PFAS(有機フッ素化合物)は除去できる?具体的な除去方法と種類

投稿日:2024年6月26日
汚染された水からPFAS(有機フッ素化合物)を除去するには、物理的除去方法や化学的除去方法など様々な手段があります。この記事では、PFASを除去する具体的な方法をいくつか紹介します。PFASの具体的な除去方法に加えて、それぞれの方法のメリット・デメリットについても解説します。
INDEX
PFAS(有機フッ素化合物)とは?
PFASは、有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物を総称したものを指します。「ピーファス」と呼ばれるこの化学物質は1万種類以上もあり、撥水・撥油性、熱・化学的安定性等の物性を示すことから、幅広い用途で使用されてきました。
PFASの特徴
PFASには、以下の3つの特性があります。
- 難分解性
- 高蓄積性
- 長距離移動性
これらの特性から、一度自然に放出されたPFASは、自然環境で分解されることなく長期間その場に残留します。残留したPFASが環境水や食物連鎖を通じて国境を越え、世界中の人間や動植物の体内へと蓄積。広範囲の生物に影響を及ぼすことが、PFASが持つ大きな特徴です。
世界中で規制が強化
PFASは世界中の国や地域に影響を及ぼすため、国際的な条約であるPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)において規制対象となっています。2024年4月時点でPOPs条約の規制対象となっているPFASは以下の3つです。
- PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
- PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
- PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)
POPs条約では、規制対象もしくは規制を検討する物質を附属書A〜Dの4つに分類しており、PFOSは2009年5月に附属書B(製造・使用、輸出入の制限)へ追加されました。その後、2019年5月にPFOAが附属書A(製造・使用、輸出入の原則禁止)に追加。2022年6月にPFHxSが附属書Aに追加されました。
また、フッ素ポリマー加工助剤、熱媒体等に使用されている、長鎖ペルフルオロカルボン酸(LC-PFCA)とその塩及びLC-PFCA関連物質23項目が、POPs条約で一部の例外を除き付属書Aに追加することが現在審議されています。
日本国内のPFAS規制内容
日本では化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)によって、PFASの製造や輸入等が規制されています。PFOSは2010年、PFOAは2021年、PFHxSは2024年から第一種特定化学物質として、国内での製造・輸入などが禁止されました。
厚生労働省は、2020年にPFOS、PFOAを水質管理目標設定項目に位置付け、PFOSとPFOAの合算値を50 ng/L以下とする水道水の暫定目標値を設定し、全国の水道事業者等による管理をお願いしています。また、環境省においても、公共用水や地下水における暫定目標値を50 ng/L以下と定めています。
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PFASの物理的除去方法
PFASを物理的に除去する方法について、様々な研究がされています。ここでは、主に海外の論文と環境省の資料で公開されている除去方法について解説します。
吸着
PFASは吸着率が高いため、水からPFASを除去する方法として吸着プロセスが利用されます。吸着させる方法としては、水素結合、静電相互作用、疎水性相互作用などが利用されます。具体的には、活性炭、バイオ炭、ナノマテリアルとナノコンポジットなどを利用する方法が一般的です。
効率的で環境に優しいメリットがある一方で、吸着させた後の吸着剤の処理に大きなコストが発生するデメリットもあります。
高圧膜処理
高圧膜処理とは、非常に細かい膜孔を通過させることでPFASを除去する方法です。高圧膜の中の膜孔の大きさによって「ナノろ過」と「逆浸透」という2つの方法に分けられます。
最新の研究では、蒸発技術と逆浸透処理を組み合わせることで、PFASの100%分解が達成されたと報告されました。複数のPFASを効率的に除去できるメリットがある一方で、逆浸透に使用する膜のコストが高いデメリットもあります。
イオン交換樹脂
イオン交換樹脂とは、イオン交換基を持つ合成樹脂の総称です。水に含まれる不純物のイオンを取り除き、代わりにもともと樹脂が持っていたイオンを放つ「イオン交換」を行うことで、不純物を取り除きます。樹脂の寿命が長く、メンテナンスコストを抑えられるメリットがある一方で、樹脂が汚れるとパフォーマンスが低下するため、定期的なメンテナンスが必要になります。
PFASの化学的除去方法
化学的除去方法とは、水に存在する粒子や有機物などの溶解物質を水から分離する、または、無害な物質に変換する方法です。
PFASを含む水に対する化学的除去方法の代表例として、脱フッ素化、凝集・凝固プロセスなどが挙げられます。これらの方法は、現場の処理に適した方法でPFASを除去できる一方で、環境に負荷をかけてしまうデメリットがあります。
PFASの生物学的除去方法
生物学的除去方法とは、微生物や酵素などの生物機能を活用して、有害な物質や廃棄物を分解・排除する処理技術です。
PFASにおいては、微生物によるバイオレメディエーション、ファイトレメディエーションなどがあります。少ないエネルギー消費で環境に負荷をかけないメリットがある一方で、処理に時間がかかるため高濃度汚染には不向きというデメリットがあります。
PFASの濃度試験で有効な除去方法が分かる
PFASの除去には、様々な方法が利用されています。各方法にはメリット・デメリットがあり、適切な手段を選択しなければスムーズにPFASを除去できません。適切な手段を選ぶためには、汚染の度合いに応じて最適な除去方法を選ぶことが大切です。まずは汚染されている水のPFAS濃度を試験してから、適切な除去方法を選択するとよいでしょう。
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【参考資料】
- PFOS、PFOAに関するQ&A集(2023年7月時点)|環境省
- POPs|Stockholm Convention
- 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令案の概要(令和5年9月15日)|厚生労働省・経産省・環境省
- PFOS、PFOA の国内の製造状況等|環境省
- 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令の閣議決定について|環境省
- 飲料水中の PFOS 及び PFOA」WHO 飲料水水質ガイドライン作成のための背景文書|環境省
- バイオレメディエーションとは? | バイオテクノロジー | 製品評価技術基盤機構
- A comprehensive review on the need for integrated strategies and process modifications for per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS) removal: Current insights and future prospects|ScienceDirect