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水質汚濁防止法とは?規制内容や指定物質に基づくPFAS対策について

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投稿日:2025年7月4日

2本のパイプから水が小川に排出されている様子

水質汚濁防止法は、日本におけるPFAS(有機フッ素化合物)の規制を知るうえで押さえておきたい法律の一つです。

国内では、2010年より化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)で一部のPFASの規制が始まりましたが、2023年には水質汚濁防止法による規制も加わっています。

本記事では、水質汚濁防止法の目的や規制内容を解説し、PFASを取り扱う可能性がある企業がとるべき対策を具体的に紹介します。

 

INDEX

 

 

水質汚濁防止法とは

水質汚濁防止法とは、公共用水域(河川や湖沼、海域など)への排水を規制する法律です。公共用水域の水質汚濁を防止し、国民の健康や生活環境を守ることを目的としており、工場からの排水基準などが定められています。

水質汚濁防止法には、規制対象となる施設や有害物質などを細かく規定する関連法規もあるため、本法と併せて把握しておきましょう。

ここでは、特に重要な項目について解説します。

 

有害物質と指定物質

水質汚濁防止法では、有害物質や指定物質などを定め、排出水に関する規制を行っています。有害物質と指定物質は、本法において次のように定義されており、該当物質が排出水に含まれていれば対策が必要です。

 

有害物質 カドミウムその他の人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質
指定物質 有害物質や油以外の物質で、公共用水域に多量に排出されることにより、人の健康若しくは生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質

 

現在、28種類の有害物質と60種類の指定物質が定められており、PFASではPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)が指定物質に該当しています(2025年6月時点)。

 

特定施設と指定施設

水質汚濁防止法による規制は、対象とする施設を設置する事業者に対して行われており、その代表例が特定施設と指定施設です。施設の概要は次の通りで、特定施設については、業種などで約100種類の施設が指定されています。

 

特定施設 以下のいずれかの要件を備える汚水又は廃液を排出する施設
  • 有害物質を含む
  • 「化学的酸素要求量その他の水の汚染状態を示す項目」として定められる項目(水素イオン濃度など12項目)に関し、生活環境に係る被害を生ずるおそれがある程度のもの
指定施設 以下のいずれかに該当する施設
  • 有害物質を貯蔵又は使用する施設
  • 指定物質を製造、貯蔵、使用、処理する施設

 

また、特定施設は施設設置時の届出提出や、排水基準の遵守などが求められており、指定施設よりも多くの対応が必要です。

 

水質汚濁防止法施行令と施行規則

水質汚濁防止法には、本法を施行するための施行令や施行規則があります。以下に規定内容の概要を表にまとめています。

 

水質汚濁防止法施行令 本法で定めた内容に対する詳細規定
  • 特定施設の一覧
  • 有害物質の一覧
  • 水素イオン濃度等の項目の一覧
  • 指定物質の一覧
  • 油の一覧 など
水質汚濁防止法施行規則 本法や施行令で定めた内容に対する詳細規定
  • 科学技術に関する研究等を行う事業場の一覧
  • 総量規制基準の算式
  • 特定施設等の設置の届出について
  • 届出の様式
  • 施設本体の床面及び周囲の構造等について
  • 点検事項や回数、点検結果の記録及び保存について など

 

施行令は「本法で定めた項目についての詳細」を規定しており、施行規則は「本法に加えて施行令も補う詳細」を規定しています。この2つは、企業(事業者)が講じる対策に必要な情報を多く含んでいるため、併せて確認しておくことが大切です。

 

水質汚濁防止法に基づく排水基準

排水基準は「有害物質」と「化学的酸素要求量その他の水の汚染状態を示す項目」に対し、排水中の許容限度を定めたものです。そのため、特定施設などを設置する事業者は、定められた方法で汚染状態の測定をしなくてはなりません。

また、水質汚濁防止法では都道府県に対し、自然や社会的条件に併せて上乗せの排水基準を条例で定めることを認めています。条例による排水基準はさらに厳しく、国が定めた基準の代わりとして適用されるため、内容には注意が必要です。

 

 

水質汚濁に係る環境基準とPFASの関係性

PFASと記載されている缶が森の中の小川に設置されている様子

水環境に関する法令では「水質汚濁に係る環境基準」もあります。水質汚濁に係る環境基準は、環境基本法に基づいた「人の健康や生活環境を守るうえで維持することが望ましい基準」です。

この基準では、公共用水域における基準値を「人の健康保護に係る項目」と「生活環境の保全に係る項目」に分けて設定しています。環境基準はあくまで目標としての扱いですが、水質汚濁防止法における有害物質は、ここで設定された物質から指定されました。

撥水・撥油性などの特性から多くの製品に活用されてきたPFASについては、人や環境に対する懸念が高まったことで、国内外で規制が強まっています。日本では、以下の一部のPFASを化審法で第一種特定化学物質に指定し、製造や輸入を原則禁止としています。

 

  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)

 

水質汚濁に係る環境基準においては、PFOSとPFOAを要監視項目に位置付け「PFOSとPFOAの合計値として50 ng/L」の指針値を設定しています。PFHxSについては、水環境リスクが比較的大きくない又は不明であることから、要調査項目に設定されました。

また、2025年4月25日に環境省から発表された「令和5年度公共用水域水質測定結果及び地下水質測定結果」によると、PFOSとPFOAについて「39都道府県における2,078の測定地点で指針値を超過した地点は、22都府県で242地点あった」と報告されています。

