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PFASの血液検査は必要?血中濃度と健康の関連性について

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投稿日:2025年3月17日

PFAS 採血

PFAS(有機フッ素化合物)は、環境中や生物の体内などに広く残留する特性を持っており、健康への影響が懸念されている化学物質です。そのため、PFASの曝露状況を把握する目的で、血中濃度の測定を検討する方もいるでしょう。

ただし、血液検査を受ける際には、事前にPFASの血中濃度と健康との関係性について正しい知識を持っておく必要があります。

この記事では、国内でPFASの血液検査を行う目的や必要性、血中のPFAS濃度が健康に及ぼす影響について解説します。

 

INDEX

 

 

PFAS(有機フッ素化合物)とは?

PFAS 分析

PFASとは、炭素とフッ素が結合している有機フッ素化合物のうち「ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物」を総称した化学物質群です。

熱や薬品に強く、水や油を弾く性質があるため、生活用品をはじめ様々な用途で使用されてきました。

PFASは1万種類以上あるといわれており、それぞれ性質が異なります。炭素とフッ素が強力に結びつく特性から、自然界で分解されにくい特徴があります。

現在、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)において、PFASのうちPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)の3種類が、廃絶・制限の対象に指定されています。

これら一部のPFASは健康に影響を及ぼす可能性が指摘されており、日本を含めた世界各国で輸入・製造・使用が厳しく規制されています。

 

PFASについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向まで

PFASとは

 

 

PFASと健康の関係性は?

PFAS 検査 男性医師

PFASが人の健康に与える影響については、未だに明らかになっていないことが多く、世界中で研究が進められています。

ここでは、PFASの血中濃度と健康との関係性について解説します。

 

PFASが健康に与える影響

食品安全委員会が公開している資料「評価書 有機フッ素化合物(PFAS)令和6年(2024年)6月」では、PFOSやPFOAと以下の影響との関連性が示唆されています。

 

  • 血清ALT値(肝臓の機能を示す数値)の上昇
  • コレステロール値の軽微な増加
  • 出生体重の低下
  • ワクチン接種後の抗体応答低下

 

ただし、これらの影響とPFASとの関連性については、現時点で明確な証拠が示せていないのが実情です。

また、PFOAは腎臓がんや精巣がんとの関連が一部報告されていますが、研究結果に一貫性がなく、PFOSやその他のPFASについては証拠が不十分とされています。

 

PFASの血中濃度と健康との関係性

PFASの血中濃度と健康との関係性については、まだ明確なデータが示されていません。2024(令和6)年に食品安全委員会が公開した資料では、ドイツや米国の研究機関が発表したPFASの血中濃度指標について触れられています。

一方で、各国の血中濃度指標を参照にしても、PFASと健康との関連性について不明な点が多く、疫学的手法により計画的な調査を続ける必要性があるとしています。

 

 

海外におけるPFASの血中濃度の指標

PFAS 血液 分析

ドイツのヒトバイオモニタリング委員会と米国の科学・工学・医学アカデミーは、健康に影響を与える可能性があるPFASの血中濃度の指標を公開しました。

現時点で米国とドイツで公開されているPFASの血中濃度指標について詳しく解説します。

 

米国科学・工学・医学アカデミー

米国科学・工学・医学アカデミーでは、血中に含まれる7種類のPFAS分子(PFOS、PFOA、PFHxS、PFNA、MeFOSAA、PFDA、PFUnDA)について、以下の指標を提言しています。

 

  • 2 ng/mL以下:健康への影響は見込まれない
  • 2〜20 ng/mL:感受性の高いグループで健康に影響を及ぼす可能性がある
  • 20 ng/mL以上:健康に影響を及ぼすリスクが高まる

 

一方で、PFAS曝露による健康リスクについては、個々の生活状況やその他の健康リスク要因によって判断基準が大きく異なるため、不確実性が高いことも指摘されています。

そのため、集団スクリーニングで期待される利益よりも、検査結果を解釈する困難さや採血の負担などのデメリットが大きくなる可能性が懸念されています。

 

