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バーゼル条約とは?規制内容や最新の動向、PFASとの関連性について

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投稿日:2024年8月8日(2025年9月10日更新)

オフィスの会議机に世界地図が表示

バーゼル条約は、PFAS規制に関わるPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)と同様に、有害な化学物質に関する規制を行っています。

そのため、PFAS(有機フッ素化合物)をはじめとした化学物質の取り扱いがある企業は関係する場合もある条約です。

この記事では、バーゼル条約における規制内容やPFASとの関連性について解説します。

 

INDEX

 

 

バーゼル条約とは

世界地図と飛行機、船着き場と船

バーゼル条約は、有害な廃棄物の輸出入を規制する国際条約です。

正式名称は「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」であり、1989年にスイスのバーゼルで採択され、1992年に発効されました。

ここでは、バーゼル条約の概要や規制内容について解説します。

 

バーゼル条約の概要

バーゼル条約の策定は、1980年代に開発途上国で発生した廃棄物による環境汚染問題に起因します。この問題は、OECD(経済協力開発機構)とUNEP(国連環境計画)によって検討され、廃棄物の国境を越えた移動に関する国際的な枠組みとして作成されたのがバーゼル条約です。

バーゼル条約は、廃棄物による危険から人や環境を守ることを目的としており、189ヵ国・1機関・1地域が加盟しています(2024年12月時点)。日本は1993年に加盟し、バーゼル条約に伴う国内規制を開始しました。

 

バーゼル条約の規制内容

バーゼル条約では、廃棄物に対し「可能な限り国内で処分し、越境を最小限に抑える」ことを求めています。そのうえで、廃棄物を輸出入する場合の様々な規定が定められています。

主な内容は次の通りです。

 

バーゼル条約の主な規制内容
  • 有害廃棄物などを輸出する際の輸入国へ対する事前通告及び同意取得の義務
  • 非締約国との有害廃棄物の輸出入を原則禁止
  • 不法取引が行われた際の輸出者による再輸入(国内引き取り)義務
  • 廃棄物が国境を越える際の移動書類携帯(添付)義務

 

規制に関する具体的な項目は附属書で規定しており、「附属書I:規制対象廃棄物の分類(ヒ素や鉛等の排出経路および有害物質)」、「附属書III:廃棄物の有害特性の分類(爆発性や毒性等)」、「附属書VIII:有害な廃棄物のリスト」、「附属書IX:非有害な廃棄物のリスト」などがあります。

また、バーゼル条約の規制の中で特例に位置づけられているのが、「OECD理事会決定」です。OECD理事会決定は、バーゼル条約を簡素化した内容で、条約で規制対象になっている物品の一部について、回収(リサイクル)目的で行われる場合に限り、事前通告・事前同意などの適用が除外される規制です。

 

 

バーゼル法と廃棄物処理法

船に積まれた廃棄物

バーゼル条約による規制を担保するために、日本国内で運用する法律がバーゼル法と廃棄物処理法です。バーゼル法では特定有害廃棄物などの輸出入を、廃棄物処理法では廃棄物の輸出入を規制しています。

 

バーゼル法とは

バーゼル法(特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律)は、有害廃棄物などの移動や処分に関する規制措置によって、人の健康や生活環境を保護することを目的とした法律です。

バーゼル条約に基づいており、有害廃棄物の輸出入に関する承認や移動書類、運搬、処分などが定められています。

 

 

バーゼル条約とPFASの関連性

PFASと記載された紙

バーゼル条約では、PFASに対する直接的な規制は行っていません。ただし、POPs廃棄物の規制は行っているため、PFAS含有廃棄物を扱う企業は注意が必要です。

ここでは、バーゼル条約におけるPOPs廃棄物の規制について解説します。 

 

POPsとは

POPs(Persistent Organic Pollutants)とは、難分解性・生物蓄積性・長距離移動性の性質をもつ残留性有機汚染物質のことです。POPsを規制するためにつくられたのがPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)で、日本は2002年に加盟しました。

POPs条約では、POPsに対する製造・使用の廃絶や制限、排出の削減などを規定しており、規制対象は条約の附属書で定められています。

PFASでは次の3つが規制対象となっており、POPs条約を受けて国内でも化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)で第一種特定化学物質に指定され、製造や使用が原則禁止となりました。

 

  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸):附属書B(制限)
  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸):附属書A(廃絶)
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸):附属書A(廃絶)

 

さらに、2025年に開催されたPOPs条約第12回締約国会議(COP12)では、長鎖PFCA(ペルフルオロカルボン酸)の附属書A(廃絶)追加が決定しました。

これを受けて、日本でも環境省・厚生労働省・経済産業省の3省が、長鎖PFCAを化審法の第一種特定化学物質に指定する政令改正案を公表しており、今後は国内の法律の整備状況や対象範囲の動向に注意が必要です。

POPsについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

【関連記事】POPs(残留性有機汚染物質)とは?対象物質や規制内容について解説

工場の煙

 

