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PFOSの代替品の開発状況は?規制の歴史と最新の動向を解説

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投稿日:2024年6月26日

製造ライン 

2009年にPOPs条約の附属書Bに追記され、製造と使用が制限されたPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)。その影響を受け、国内でも例外的な用途を除いて同様の規制が定められました。

それ以降、化学メーカーを中心に代替品の開発が進められています。また、PFOSを含めたPFAS(有機フッ素化合物)の規制も範囲が拡大しつつあります。

現在、PFOSの代替品と社会情勢はどのような状況にあるのでしょうか。本記事では規制の歴史や使用用途ごとの代替品の開発状況について解説します。

 

INDEX

 

 

PFOSの代替品とは

PFOSは優れた性質を持っているため、半導体の製造や電子機器の製造工程で使用されてきました。

2009年に規制された際には、下記3つの用途は代替品の開発が困難として例外的な使用が認められていました。

 

  • エッチング剤(圧電フィルタ又は無線機器が3 MHz以上の周波数の電波を送受信することを可能とする化合物半導体の製造に使用するものに限る)の製造
  • 半導体用のレジストの製造
  • 業務用写真フィルムの製造

 

しかし、これらの例外も2017年には廃止。現在では全ての用途での使用が禁止されています。

現在は各業界で代替品の開発が進められており、代替品にはPFOSとは別のPFAS(有機フッ素化合物)が用いられるケースが多くなっています。

ただし、それらの代替品も規制対象として議論が起こっており、今後の動向に留意する必要があります。

 

泡消火薬剤のPFOS代替品

PFOSを含有する業務用の泡消火器は、2010年に各メーカーが製造を終了。それ以降、PFOSの代替品が使用された製品の販売が開始されました。

その代表例が有機フッ素化合物の一種であるPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)です。また、一部ではフッ素を使用しない泡消火薬剤の開発も進められています。

 

金属メッキのPFOS代替品

物性を向上させるために使用される金属メッキでも、PFOSは使用されてきました。ニッケルメッキやクロムメッキのメッキ液に含まれる添加剤がその代表例です。2009年の製造禁止を受けて新技術が開発され、装飾メッキでPFOSは使用されなくなりました。

硬質メッキでは、使用量が3倍以上増えるものの、フルオロテロマースルホン酸塩が代替品として使用されています。さらに、非フッ素の代替材の開発も進んでいます。

 

紙パッケージのPFOS代替品

PFOSは、耐久性・溌油性・撥水性を上げる特性を持つため、食品の包み紙などのパッケージにも使用されていました。

現在は有機フッ素化合物であるフルオロテロマーベースのリン酸エステル、フルオロテロマーアルコールが代替品として使用されています。

また、世界では脱PFASに向けて、新しい代替材の開発が活発化しています。

 

 

PFOSの代替品としてPFHxSも使用されてきた

化学薬品

PFOSの代替品の一つとして、有機フッ素化合物であるPFHxSが使用されていました。その範囲はPFOS同様に広大です。

 

  • 泡消火薬剤
  • 金属メッキ
  • 織物・革製品及び室内装飾品
  • 研磨剤及び洗浄剤
  • コーティング
  • 含浸/補強材(湿気、真菌などからの保護用)
  • 電子機器及び半導体の製造

 

上記のように産業の川上から川下に至ります。

しかし、2022年にPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)の附属書Aに掲載されたことで原則的な使用と製造が禁止され、廃絶の対象物質になりました。

それを受けて、日本国内でも2023年の化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)にて同様の内容を規定。2024年の2月から原則的な使用と製造が禁止され、6月からは輸入が禁止となりました。

PFHxSはPFOSの代替材として世界中で使用されてきたため、その対応に向けて各国ともに対策を進めています。

 

PFHxSが規制対象になった理由

PFHxSが規制対象になった理由は、PFOSの規制と同様に人の健康への影響が大きいと考えられるためです。

PFHxSは大気や水中において分解されにくいという特性を持ちます。人体への影響については研究結果が十分ではないため、結論は出ていません。しかし、環境省は条約の動向を鑑みつつPFOSおよびPFOAと類似した性質を持つことを踏まえ、PFHxSを要調査項目に位置付け、知見の集積を進めています。今後の研究の動向に注意が必要です。

 

日本社会の動向

日本では以下のスケジュールで段階的に規制が進められています。

2023年11月 化審法にて「PFHxS若しくはその異性体又はこれらの塩」が第一種特定化学物質へ指定する施行令の改正が閣議決定。2024年の2月と6月に段階的に施行。
2024年2月 PFHxSの原則的な使用・製造が禁止。
2024年6月 PFHxSを使用している指定製品の輸入が禁止。PFHxS含有の消火器・消火薬剤の使用方法の法令化。

 

 

脱PFASを目指したPFOS代替品の開発

顕微鏡と研究

PFOS、PFOA、そしてPFHxSと、一部のPFASの規制は拡大してきました。もし代替物質を開発したとしても、それがPFASであれば再び規制される可能性もあり、環境への影響も考えられます。

そのため、各メーカーでは脱PFASを掲げた代替品、“PFASフリー”の素材や製品の開発を進めています。

 

各素材メーカーがPFASフリーの新しい技術を開発

各素材メーカーは近年、フッ素を使用しない新しい材料や製品を開発しています。持続可能な社会に向け、今後も代替となる技術の開発が期待されます。

 

 

PFOS代替品は“別のPFAS”から“PFASフリー”へ

PFOSの規制が始まり、10年以上が経過しました。これまでの代替品はPFOSと同じPFASの一種が使用される場合が多かったものの、環境への影響の大きさが判明するにつれてPFASの規制範囲が拡大。今後も同様の傾向が見られると予想されます。

そのため、各企業は脱PFASの代替品の開発に力を入れてきました。現在、続々と成果が現れ始めています。今後は脱PFASを実現した代替品の実用化が進むでしょう。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 野島 智也さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ 
研究開発チーム

Specialist 野島 智也

<経歴>

2012年 筑波大学 理工学群 化学類 卒業
2014年 筑波大学 数理物質科学研究科 化学専攻 博士前期課程 修了
2014年にユーロフィン日本環境株式会社入社し、ダイオキシン分析に従事。

2020年からは有機分析チームの分析要員としてPFOS・PFOA分析の立ち上げに従事し、その後、R&Dグループとして国内の分析法、EPA法、ISO法等を立ち上げる。

2023年には独自法による排ガス中のPFAS一斉分析法を立ち上げる。

 

 

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