PFAS濃度の目安とは?水質・土壌・血液における基準と測定方法

投稿日:2025年12月9日

PFAS(有機フッ素化合物)は環境中で分解されにくく、人体にも蓄積しやすい性質を持つことから、世界各国で規制が進んでいる化学物質です。
日本でも水道水や公共用水を対象とした暫定目標値・指針値が定められるなど、規制や調査が強化されています。こうした状況を理解するためには、水質・土壌・血液などに含まれるPFAS濃度の目安を知っておくことが重要です。
本記事では、国内外で示されているPFAS濃度の基準や指標、さらに国内における測定方法について解説します。
INDEX
PFASの濃度測定が必要な理由

この記事で扱う「PFAS濃度」とは、水道水や河川水・地下水といった水質、土壌、そして血液など、分析対象に含まれるPFASの量を指します。
PFASは一万種類以上に及ぶ有機フッ素化合物の総称であり、規制や測定の対象となるのは、その中でも世界的に問題視されている一部の化学物質が中心です。濃度の測定では、こうした代表的な物質を指標として扱うことが多くなっています。
水質・土壌・血液に含まれるPFAS濃度の目安を理解することは、リスク評価の第一歩として重要な意味を持ちます。
PFASが健康に及ぼす影響
PFASは難分解性・高蓄積性・長距離移動性といった特性を持ち、一度体内に取り込まれると排出されにくく、長期的に体内に残留することが研究で報告されています。
そのため、人体や環境への影響を把握し、各国で定められている規制値や目標値に対応するためにも、水質・土壌・血液といった対象ごとの濃度測定が欠かせません。
近年の研究では、体内にPFASが蓄積することで以下の健康影響が生じる可能性が指摘されています。
- 甲状腺疾患
- 血中コレステロールの増加
- 肝臓がん・肝疾患
- 腎臓がん
- 潰瘍性大腸炎
- 不妊、出生児体重の低下
- 前立腺がん
- 免疫力の低下
PFASが健康に与える影響については、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】PFASが人体に及ぼす影響は?健康リスクや国内の汚染事例
PFAS濃度の共通指標は存在しない
PFASは人体や環境に与える影響や長期的なリスクが十分に解明されておらず、現在も世界中で研究が進められている段階です。
そのため、健康への影響に関する統一的な基準はなく、各国が独自に指標を定めています。
2025年時点の国内におけるPFAS濃度の指標は、主に飲料水と河川水・地下水に関するものです。対象ごとの基準は以下の通りです。
| 対象 | 基準 |
| 水道水 | 暫定目標値:PFOS及びPFOA 合計 50 ng/L |
| 公共用水・地下水 | 指針値(暫定):PFOS及びPFOA 合計 50 ng/L |
国内では、土壌や血中に含まれるPFAS濃度の明確な指標が決められていません。
一方で、米国やドイツなど一部の国では、関連団体が血中濃度に関する指標として医学的ガイダンス値を設定しており、以下のように公表されています。
| 国名 | 団体 | 対象PFAS | 血中濃度の指標 |
| 米国 | 米国科学・工学・医学アカデミー(NASEM) | PFOS、PFOA、PFHxS、PFNA、MeFOSAA、PFDA、PFUnDA | 2 ng/mL以下:健康影響は見込まれない 2〜20 ng/mL:感受性の高いグループで健康に影響を及ぼす可能性あり 20 ng/mL以上:健康に影響を及ぼすリスクが高まる |
| ドイツ | ドイツ連邦環境庁 ヒトバイオモニタリング委員会 | PFOS、PFOA | <HBM-I値> この値以下では健康影響は見込まれない PFOS:5 ng/mL / PFOA:2 ng/mL <HBM-II値> PFOS:20 ng/mL / PFOA:10 ng/mL |
参照:評価書 有機フッ素化合物(PFAS)|食品安全委員会 有機フッ素化合物(PFAS)ワーキンググループ
これらの数値は各国が独自に設定したリスク評価の目安であり、超過した場合でも必ず健康影響が生じるわけではありません。
血中PFAS濃度については、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】PFASの血液検査は必要?血中濃度と健康の関連性について
PFAS濃度の測定法

