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PFAS(有機フッ素化合物)対策に有効とされる浄水器の選び方とは?

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投稿日:2024年7月24日(2025年4月16日更新)

PFAS 水

PFAS(有機フッ素化合物)をできるだけ体内に取り込まない対策として、浄水器を使用するのが有効な選択肢の一つです。しかし、浄水器は販売メーカーによって様々な種類があるため、どの製品を選べば良いのかわからない方もいるでしょう。

浄水器を選ぶ際には、目的に応じて適切なろ材(ろ過材)を選択することが重要です。この記事では、現時点でPFASの対策に有効とされている浄水器の選び方について詳しく解説します。

 

INDEX

 

 

PFAS(有機フッ素化合物)とは

PFAS 分析

PFAS(ピーファス)とは、有機フッ素化合物のうちペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物を総称した化学物質群を指します。

PFASには、約1万種類以上の物質が含まれており、炭素鎖の長さや構造によって物性が異なる性質を持ちます。

撥水性・撥油性や、熱・化学的安定性等の物性を持っている物質もあり、それらは撥水剤や泡消火薬剤、半導体用反射防止剤など、様々な用途で使用されてきました。

PFASについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向まで

PFAS

 

 

水道水にPFAS(有機フッ素化合物)が含まれる理由

PFASは下記のような特性を持つことから、「永遠の化学物質(フォーエバー・ケミカル)」と呼ばれています。

 

  • 難分解性
  • 高蓄積性
  • 長距離移動性

 

PFASが水道水に含まれるまでの主なルートは

 

一度環境中に放出されたPFASは分解されないまま蓄積され、風や雨によって長距離を移動します。地球上では水や大気が絶えず循環しているため、PFASが環境に及ぼす影響は大きく、循環の過程で水道水汚染に繋がる可能性があります。

また、実際に水道水がPFAS汚染された事例では、汚染源の多くが水源であったことが報告されています。水源となるのは、海や河川、ダム湖、地下水などであり、そこから浄水場を通って水道水が供給されます。

 

水道水のPFAS汚染ルート例
PFAS汚染源 PFASの移動ルート
製品・廃棄物
  • 土壌→地下水→浄水場
  • 河川→浄水場
工場排水
  • 河川→浄水場
排気ガス
  • 大気→雲→雨・雪→地表(雨・河川・湖など)→浄水場

 

 

日本の水道水の安全性は?

日本の水道水には51項目もの水質基準項目と基準値が定められており、その基準を適合させている国内の浄水場の精度は高く評価されています。国土交通省も「日本は水道の水質が良く、水道水をそのまま飲める数少ない国の一つである」との見解を示しており、世界的に見ても高い安全水準を誇っています。

ただし、PFASは化学的安定性が高い化学物質であるため、凝集沈殿ろ過やオゾン処理、消毒処理のような浄水プロセスは、PFAS除去に効果的ではないと推測されています。

PFASの中でも分子が小さいものは除去しにくいため、浄水場で除去しきれなかったPFASが水道水に含まれる可能性は否定できません。

厚生労働省は水道事業者等に対して、水道水に含まれるPFASの暫定目標値を設定しており、数値を超過しないように監督・指導を行っています。

暫定目標値は、体重50 kgの人が水を毎日2 L以上飲用しても健康に悪影響が生じないと考えられる水準で設定されているため、水道水を飲んでもすぐに健康を害する可能性はありません。

日本の水道水の安全性について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。

 

【関連記事】日本の水道水の安全性は?国内のPFAS汚染状況と暫定基準値を確認しよう

飲料水

 

 

水道水のPFAS除去に浄水器が有効とされる理由

水道水に含まれるPFASを家庭で防ぐには?

2022年9月に環境省から公表された「飲料水中のPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)及びPFOA(ペルフルオロオクタン酸)」WHO飲料水水質ガイドライン作成のための背景文書では、PFAS除去に対する高圧膜処理やイオン交換樹脂、活性炭などの有効性について報告されています。

そのため、これらの浄水方式を取り入れた家庭用浄水器の活用は、水道水に含まれるPFAS除去方法として有効である可能性が高い手段と結論づけられています。

 

 

浄水器の仕組みと種類

浄水器

浄水器とは、水道水に含まれる残留塩素やトリハロメタン等の物質を除去・減少させる目的で使用する製品を指します。

ただし浄水器の中でも、製品によって浄水プロセスが異なるため注意が必要です。ここからは、浄水器の仕組みと種類について詳しく解説します。

 

浄水器とは

1950年代に初めて家庭用浄水器が販売され、当初は井戸ポンプと併用する製品として販売されていました。その後、1957年に水道法が制定され、浄水器の水道水利用が始まります。