バーゼル条約におけるPOPs廃棄物

POPs廃棄物は、有害な廃棄物としてバーゼル条約の附属書I及びVIIIに記載されています。

バーゼル条約では「POPs廃棄物の不適切な処理・処分は、環境中へPOPsを放出させる恐れがある」としており、様々な議論が重ねられてきました。

POPs廃棄物を適正に処理・処分するために、バーゼル条約が策定したのが技術ガイドラインです。POPs廃棄物の技術ガイドラインは、POPs条約による規制に連動して適宜更新されており、締約国内の運用に活用されています。

 

PFAS含有廃棄物のガイドライン

POPs廃棄物の技術ガイドラインには、総合的な内容を記載した一般技術ガイドラインと、特定の廃棄物に関する内容を記載した個別技術ガイドラインの2種類があります。

この内の個別技術ガイドラインに、PFAS含有廃棄物に関する技術ガイドラインが含まれています。

PFAS含有廃棄物の技術ガイドラインは、PFOS・PFOA・PFHxSを対象としており、2023年のCOP16で策定されました。

国内では「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」が環境省より公表されていますが、管理目標値や分解効率は、COP13で策定されたPOPsに汚染された廃棄物に関する一般的なガイドラインを参照しているものとなります。将来的にCOP16で策定されたガイドラインを元に改訂される可能性があるため、今後も注目です。

国内におけるPFAS含有廃棄物についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

【関連記事】PFOSを含む廃棄物はどう処理すべき?処理方法と注意点について解説

廃棄物

 

 

バーゼル条約に関する最新動向

ここでは、2025年7月現在までの情報を元に、国内外のバーゼル条約に関する大きな動向をピックアップします。

 

COP15にて決定された条約改正が2025年1月1日発効

2022年開催のバーゼル条約第15回締約国会議(COP15)で決定した「e-waste(電気・電子機器廃棄物)に関する改正附属書」が、2025年1月1日に発効しました。附属書の改正に伴い、国内ではバーゼル法に関して、次の対応が行われています。

 

  • 「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律に基づく特定有害廃棄物等の範囲等を定める省令(範囲省令)」の一部改正(同日施行)
  • 「電気及び電子機器廃棄物の輸出入に係るバーゼル法該非判断基準」の公表

 

COP16におけるPFAS廃棄物に関する決定内容

2023年に開催されたバーゼル条約第16回締約国会議(COP16)では、POPs条約で規制対象となった一部のPFAS(POP-PFASs)を含む廃棄物について、処理・輸出入に関する明確な指針が盛り込まれた技術ガイドラインが決定されました。

これによりPOP-PFASs廃棄物に対する各国の対応方針がより具体化されました。

特に重要な内容は以下の通りです。

 

許容可能な分析・サンプリング方法の指定
POP-PFASsを含有する廃棄物の特定において、信頼性の高い分析・検出手法の適用が明記され、一定の測定基準が国際的に共有されました。

有害廃棄物の定義と分類条件の明確化
POP-PFASsが一定基準を超えて含まれる廃棄物については、「有害廃棄物」として分類される条件と閾値が明確になりました。

 

今後、日本でもこれらの内容が反映された、POP-PFASsを含む廃棄物の管理を厳格化する新たなガイドライン等が策定される可能性があります。

 

バーゼル条約第17回締約国会議(COP17)が開催

2025年4月28日から5月9日にかけて、バーゼル条約第17回締約国会議(COP17)がスイスで開催されました。この締約国会議は、POPs条約とロッテルダム条約の締約国会議と合同で行われました。議論の主な内容については、以下の通りです。

 

COP17における主な議論内容
  • 輸出相手国への事前通告・輸入国における同意回答手続の改善
  • 条約附属書IVの改正
  • PFAS以外のPOPsを含む廃棄物に関する技術ガイドラインの更新または策定

参考:バーゼル条約第17回締約国会議の結果の概要 令和7年5月13日(火)|経済産業省

 

会議の結果、手続きの改善については引き続き議論するとしており、附属書の改正は2030年1月1日に発効するとしています。技術ガイドラインについては、PFAS以外の物質で難燃剤、農薬、紫外線吸収剤に分類される特定のPOPsについて、それぞれの廃棄物の適正処理に関するものが更新、策定されました。

 

廃棄物の輸出入は適切に行う必要がある

バーゼル条約は、有害な廃棄物などの輸出入を規制する条約です。

規制対象物質には、PFASに代表されるPOPs廃棄物も含まれているため、PFAS含有廃棄物の輸出入に関わる可能性がある場合は、特に注意する必要があります。

国内では廃棄物の輸出入をバーゼル法と廃棄物処理法において規制しているため、それぞれの規制内容をよく理解して、適切な輸出入を行いましょう。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 野島 智也さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ 
研究開発チーム

Specialist 野島 智也

<経歴>

2012年 筑波大学 理工学群 化学類 卒業
2014年 筑波大学 数理物質科学研究科 化学専攻 博士前期課程 修了
2014年にユーロフィン日本環境株式会社入社し、ダイオキシン分析に従事。

2020年からは有機分析チームの分析要員としてPFOS・PFOA分析の立ち上げに従事し、その後、R&Dグループとして国内の分析法、EPA法、ISO法等を立ち上げる。

2023年には独自法による排ガス中のPFAS一斉分析法を立ち上げる。

 

 

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