄で豊富な水の供給を図り、公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与することを目的とする日本の法律です。

具体的には、飲料水の安全を確保するため、供給水が病原性生物や有毒物質を含まないという厳格な水質基準に適合することを義務付けています。

また、取水、浄水、配水などの施設についても、水質基準を達成するために必要な要件を満たすよう、施設に関する基準を定めている点も特徴です。

市町村以外の者が水道水事業を経営する場合には、一定の要件が求められます。あわせて、水道事業者には水質検査や施設の維持管理など、衛生上必要な措置を講じる責務があります。

 

 

水道法とPFASの関係性

水道の蛇口からコップに水を注ぐ様子

 

一部のPFASは、国民への健康リスクの観点から、水道法による規制も進められています。
ここでは、水道法とPFASの関係性について解説します。

 

水道法でPFASが規制される理由

PFASの一種であるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、難分解性、高蓄積性、長距離移動性といった性質を持つ化学物質です。

近年の研究では、PFASのうち一部の物質について、人の健康に影響を及ぼす可能性が示唆されており、特にPFOS・PFOAはこうした性質や知見を踏まえて国内外で規制や管理の対象になっています。

現在も公共用水域や地下水などでPFOSやPFOAが高濃度で検出される事例が報告されており、飲料水でも国が定めた暫定目標値を超過する事例が確認されています。
そのため、水道水の安全性を確保する観点から、一部のPFASに対する規制が強まっています。

PFASによる健康への影響について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

 

関連記事:PFASが人体に及ぼす影響は?健康リスクや国内の汚染事例

悩む女性

 

水道法によるPFAS規制の内容

水道水におけるPFOSおよびPFOAについては、国が定める暫定目標値が示されています。

暫定目標値は、下記の表の通り水道水の管理区分(基準・目標・要検討)に基づく枠組みの中で運用されており、検出状況やリスク評価など最新の知見を踏まえて見直されることがあります。

水道水の管理区分に基づく枠組み

2026年3月時点で設定されている具体的な数値は、以下の通りです。

対象物質 暫定目標値
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
PFOSとPFOAの合算値で50 ng/L

 

暫定目標値は、2020(令和2)年当時の安全性の考え方に基づき、体重50 kgの人が水道水を1日2 L生涯にわたって飲用する条件などで計算したうえで、PFOSとPFOAの合計値として 50 ng/Lとされています。

 

 

2026年以降の水道法によるPFAS規制

水道からコップに水を注ぐ様子

 

環境省は、2026(令和8)年4月1日からPFOS及びPFOAについて、これまで暫定目標値として運用されてきた「PFOS及びPFOAの合算で50 ng/L」を、水道水の水質基準における基準値として位置付ける方針を発表しました。

これにより、水道事業者等にはPFOS及びPFOAに関する水質検査の実施と基準値の遵守が義務付けられる予定です。

対象物質 基準値(2026年4月1日以降)
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
PFOSとPFOAの合算値で50 ng/L

 

基準値への見直しは、内閣府食品安全委員会が示したTDI(耐容一日摂取量)等を踏まえて基準値を算出し直したうえで整理されたものです。なお、結果として基準値は従来の暫定目標値(50 ng/L)と同じ値となっています。

水道事業者等に対しては、新基準に対応した検査として、おおむね3か月に1回以上の水質検査を基本とすることが示されています。

ただし、施行前の検査の実施などによりPFAS汚染の可能性が低いと考えられる場合には、簡易水道と専用水道について、一定の条件のもとで半年に1回または1年に1回へ頻度を減らすことが可能です。

さらに、PFOS・PFOA以外のPFASについては、要検討項目として扱う物質の追加が示されています。今回、既に要検討項目となっているPFHxSは据え置きとし、これに加えて7物質が要検討項目に追加されます。

化学物質 方針案
PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸) 要検討項目に据え置き
その他のPFAS
・PFBS(ペルフルオロブタンスルホン酸)
・PFBA(ペルフルオロブタン酸)
・PFPeA(ペルフルオロペンタン酸)
・PFNA(ペルフルオロノナン酸)
・PFHxA(ペルフルオロヘキサン酸)
・PFHpA(ペルフルオロヘプタン酸)
・HFPO-DA(ヘキサフルオロプロピレンオキシドダイマー酸)
要検討項目に追加

 

 

米国やEUの水道水規制との比較

アメリカ国旗と欧州旗


日本の水道法に相当する制度や法令は、国ごとに定められています。

また、PFASに関する水道水の規制内容も国によって異なるため、海外で事業を行う企業は各国の基準や運用を把握しておくことが重要です。

ここでは代表例として、米国、欧州(EU)、英国の水道水規制を紹介します。

 