2025年時点では、国際的に統一されたPFAS濃度の測定法は確立されていません。そのため、各国が独自に測定法や基準を定めて運用しているのが現状です。
国内においては、水質や土壌に含まれるPFAS濃度について、公定法が環境省および厚生労働省によって定められています。
水質中のPFAS濃度測定法
国内における水質中のPFAS測定方法は、国が指定している公定法が主流です。
この測定方法の定量下限(定量が可能な最低濃度)は、以下の通りです。
| 水質中のPFAS濃度測定法(国内) | 対象 | 定量下限 |
| 公定法 | PFOS | 0.1 ng/L |
| PFOA | 0.2 ng/L |
水質中のPFASを測定する際は、PFOSやPFOAはガラス容器に吸着しやすいため、採水や分析の際には器具をメタノール等で十分に洗浄し、汚染を防ぐことが重要です。
測定法の詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】PFASの水質検査方法は?調査から分析までの流れと最新の動向
日本で公定法として定めている水質分析法は、環境水(河川水、地下水)、排水、土壌溶出水、水道水(飲料水)などを対象としています。
環境省は、飲料水と環境水(河川水、地下水)に含まれるPFAS濃度の指標について、それぞれ暫定目標値と暫定指針値を設定しています。これらの基準は将来的に見直されることが決定しており、2026年4月1日から改正基準が施行される予定です。
| 対象 | 現在の基準 | 2026年4月1日以降の基準 |
| 水道水 | 暫定目標値:PFOS及びPFOA 合計 50 ng/L | 基準値:PFOS及びPFOA 合計 50 ng/L |
| 公共用水・地下水 | 指針値(暫定):PFOS及びPFOA 合計 50 ng/L | 指針値:PFOS及びPFOA 合計 50 ng/L |
参照:「水質基準に関する省令の一部を改正する省令」及び「水道法施行規則の一部を改正する省令」の公布等について|環境省
土壌中のPFAS濃度測定法
土壌中のPFAS測定については、環境省がPFOS、PFOA、PFHxSを対象とした暫定測定法(溶出量試験)を公開しています。
具体的には、土壌を風乾・溶出処理したうえで、サロゲート標準を添加し、固相抽出後にLC/MS/MS法で分析する方法です。
定量下限は、物質ごとに0.2 ng/L程度(暫定値)を目安としています。
土壌中に含まれるPFASの測定法については、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】土壌汚染の調査はどのように行うべき?対象地や調査手順について解説
高濃度のPFASが検出された国内事例

水質や土壌に含まれるPFAS濃度については、過去に国内でも高濃度が検出され、問題となった事例があります。近年の代表的な事例を以下にまとめています。
PFAS濃度で正しくリスク評価するために
水質や血中に含まれるPFAS濃度については、国内外で様々な指標が定められているものの、健康リスクを直接示す明確な基準はまだ確立されていません。
PFAS濃度の指標を知ることは重要ですが、それだけで判断するのではなく、最新の研究や行政の動向を踏まえて冷静に評価する姿勢が重要です。
正しい判断を行うには、専門機関での測定が不可欠です。PFAS濃度についてより詳しく知りたい方は、PFAS測定を行っている専門機関への相談も視野に検討しましょう。
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記事の監修者
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ユーロフィン日本環境株式会社 ラボラトリー事業部 POPsグループ PFAS・PCBチーム 緒方 駿 |
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<経歴> 2017年 日本分析化学専門学校 生命バイオ分析学科 卒業 |
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【参考資料】
- 水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の施行等について(通知)|環境省水・大気環境局長
- 土壌中の PFOS、PFOA 及び PFHxS に係る暫定測定方法(溶出量試験)|環境省
- 「水質基準に関する省令の一部を改正する省令」及び「水道法施行規則の一部を改正する省令」の公布等について|環境省
- 評価書 有機フッ素化合物(PFAS)|食品安全委員会 有機フッ素化合物(PFAS)ワーキンググループ
- 吉備中央町健康影響対策委員会報告書|吉備中央町健康影響対策委員会
- 有機フッ素化合物(PFOA、PFOSなど)について|摂津市
- 全国でPFASの検出相次ぎ、政府が対応策 「水の安全確保」へ実態把握と対策急務|Science Portal|科学技術振興機構
- 吉備中央町における有機フッ素化合物による健康影響調査結果(血中濃度検査結果)|岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
- 環水大水発第2005281号/環水大土発第2005282号|環境省
- (令和6年9月18日発表)市内河川における有機フッ素化合物(PFOS及びPFOA)の検出について(第1報)|さいたま市
- PFAS(有機フッ素化合物)汚染 環境と人体を蝕む「永遠の化学物質」の規制に向けて|JEPA










