PFASの除去方法として有効な活性炭の特徴と注意点

投稿日:2024年12月26日
PFAS(有機フッ素化合物)は、別名「永遠の化学物質」とも呼ばれており、熱に対する耐性や化学的安定性が高い化学物質です。そのため、一般的な浄水処理では水に含まれるPFASが除去できないという問題があります。
2024年8月時点では、浄水場におけるPFASの除去方法として有効とされている方法に、活性炭を使った浄水処理があります。この記事では、PFAS除去に有効とされている活性炭の特徴と注意点について解説します。
INDEX
PFASの除去方法とは?
PFASは耐熱性や化学的安定性の高い化学物質であるため、適切な処理方法で浄水処理を行うことが大切です。ここでは、PFASの特徴や除去が難しい理由について解説します。
PFASの特徴
PFASは有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物を総称したものであり、約1万種類以上の化学物質が該当します。
PFASは撥水・撥油性や熱・化学的安定性の高さから、これまで撥水剤や泡消火薬剤、製品の製造加工など数々の用途で使用されてきました。
生活の身近な製品に使用される化学物質である一方で、難分解性や高蓄積性、長距離移動性などの特性を持っています。そのため、日本を含めた複数の国で、毒性の高いことが特定された一部の物質が飲料水規制の対象物質となっています。
PFASの除去が難しい理由
水に含まれるPFASは、凝集沈殿ろ過やオゾン処理、消毒処理などの従来の浄水処理では除去できません。
また、PFASの除去に有効な技術を導入している場合でも、PFASの除去率は処理施設や設備条件によって大きく異なるのが現状です。
水質中のPFASを除去する方法
水質中に含まれるPFASの除去に有効とされている方法には、吸着プロセスや高圧膜処理、イオン交換樹脂などがあります。ここでは、水質中のPFASを除去する方法について解説します。
浄水場等で利用されている除去方法
環境省の資料「飲料水中のPFOS及びPFOA|WHO 飲料水水質ガイドライン作成のための背景文書」では、いくつかのPFASについて高い除去を行える浄水方法として、高圧膜処理、イオン交換樹脂処理を挙げています。
高圧膜処理とは、非常に小さな孔を持つ膜に水を送り込み、高圧をかけることで水中の物質を分離する技術です。PFASは水と比べると分子量が大きく、膜を通過できないため、この方法による有効性が示されています。
対するイオン交換樹脂は、プラスイオンやマイナスイオンと結合する能力を持つイオン交換樹脂に水を通す方法のことです。この樹脂に水を通すと、水中のイオンを吸着して不純物の少ない純水ができます。
有害性が指摘され規制対象になっているPFASはイオン性のものが多く、通常は水中で陰イオンとして存在しているため、イオン交換樹脂処理による有効性が示されています。
活性炭によるPFAS除去も有効
環境省の資料「飲料水中のPFOS及びPFOA|WHO 飲料水水質ガイドライン作成のための背景文書」では、活性炭によるPFAS除去の有効性についても言及されています。
活性炭による浄水方法とは、活性炭が持つ微細な孔に水中の様々な物質を吸着させることで、水質中の物質を除去する方法です。
活性炭は、直径1〜2 mmの粒状(GAC)または、直径<0.1 mmの粉末状(PAC)のいずれかが使用されます。
PACは通常一度だけ使用され、浄水汚泥と一緒に廃棄されます。一方、GACは消耗すると熱で再生されます。PFASの除去能力はPACの方が大きいと考えられます。通常の高度処理で用いられるGACは、微生物の担体としての役割が大きく、吸着は二次的な効果とされています。活性炭はPFASに限らず他の有機物も吸着し、飽和すると吸着能力が著しく低くなります。そのため、GACをPFAS除去に用いるためには従来とは異なる再生サイクルの検討が必要であると上述の環境省の文書では述べられています。
PFAS除去に使用される活性炭の注意点
浄水場のPFAS除去方法として活性炭が有効だとされていますが、家庭用の浄水器に用いられている活性炭フィルターも全てが同じように除去効果が高いと安心するのは危険です。
家庭用浄水器の場合、活性炭の吸着能力には差があり、必ずしもPFASが除去できるとは限りません。
また、家庭用の活性炭フィルターは小さいことから、すぐに吸着能力が低くなる可能性があります。吸着能力が低い状態では全く効果が期待できないため、そうなる前に活性炭のカートリッジを交換するよう注意しましょう。
PFAS除去に一定の効果が認められる家庭用浄水器の種類について詳しく知りたい方は、下記の記事でご確認ください。
【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)対策に有効とされる浄水器の選び方とは?
活性炭によるPFAS除去の有効性を過信しない
現在日本の浄水場でPFAS除去に有効だとされている方法は、高圧膜処理、イオン交換樹脂処理、活性炭などが挙げられます。今後の研究によっては、より効率的にPFASを除去できる浄水方法が確立される可能性もあります。
なお、環境省の資料に記載されている活性炭の有効性については、浄水場での処理に関するものが大半なので情報取得の際は注意する必要があります。
家庭用浄水器の活性炭フィルターの有効性については機種の選定やメンテナンスの頻度などに注意が必要です。よく調べたうえで適切なものを購入するようにしてください。
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記事の監修者
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ユーロフィン日本環境株式会社 横浜PFAS事業部 PFASグループ 技術顧問 関 友博 |
<経歴> 1986年 岩手大学農学部農芸化学科卒業 1990年 株式会社カナポリ入社(後の日本環境株式会社) 2011年からは東日本大震災に伴う放射線・放射能の調査・測定・分析体制の立上げ、2012年には遺棄化学兵器処理に関わる環境管理のコンサルティング業務を統括。 ユーロフィングループの傘下に入ってからは、ユーロフィンジャパン全体の環境・食品部門の品質管理を行い、現在はPFAS分析の立上げや国内分析法・EPA Method・ISO法等の導入を指導。 |
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