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規制が厳格化するPFASへの対策とは?メーカー担当者が押さえたい注意点

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投稿日:2024年7月24日(2025年8月20日更新)

バーチャル工場

PFAS(有機フッ素化合物)への規制は徐々に厳格化しています。既に日本では、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)により、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)PFOA(ペルフルオロオクタン酸)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)の3つについて、製造・輸出入・一部の例外用途を除き使用が禁止されています。

日々の変化が激しいPFAS規制の情勢に対して、製品の製造・輸出入を行うメーカーはどのように対策を進めるべきなのでしょうか。

この記事では、製品の製造・流通において、PFAS規制がどのように関わってくるのか、メーカー担当者が知っておくべき基本的な知識を解説します。

 

INDEX

 

 

一部のPFASが規制されている理由

分析を行う女性と男性

 

PFASは撥水・撥油性や化学的安定性の高さから、多くの工業製品や日用品、それらの製造工程等で使用されてきました。

しかし、近年では環境に長期間残留する性質が明らかになり、動植物や人体の健康に影響を与える可能性が問題視され、日本を含めた世界中で規制が強まっています。

規制の内容は、飲料水・食品・土壌・大気・排ガスなど多岐に渡りますが、飲料水と並んで重要な位置付けにあるのが製品の製造や輸出入に関する規制です。

特にEU(欧州連合)では、一部のPFASを含む製品の輸出入に対して厳しい規制が敷かれており、今後の規制動向に注目が集まっています。

 

PFAS規制の動向と基準

日本では、内閣府の食品安全委員会がPFASのワーキンググループを設置してリスク評価を実施しており、その際に参考にされるデータとして、ECHA(欧州化学品庁)や、EFSA(欧州食品安全機関)が発表した資料を参考にしています。

そのため、将来的に日本のPFAS規制がヨーロッパの規制の影響を大きく受けたものになる可能性は十分に考えられるでしょう。

国連の条約であるPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)や、EU加盟国のREACH規則(化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則)、国内化審法は、PFASを含む製品の輸出入や規制条件を把握するうえで非常に重要です。

それぞれの規制動向をまとめた年表は下記の通りです。

西暦 化学物質 規制内容
2009年 PFOS POPs条約の附属書B(制限)に追記。原則的な製造と使用が世界的に禁止
2010年 PFOS 国内化審法にて、一部の例外を除き、製造・使用・輸出入が原則禁止
2017年 PFOA REACH規則によって閾値が設定され、25 ppb以上の濃度での使用および上市が2020年7月4日から禁止
2019年 PFOA POPs条約の附属書A(廃絶)に追記。原則的な製造と使用が世界的に禁止
2021年 PFOA 国内化審法にて、製造・一部の例外用途を除く使用・輸出入が禁止
2022年 PFHxS POPs条約の附属書A(廃絶)に追記。原則的な製造と使用が世界的に禁止
2023年 PFCA(C9~C14)ペルフルオロカルボン酸類 EUにおいて、同年2月25日より物質単体での製造や上市が禁止。また特定用途を除き、含有する製品の上市や使用が制限される
2024年 PFHxS 国内化審法にて製造・使用・輸出入が禁止

 

 

PFAS規制への対策方法

電話対応中の男性

日本でも化審法および施行規則の改正により、PFASに対する規制が今後強まっていく可能性は十分に考えられます。

製品の製造や輸出入に関わる企業の担当者は、規制に対する基本的な方針として、原料・材料の確認、製造過程で使用する原水と排水の確認、完成品のPFAS含有量等を調査するといった対策を行う必要があります。

 

原料や材料など調達の際の確認

製品におけるPFOS・PFOAなどの含有の有無は、原材料の調達の際から始めることが重要です。サプライチェーンにおける原料・部品に規制物質の使用がないことが確認されていれば、基本的に最終製品に含有される可能性は低いと考えられるためです。

ただし、コンタミネーション(不純物の混入・汚染)などを通じて、製造工程において、含有されてしまうケースもあるので注意しなくてはいけません。一例として、保存容器や包装資材からPFASが溶け出して混入することが考えられます。