製造や使用などが禁止されていても、公共用水域へのPFASの排出リスクは依然として残っています。

PFASについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向まで

PFASとは

 

 

2023年の改正でPFOSとPFOAが指定物質に

PFOSとPFOAは、2023年2月1日に施行された水質汚濁防止法施行令の一部改正で指定物質に追加されました。

水質汚濁防止法における指定物質は「公共用水域に多く排出されることで人の健康や生活環境に影響を及ぼす恐れがある」と定義されています。

この2つは、水質汚濁に係る環境基準において2020年5月に要監視項目となりましたが、国内外の状況を受けて指定物質にも追加されました。

要監視項目は知見収集などに重きが置かれており、常時監視や基準達成の法的義務はありません。一方、指定物質に追加されると、事故時の対策が事業者に義務付けられるため、万が一の流出時に迅速な対応が期待できます。

 

 

企業がとるべきPFAS対策とは

コンプライアンスのチェックリスト

PFOS・PFOA等の化学物質を取り扱う企業が水質汚濁防止法において必要となる対策は、事故時の措置です。

PFOS・PFOAが該当する指定物質は、事故が発生し、公共用水域や地下に排出されたことで人の健康や生活環境に被害を生ずるおそれがあるときは、事故時の措置をとることが求められます。

事故とは施設や使用設備の破損などが考えられ、事故時の措置として求められる内容は次の2つです。

 

  • 応急措置を講じる
  • 事故の状況等を都道府県へ届け出る

 

応急の措置を講じる

事故時の応急措置は、主に流出と拡散の防止(停止)対策です。自治体によっては、事故時の対策を公開している場合があり、その中から事前対策や応急措置として考えられる具体例を以下にまとめました。

 

事前対策
  • 流出防止設備の設置:(例)防液堤・囲い・傾斜床・ため桝・油水分離施設 など
  • 流出拡散を防止するための資機材を常備:(例)オイルマット・油ろ過吸着袋・スコップ・土嚢・ゴミ袋・ウエス・回収容器(タンク等)・水中ポンプ など
流出の防止策
  • 配管の流出箇所の前後のバルブの遮断
  • 流出箇所へ送水(送油)するポンプの停止
  • タンク等に残っている汚水等を緊急槽に移送
拡散の防止策
  • 事業場内の排水路(雨水専用排水路も含む)や放流口の閉鎖
  • オイルマット、吸着剤、土嚢等を汚水等の流下先に設置

引用:水質事故時の対応|愛知県

 

応急措置を講じるためには、事故時の対応についてマニュアルを作成する、事故を想定した訓練を実施するなど、不測の事態を想定した対策も大切です。

 

都道府県への届出

都道府県に届け出る内容として求められているものは、事故の状況と講じた措置の概要とされており、具体例は以下の通りです。

 

届出内容の具体例
発生日時・発生場所・発生原因・流出物質・流出経路・講じた措置の開始及び完了日時・講じた措置の内容・再発防止措置の内容など

 

届出の項目や様式は定められておらず、都道府県によって異なるため、事前に自治体のホームページなどで確認しておくことが大切です。

 

罰則について

水質汚濁防止法では、工場などから排出される汚水や廃液が原因で、人の健康に被害が出た場合における罰則(事業者の損害賠償責任)についても定めています。

指定物質に関する罰則は「応急措置に関する命令に違反した場合に、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処す」というものです。

都道府県知事は、応急措置を講じていない事業者に対して、措置実施の命令を出すことができ、その命令に違反した場合は罰則が科せられます。

 

泡消火薬剤の使用排出は届出の対象外

PFOSやPFOAを含む泡消火薬剤の場合、事故だけでなく、消火活動などの使用に伴う排出も考えられます。事故による流出の場合は、他の指定物質と同様に応急措置や届出が必要ですが、使用に伴う排出は対象外とされており、その必要がありません。

ただし、法的義務はないとしたうえで、環境中への流出状況を把握するために、使用による排出時にも自治体への情報提供が呼びかけられています。

また、消防庁では泡消火薬剤の流出時に関するリーフレットを公開しており、自治体などのホームページから閲覧が可能です。

PFASを含む泡消火薬剤について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

【関連記事】PFOSを含有する泡消火器とは?規制動向と背景について解説

消化、アクシデント

 

 

水質汚濁防止法を理解して適切な対策を

水質汚濁防止法は、有害物質や指定物質などを定め、公共用水域への排出を規制する法律です。PFASでは、PFOSとPFOAが指定物質に該当しており、事故時の措置が義務付けられているため、万が一の状況に備えて対策を整えておきましょう。

また、上乗せ排水基準の有無や届出様式など、水質汚濁防止法に伴うルールは都道府県によって異なります。適切な対策をとるためには、事前に各都道府県の情報を確認することも重要です。

 

 

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記事の監修者

品質保証グループ

ユーロフィン日本環境株式会社 品質保証グループ

第三者分析機関としての信頼性や適合性を担保するために、品質システムの整備や監視活動に従事。特に、当社では分析実施項目の大部分でISO/IEC 17025の認定を取得し、PFASについてもISO/IEC 17025認定を取得しており、それら認定の維持管理を主要業務としている。また、国内外のグループ会社と連携した相互監査や技能試験評価、品質会議など、世界中に展開しているEurofinsグループの強みを活かした取り組みも実施。

 

 

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