NPDWR|米国の水道水規制

米国の水道水規制にあたるNPDWR(国内主要飲料水規制)では、PFASに関して、PFOA・PFOSのMCL(最大汚染レベル)およびMCLG(最大汚染レベル目標値)などが定められています。具体的な数値は、以下の表の通りです。

物質名(化合物名) MCLG MCL
PFOA(ペルフルオロオクタン酸) 0 4.0 ppt(ng/L)
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸) 0 4.0 ppt(ng/L)
PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸) 10 ppt(ng/L) 10 ppt(ng/L)
PFNA(ペルフルオロノナン酸) 10 ppt(ng/L) 10 ppt(ng/L)
HFPO-DA(GenX化合物) 10 ppt(ng/L) 10 ppt(ng/L)
混合物(PFHxS、PFNA、HFPO-DA、PFBSのうち2種類以上を含む場合) ハザードインデックス
1.0(単位なし)
ハザードインデックス
1.0(単位なし)

また、PFHxS、PFNA、HFPO-DA、PFBSのうち2種類以上を含む混合物には、ハザードインデックス(Hazard Index)を用いた基準が適用されます。

さらにEPAは、トランプ政権下の2025年5月14日、PFOAおよびPFOSのMCLを維持する方針を示す一方で、PFHxS、PFNA、HFPO-DAおよび混合物(ハザードインデックス)については、撤回と再検討を行う意向を公表しています。

このPFHxS等の基準については、バイデン政権下の2024年4月にEPAがPFHxS等を含む飲料水基準を最終化したものの、現トランプ政権への交代により一部項目の扱いを見直す方針が示された背景があります。

 

関連記事:NPDWR(米国の一次飲料水規制)とは?飲料水規制とPFASの関係

水道の蛇口からコップに水を注ぐ様子

 

DWD|EUの水道水規制

EUの水道水規制であるDWD(改訂飲用水指令)では、「20種類のPFASの合計値」と「全てのPFASの総計」という2つの基準値が導入されています。

加盟国は2026年1月12日までに、これらの基準値を満たすために必要な措置を講じる必要があります。詳しい数値については以下の通りです。

指標 基準値
20種類のPFASの合計値 100 ng/L
全てのPFASの総計 500 ng/L

 

また、EFSA(欧州食品安全機関)は2020年に、4種類のPFAS(PFOS・PFOA・PFNA・PFHxS)の合算について、TWI(耐容週間摂取量)として体重1kgあたり週に4.4 ngを設定しています。

なお、TWIは主に食事などを通じた摂取の評価に用いられる指標であり、水道水の基準値とは目的や算定方法が異なる点に注意が必要です。

EUのPFAS規制について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

 

【関連記事】【2025年施行】EUで進むPFAS規制強化|組織・規則の動向まとめ

規制

 

DWI|英国の水道水規制

英国(イングランドおよびウェールズ)の飲料水規制に関しては、DWI(飲料水検査局)が2025年3月にPFASに関するガイダンスの改訂版を公表し、48種類のPFASの合算値で0.1 µg/L(100 ng/L)のガイドライン値を採用しています。

DWIのガイダンスでは、濃度に応じてティア1(10 ng/L未満)からティア3(100 ng/L以上)の3段階に分類し、監視頻度や対策の考え方を示しています。

PFAS濃度における各段階の対応は、以下の通りです。

段階 対応
ティア1(10 ng/L未満) 低リスク。ベースラインを確認するための定期的なモニタリングとリスク評価を行います。
ティア2(10〜100 ng/L未満) リスク管理の強化。モニタリング頻度を上げ、濃度を段階的に低減するための戦略的な対策を講じます。
ティア3(100 ng/L以上) 高リスク。直ちにDWIへ通知し、代替水源の確保や高度処理の導入など、濃度を0.1 μg/L未満に下げるための是正措置を講じる義務があります。

 

 

水道法によるPFAS規制への対応例

ペットボトルの水

水道水のPFOS及びPFOAについては、2026年4月1日から合算で50 ng/L以下の基準値が適用されます。

この基準値への移行に伴い、飲料用水の提供や水を扱う事業者を中心に、状況に応じた対応が求められる可能性があります。

ここでは、水道法によるPFAS規制に対する企業の対応例を紹介します。

 

ミネラルウォーター製造・販売の場合

ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行うものは、水道水の代替として摂取されている実態があることから、食品衛生法に基づく成分規格としてPFOS及びPFOAが設定されています。基準値は、PFOS及びPFOAの合算値で0.00005 mg/L(50 ng/L)です。