まずは、SDS(Safety Data Sheet:安全データシート)を確認した上で、PFASの分析や総有機フッ素分析によってスクリーニング分析をすることも有効です。

 

工場の製造工程での使用有無の確認

PFASにおいて、特にPFOAやPFHxSは工場の製造工程でも使用されてきました。

もし製品の原材料として使用されていない場合でも、製造工程で使用される器具などにて使用されていると最終製品への混入も発生します。

製造過程においてどのような器具を使用しているのかを調査し、記録を保管することも重要です。

 

製造過程の水や排水の確認

製造過程において使用する原水や、工場から排出される排水においても、PFOS・PFOAが含まれる可能性があります。

PFOS・PFOAが含まれる原水を使用した場合、最終的に完成した製品に付着し、場合によってはREACH規則などで定められている閾値を上回るケースも考えられます。

また、自社の工場内で使用する水自体に問題がなくても、周辺環境がPFASに汚染されていた場合、排水にもその影響が及ぶ可能性があります。どこに原因があるのかによっても取るべき対応が変わるため、その点を含めた分析方法の採用と調査手順を検討しましょう。

なお、排水に含まれるPFASを除去する方法として以下の方法が有効と考えられているため、状況に応じて導入を検討しましょう。

 

  • 吸着:活性炭、バイオ炭、ナノマテリアルとナノコンポジットなどを利用する
  • 高圧膜処理:非常に細かい膜孔を通過させることでPFASを除去する
  • イオン交換樹脂:イオン交換基を持つ合成樹脂を応用してPFASを除去する

 

製品での含有量調査を実施

現状の規制内容に適合しているかどうかは、必ず完成した製品で確認する必要があります。

原料・部品・製品に含有されていなかったとしても、製造工程において環境中に存在するPFASが付着し、REACH規則などで定められている閾値を上回る可能性があります。

例えば、環境変化によってPFASの前駆体が規制対象物質に変化してしまう可能性などが考えられます。

 

 

PFAS規制に対応する際の注意点

メモを取る

PFAS規制に対する対策は常に変化を続けており、規制内容に合わせて早急な対応を行う必要があります。ここからは、メーカーの担当者が考慮すべきPFAS規制対策における注意点について解説します。

 

原材料として使用していなくともPFASが含有されるケースがある

製造環境におけるPFAS混入経路

前述した通り、規制対象に指定される一部のPFASは、製造環境においてあらゆる場所に存在しています。

そのため、仮に原材料として使用していなかった場合でも、環境中のPFASが製品に混入し、完成品に含有される可能性があります。

環境中のPFASの混入以外にも、製造過程の副生成物としてPFASが生成される可能性や、PFASの前駆体として使用されていた化学物質が排水時にPFOS・PFOAといった毒性の高い物質に変化する可能性も考慮して対策を考える必要があります。

 

代替物質の開発には時間が必須

規制対象のPFASの代替物質を開発するには、原料・材料メーカーとの協議や細かい調整が必要となり、最終製品の性能も代替前と同等であることが求められます。

コストや物性などを考慮した上で試作を重ねながら調整する必要があるため、代替物質の開発には数年以上の時間がかかることも考えられます。

代替物質の開発を検討する際には、現状の対策を徹底しつつ、将来を見据えた段階的な開発計画を立てる必要があります。

 

定期的に監査を実施

PFASの混入を防ぐためには、継続的に製造工程を監視できる体制を構築することが重要です。

監査を定期的に実施することで、材料・工程などの変化点の見逃しを少なく抑えられます。

 

エビデンスを残す

仮に万全の対策と監査を行った場合でも、意図せずに閾値を上回る可能性はあります。

その場合は、変化点を確認し、早急に対策を取る必要があります。その時に参考になるのが、材料・原料のSDS、監査記録などのエビデンスです。

細かく記録を残すようにルールを整備し、抜け漏れがないように相互確認できる製造計画を立てることが大切です。

 

 