それから年月が経過するにつれて浄水器の性能や形状が変化し、現在のような製品に進化しました。

家庭用浄水器の目的は、水道水中の物質除去に有効なろ材を組み合わせて水道水をろ過し、おいしくて安心な水を作ることです。浄水器の内部は、活性炭やイオン交換樹脂などのろ材を内蔵したカートリッジが組み込まれた仕組みとなっています。

 

用途で分けた浄水器のタイプ

家庭用浄水器の規格を定めたJIS規格では、浄水器を下記の種類に分類しています。

 

浄水器の種類
連続式浄水器(Ⅰ形) アンダーシンク形浄水器
据置形浄水器
連続式浄水器(Ⅱ形) アンダーシンク形浄水器
蛇口直結形浄水器
据置形浄水器
回分式浄水器 ポット・ピッチャー形浄水器

参照:JIS S 3241:2015 家庭用浄水器|一般財団法人 日本規格協会

 

浄水の供給方法や取り付け位置で大きく3つに分類され、さらに浄水器本体の細かい取り付け位置などで種類が分けられています。一般消費者向けの製品では、取り付け位置の名称を製品に採用しているケースが多くなっています。

連続式浄水器は給水栓に接続して浄水を連続供給させるタイプで、Ⅰ形とⅡ形の違いは取り付け位置が給水栓より上流側か下流側になるかです。

細かい取り付け位置では、シンク(流し台)の下に取り付ける「アンダーシンク形」、給水栓の先端に取り付ける「蛇口直結形」、浄水器本体を給水栓とホースで繋ぐ「据置形」があります。

自然ろ過によって浄水を行うポット・ピッチャー形は、浄水を連続供給させない回分式浄水器タイプです。浄水の受け部分がポットやピッチャーとなっており、そこから注いで使用します。

飲み水や料理だけに限定した浄水の使用なら、ポット・ピッチャー形が手軽で便利です。その都度自分で水道水を浄水器に入れる手間はかかりますが、浄水器本体を給水栓と繋ぐ手間はかかりません。

他の家事全般にも幅広く浄水を使用するなら連続式浄水器が便利ですが、アンダーシンク形の場合は専門的な工事が必要です。浄水器本体を取り付ける手間をできるだけ少なくしたいなら蛇口直結形が良いでしょう。

 

ろ材で分けた浄水器のタイプ

浄水器は製品によって使用するろ材が異なります。浄水器に使用される主なろ材は、以下の4種類があります。

 

  • 活性炭
  • ろ過膜
  • 逆浸透(RO)膜
  • セラミック

 

浄水器の種類
特徴
活性炭式浄水器
  • 粒状、粉状、繊維状およびブロック状にした活性炭の吸着能力を使用した浄水器
  • 多くの浄水器で採用されており、簡易型浄水器から多量の活性炭で除去能力を持続させた大型の浄水器まで様々な種類がある
ろ過膜式浄水器
  • 0.4~0.01 μm(※1)の穴が空いたろ過膜に水を通して粒子類を除去し、活性炭で残留塩素や有機物を取り除く浄水器
  • ろ過膜には中空糸膜や平膜などの種類がある
  • 複数のろ材と組み合わせられることが多い
逆浸透(RO)膜式浄水器
  • ろ過膜式で用いられる膜よりさらに小さい1 nm未満(※2)の穴があいた膜に、圧力をかけて水を通し、有害物質を分離させる浄水器
  • 海水の淡水化や医療用にも使用されている
セラミック式浄水器
  • 微細なセラミックをろ材に用いたフィルターなどが使用される浄水器

※1 1 μm:1 mmの1,000分の1
※2 1 nm:1 mmの100万分の1

日本の家庭用浄水器メーカーでは、単一の浄水方式を採用するのではなく、複数のろ材やフィルターを組み合わせて除去できる有害物質の数や除去率を高めています。

 

 

PFAS除去に有効な浄水システム

水 浄水器

ここからは、環境省が公表した資料「飲料水中のPFOS及びPFOA」WHO飲料水水質ガイドライン作成のための背景文書に基づき、PFAS除去に有効だと考えられている浄水システムについて詳しく解説します。

 

活性炭フィルター

活性炭フィルターはPFAS除去に効果的とされている方法の一つです。

特にPFOS・PFOAをはじめとした疎水性を有するPFASは、活性炭への高い吸着力があります。活性炭は高分子のPFASの吸着力にも優れていますが、親水性を有する短鎖PFASの除去率は低くなります。

吸着による除去効率は、PFASの官能基の鎖長と関係があり、「スルホン基を持つPFASはカルボン酸基を持つものより高い除去率がある」などの見解が示されました。

適切な活性炭の選択や活性炭層の深さ、効率的な運転と保守が、PFAS除去を成功させるために考慮すべき重要な要素となっています。

 