ドイツ連邦ヒトバイオモニタリング委員会

ドイツ連邦のヒトバイオモニタリング協会(HBM委員会)は、PFASの血中濃度について、HBM-Ⅰ値とHBM-Ⅱ値という指標を設定しています。各指標については、以下の通りです。

 

<HBM-Ⅰ値>

  • PFOS:5 ng/mL
  • PFOA:2 ng/mL

<HBM-Ⅱ値>

  • PFOS:10〜20 ng/mL
  • PFOA:5〜10 ng/mL

 

HBM-Ⅰ値以下では健康への悪影響は予想されず、HBM-Ⅱ値を超えると健康リスクが増加し、必要に応じて検査等の長期的なモニタリングを行うことを推奨しています。

 

 

日本におけるPFASの血中濃度の指標

採血

日本では、PFASの血中濃度に関する基準は定められていません。なぜなら、現時点では血中濃度に応じた健康への影響が明らかにされていないためです。

米国とドイツの研究機関が血中濃度の指標を公開していますが、明確な指標として採用できるほどのデータは不十分と判断されています。

そのため、PFAS曝露が懸念される地域に住む方の血中濃度分布や、高濃度のPFAS曝露を受けた疑いがある方の把握等を実施しつつ、今後のリスク管理や対応について検討していく方針が示されています。

 

 

PFASの血中濃度を測定する際の注意点

PFASの血中濃度と健康の関係性については、明確な知見は得られておらず、現段階でどの程度の濃度でどのような影響が生じるかは不明です。

そのため、血液検査の結果は個人の健康リスクを直接的に示すものではなく、あくまで環境や集団全体への曝露状況を把握するための一つの指標として活用するのがよいでしょう。

PFAS Exposure™ 自己血採取キット

ユーロフィングループでは、医療機関・企業・研究機関・自治体等に限定した検査サービスとして、「PFAS Exposure™ 自己血採取キット」 を取り扱っています。自身で簡単に採血でき、検体を送付することで45項目のPFAS濃度が測定可能です。

 

 

PFASの血液検査は正しい知識を持つことが重要

PFASの血液検査を受ける際には、正しい知識を持つことが大切です。

最新の研究では、PFASの曝露が健康に影響を及ぼす可能性について指摘されています。

しかし、PFASの血中濃度と健康との関係性は未だに解明されておらず、世界的にも明確な指標は示されていません。

PFASの血中濃度検査はあくまで周辺環境への曝露状況等を把握する手段として実施されるものなので、実態を把握したうえで検査結果を受け止めるように心がけましょう。

 

 

ユーロフィンのPFAS分析については

こちらからお問い合わせください

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記事の監修者

ユーロフィン日本総研 河原崎海

ユーロフィン日本総研株式会社

浜松PFAS事業部 PFASグループ

Manager 河原崎 海

<経歴>

2002年 神奈川大学工学部応用化学科 卒業

2004年 神奈川大学工学研究科応用化学専攻 修士課程 修了

2018年 静岡県立大学大学院 薬食生命総合学府 食品栄養科学専攻 博士課程 単位取得満期退学
学士・修士課程では膜分離、博士課程では食品中の機能性成分に関する研究を行う。

2004年 (一財)静岡県生活科学検査センター入所後、水道水・環境試料の分析に従事し、2012年から農薬メーカー傘下の受託ラボにて食品・農薬分析、試験法開発、異物解析、食品中ノンターゲット分析事業の立上げや、農薬GLP・食品衛生法登録検査機関・ISO17025試験所認定の取得や維持管理を行う。ユーロフィングループ参画後は、品質保証、ラボ移転業務に従事し、2021年からユーロフィン日本総研にてアスベスト事業部統括とラボ移転を担当し、2024年からPFASラボの立上げを担当。

<発表>

 

 

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