PFASの規制対象物質は拡大する可能性がある

虫眼鏡でPCを見る男性

PFASは1万種類以上あり、環境や人体への影響が確認されていない物質も多数あるため、全ての有害性が確認されているわけではありません。

しかし、2019年のIARC(国際がん研究機関)の研究結果では、PFOAの人体に対する発がん性がある可能性が高いと報告しています。

PFASによる自然環境や人体に対する有害性や影響は徐々に明らかになっており、今後PFASが及ぼす影響に関するデータの研究が進むと、規制物質はその前駆体などを含めてさらに拡大する可能性があります。

一例として挙げられるのが、PFCA(C9~C14)の規制です。EUにおいては、既に2023年2月25日から上市が制限されています。

また、日本において現時点では製造・流通等が規制されていないPFBA(ペルフルオロブタン酸)、PFHxA(ペルフルオロヘキサン酸)についても、デンマークなど一部の国で飲料水中の目標値やTDI(耐容一日摂取量)等を設定するなど、徐々に規制が始まっているのが現状です。

さらに、ドイツ、デンマーク、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの5ヵ国は共同で、2023年に新たなPFAS規制案を公表しました。この規制案は、PFASを物質の構造で定義し、幅広い物質を対象としている点が特徴です。

この規制案におけるPFASの定義は、「少なくとも1つの完全にフッ素化されたメチル基(–CF₃)またはメチレン基(–CF₂–)の炭素原子(※水素・塩素・臭素・ヨウ素などが結合していない)を含む物質」とされています。
この規制案は、環境中で分解されにくく、人体や生態系に影響を及ぼす可能性があるPFASの製造・使用を制限することを目的としており、5ヵ国が共同で提案したことで、今後EU全体のPFAS規制がより強化される可能性があります。

 

将来的な規制を見込んで代替物質の開発に着手する

実際のところ、今後PFASに対してどのような規制が行われるのかについては、予想が困難な部分があります。

現状では環境への影響が少ないとされている代替物質も徐々に規制対象となっているため、現在規制されていないPFASが将来的に国内で規制対象物質に加わる可能性もあります。

近年ではPFASではない代替物質の開発に取り組む企業も増えていることから、今後はPFASフリーや脱PFASがトレンドになる可能性がありそうです。

なお、PFAS MEDIAでは、以下の条件を満たす製品をPFASフリー製品と定義して紹介しています。

 

【PFAS MEDIAの製品中におけるPFASフリー定義】

完成した製品および製造工程において、REACH規則・POPs条約・化審法で規制されている物質及び、今後規制の対象とされるLC-PFCAsが含まれていないこと。

〈物質名〉
PFOS、PFOA、PFHxS、PFHxA、LC-PFCA(C9-C21)

 

 

 

PFASへの対策は定期的に見直す必要あり

PFASの情勢は刻一刻と変化しています。各国の規制の動向を追いかけつつ、数年先の状況を予測してPFASへの対策を進める必要があります。製品製造や輸出入に携わる企業の担当者は、情報のキャッチアップと合わせて、定期的に対策方法を見直すようにしましょう。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本総研 河原崎海

ユーロフィン日本総研株式会社

浜松PFAS事業部 PFASグループ

Manager 河原崎 海

<経歴>

2002年 神奈川大学工学部応用化学科 卒業

2004年 神奈川大学工学研究科応用化学専攻 修士課程 修了

2018年 静岡県立大学大学院 薬食生命総合学府 食品栄養科学専攻 博士課程 単位取得満期退学
学士・修士課程では膜分離、博士課程では食品中の機能性成分に関する研究を行う。

2004年 (一財)静岡県生活科学検査センター入所後、水道水・環境試料の分析に従事し、2012年から農薬メーカー傘下の受託ラボにて食品・農薬分析、試験法開発、異物解析、食品中ノンターゲット分析事業の立上げや、農薬GLP・食品衛生法登録検査機関・ISO17025試験所認定の取得や維持管理を行う。ユーロフィングループ参画後は、品質保証、ラボ移転業務に従事し、2021年からユーロフィン日本総研にてアスベスト事業部統括とラボ移転を担当し、2024年からPFASラボの立上げを担当。

<発表>

 

 

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【参考資料】