イオン交換樹脂

飲料水源に見られる多くのPFASは、浄水処理におけるpHで負に帯電しています。そのため、ほとんどの研究では、陰イオン交換樹脂の応用が検討されてきました。

しかし、正に荷電したPFASが存在する場合、陰イオン交換樹脂によるPFAS除去はあまり期待できないため、陽イオン交換樹脂による特異的除去が必要です。

陰イオン交換樹脂は、負に荷電したPFAS除去において、粒状活性炭よりも優れた除去効率があるとされています。しかし再生が難しく、限られた使用回数では運転コストがかかるため、有機溶媒を用いた効果的な再生方法の研究が進められています。

 

逆浸透膜

逆浸透(RO)膜は、サイズ除去や静電気反発、疎水性によって汚染物質を除去できる孔径1 nm未満のろ過膜を使った高圧膜処理です。過去の研究によると、PFOSを99%以上、PFOAを92〜97%の効率で除去できると結論づけられています。

また同じ高圧膜処理でも、ナノ膜(NF)よりも逆浸透膜のほうがさらに小さい分子を除去できるため、より効率的な除去が可能です。

ただし、RO処理には多くのエネルギーと水資源が必要になります。また、濃縮水などの大量廃棄物を処理しなければいけないため、費用や手間が発生します。

本体の販売価格と同様にろ材フィルターの交換費も高い場合があり、また浄水過程で水道水の一部を廃棄するため、節水にも不向きです。さらに、逆浸透膜は放射能物質まで除去できる高い浄水力がある分、ミネラル成分なども除去されるため、そこまでの必要性を感じない人もいるでしょう。

これらの理由から、精度の高い浄水方式ではあるものの、日本の一般家庭の浄水器にはあまり普及していないのが現状です。

 

 

PFASに有効とされる浄水器の選び方は?

水道水 PFAS

現在多くのメーカーから家庭用浄水器が販売されていますが、性能や除去できる物質の範囲は様々であり、全ての浄水器がPFAS対策に有効とはいえません。PFAS対策に有効な浄水器を探すなら、以下の4つを目安にして選ぶと失敗が少ないでしょう。

 

PFAS対策に有効な浄水器を選ぶポイント
  1. 浄水器で除去できる対象物質
  2. 浄水器の規格を遵守した評価の実施有無
  3. カートリッジなど交換パーツの耐久性
  4. 試験結果や根拠データの公開有無

 

まずは浄水器がどのような物質を除去できるのかを確認し、対象物質の中にPFASが含まれているものを選びましょう。

また、家庭用浄水器は家庭用品品質表示法で様々な表示が義務付けられており、JIS規格で定めた試験結果の表示義務も含まれています。そのため、その規格に遵守した評価が行われているか(表示されているか)の確認も重要です。

PFASに関してはJIS規格内に記載がなく、浄水器協会(JWPA)の自主規格であるJWPAS B規格で取り上げられています。そのため、PFAS除去対応の浄水器を販売するメーカーは、JIS規格とJWPAS B規格の両方の試験を実施しているケースがあります。

この他、カートリッジなど交換パーツの耐久性も確認しておきましょう。耐久性は品質だけでなく、交換頻度の目安やコストを把握する意味でも大切な指標になります。

メーカーによっては浄水器能力の試験結果や耐久性能の根拠データを公開している場合もあるので、信頼性の高いデータを比較しながら購入を検討しましょう。

 

 

浄水器におけるPFASフリーの基準

国内で販売されている家庭用浄水器の中には、PFASの除去性能を備えている証として、「PFASフリー」と記載された商品があります。

ただし、現状では明確な表示ルールは存在せず、メーカーによって表記の基準が曖昧になっているのが現状です。

現時点でPFASフリーの表記に国際的な基準は存在しないため、「国内で規制対象となっている一部のPFASが含まれていない」など、各メーカー独自の解釈で記載されています。

PFASに分類される化学物質は1万種類以上あるといわれており、その全てが含まれていないという意味で使用されることは少ないため、十分注意しておきましょう。

 

 

水道水のPFAS対策は浄水器選びも大切

浄水器を選ぶ際には、用途やろ過材の特徴をしっかりと把握し、製品の性能を十分に比較・検討することが大切です。

水道水に含まれるPFAS除去を目的に浄水器を設置する場合、活性炭やイオン交換樹脂に代表される浄水プロセスを採用した製品を選ぶのが有効とされています。

メーカーによって採用している浄水プロセスや性能は異なるため、PFAS除去に対して一定の効果が見込めるかを総合的に判断し、生活に見合った家庭用浄水器を選びましょう。

 

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