この基準値は、水道水質基準等の設定の考え方に準じて、対象物質の1日当たりのばく露量がTDI(耐容一日摂取量)を超えないよう、以下の条件で算出したものです。

 

  • 人が1日に飲用する水の量:2 L
  • 人の平均体重:50 kg
  • 水経由のばく露割合としてTDIの10%

 

ミネラルウォーター類の製造・販売に関わる企業は、製品中のPFOS及びPFOAの合算値が50 ng/Lを超えないよう、原水や製品の管理状況を確認しておくことが必要です。

 

【関連記事】ミネラルウォーターにPFASが含まれる可能性は?製品選びの注意点

水を飲む女性

 

商品に水道水を使う場合

ミネラルウォーター類以外の清涼飲料水については、食品衛生法に基づく規格基準(製造基準)において、「水道水又はミネラルウォーター類の規格に適合する水を原料として用いなければならない」旨が規定されています。

そのため、ミネラルウォーター類以外の清涼飲料水を製造する場合でも、原料として用いる水が水道水、またはミネラルウォーター類の規格に適合していることが求められます。

一方、食品の洗浄や冷却などに使う食品製造用水は、水道水の代替として摂取されているものではないことから、現時点ではPFOS及びPFOAの規格基準は設定されていません。

ただし、水道水以外の食品製造用水(規格基準の所定項目に適合する水)を使用する場合は、事業者が自主的に濃度を管理し、PFOSとPFOAの合算値として0.00005 mg/L(50 ng/L)を参考に、可能な範囲で低減措置などの対応を検討することが望ましいとされています。

 

 

水道法によるPFAS規制への対応が求められる

水道法では、2026年4月1日以降、PFOS及びPFOAの合算値で50 ng/L以下が基準値となり、PFHxSに加えて7物質が要検討項目として追加され、合計8物質が要検討項目として扱われる予定です。
水道水を使用する事業を行う企業は、PFOSとPFOAに加え、要検討項目に該当するPFASについても必要に応じて水道水中の濃度を把握しておくことが推奨されます。

また、飲用に供する製品の製造で井戸水や湧水などの用水を使用している企業は、水道水と比べて管理条件が異なるため、将来のリスクヘッジとしてPFOS・PFOAに加え、要検討項目も含めた自主的な調査を検討するとよいでしょう。
要検討項目は現時点で基準値が設定されておらず、罰則等の対象ではありませんが、検出によって風評被害につながる可能性もあります。

なお、飲用に供する製品の製造業者以外でも製造工程で上記のPFASを含む可能性のある排水が発生する企業は注意が必要です。公共用水においても要調査項目として環境省や自治体によるモニタリングが開始されたため、河川や地下水でPFASが検出された場合、発生源の追跡調査が行われる可能性があります。公共用水域へ排水している企業は検査を実施し、現状を把握することが重要です。

水道法の改定による影響が気になる場合は、専門の調査・分析機関でPFASの分析を行うことも検討しましょう。

 

 

ユーロフィンのPFAS分析については

こちらからお問い合わせください

お問い合わせ

 

 

記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 関 友博さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ 
研究開発チーム

Specialist 関 友博

<経歴>

1986年 岩手大学農学部農芸化学科卒業
大学卒業後、青年海外協力隊としてケニアに赴任し、大学で食品分析を教える。

1990年 株式会社カナポリ入社(後の日本環境株式会社)
環境中有害物質の分析業務や研究所の立上げ・設計、MLAP認定・ISO17025試験所認定の取得などに従事。

2011年からは東日本大震災に伴う放射線・放射能の調査・測定・分析体制の立上げ、2012年には遺棄化学兵器処理に関わる環境管理のコンサルティング業務を統括。

ユーロフィングループの傘下に入ってからは、ユーロフィンジャパン全体の環境・食品部門の品質管理を行い、現在はPFAS分析の立上げや国内分析法・EPA Method・ISO法等の導入を指導。

 

 

関連記事

飲料水

日本の水道水の安全性は?国内のPFAS汚染状況と暫定基準値を確認しよう

PFASの主な特徴や、日本の水道水におけるPFAS汚染の状況・規制動向などを解説。正しい知識でPFAS関連のニュースを確認しましょう。

飲料水PFAS資料

飲料水におけるPFAS規制の動向 世界各国の目標値と日本の現状(DL資料)

こちらの資料は、飲料⽔におけるPFAS(有機フッ素化合物)規制の最新情報について解説します。この資料を確認することで、飲料⽔中のPFASを規制を進めている国や、各国の最新基準値、現在までのPFAS規制の動向が分かります。

 

 

PFAS MEDIA TOPに戻る→


【参考資料】