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PFAS汚染が確認されている地域は?最新の調査結果と地域の事例

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投稿日:2025年10月31日

水中の土を掬っている様子

PFAS(有機フッ素化合物)は別名「永遠の化学物質」とも呼ばれ、地下水や土壌など環境中に残留し続ける特性を持つ化学物質です。日本各地で河川や地下水からの検出事例が相次いで報告されており、水道水や農畜産物への影響も懸念されています。

この記事では、2025年9月時点の最新の調査結果や地域での対応事例を整理し、PFAS汚染地域の現状と最新の動向をわかりやすく解説します。

 

INDEX

 

 

PFAS汚染とはどんな状態?

水のサンプリング

 

PFASによる汚染は、一度環境中に放出されると極めて長期間残留し、地域の水や土壌に広がっていくという特徴があります。

自然界では分解されにくいため、地下水や河川、さらには大気を通じて移動し、発生源から離れた場所でも検出されることがあります。

そのため、汚染の実態を把握するには継続的な調査や監視が欠かせません。日本でも公共用水域や地下水の調査が定期的に実施され、水道水では暫定目標値を超える事例が報告されるなど、生活環境や飲料水の安全性に直結する問題として注目されています。

 

PFASの特徴

PFASは炭素原子とフッ素原子が結合した構造を持つ人工の化学物質で、1万種類以上存在すると言われています。

撥水・撥油性や耐熱性などの性質から、食品包装材や衣料品、泡消火薬剤、半導体製造など幅広い分野で利用されてきました。その一方で、自然環境では極めて分解されにくい特徴も持っています。

また、体内に取り込まれると排出されにくく、近年の研究では免疫機能や肝機能への影響に加え、発がんリスクや胎児・乳児の発育への影響も懸念されています。

 

【関連記事】PFASが人体に及ぼす影響は?健康リスクや国内の汚染事例

PFASとは

 

PFASの目標値・指針値・基準値

最新の研究でPFASが健康へ影響を及ぼす可能性が報告されていることから、日本では飲料水や地下水などの基準を定めています。

なお、目標値・指針値・基準値はそれぞれ意味が異なるため、各用語を確認しておきましょう。

 

  • 目標値:健康や環境の望ましい姿を示すために理想的な値。
  • 指針値:専門機関や行政が「この程度を守るのが望ましい」と推奨する目安の値。
  • 基準値:法律や規則で定められる、必ず守らなければならない値。

 

2025年9月時点での目安となる数値は、以下の通りです。

 

対象 数値
飲料水(水道水) 【暫定目標値】PFOS・PFOAの合算値で50 ng/L   
公共用水域 【指針値】PFOS・PFOAの合算値で50 ng/L 

 

なお、飲料水の暫定目標値は、2026(令和8)年4月1日から法的拘束力を持つ基準値に移行することが決定しており、規制が強化されます。

また、公共用水域や地下水についても、2025(令和7)年6月30日から指針値が正式に設定され、全国的なモニタリングやリスク管理の強化につながると期待されています。

水道水の暫定目標値などについては、以下の記事をご覧ください。

 

【関連記事】日本の水道水の安全性は?国内のPFAS汚染状況と暫定基準値を確認しよう

飲料水

 

 

公共用水域と地下水のPFAS調査結果

水のサンプリング風景

日本では、水質汚濁防止法に基づいて都道府県等が公共用水域等の水質を常時監視しています。ここでは、2025年4月に環境省が公表したデータをもとに公共用水域と地下水の汚染状況を確認しましょう。

  

調査概要

環境省は、毎年全国の水質調査結果を公開しており、その中にPFASの調査結果も含まれています。2025年4月に公表された「令和5年度公共用水域水質測定結果及び地下水質測定結果について」をもとにしたPFASの調査内容については以下の通りです。

 

【測定結果の概要】
測定地点:39都道府県、2,078地点
河川:981地点
湖沼:37地点
海域:99地点
地下水:961地点

 

前年度(1,258地点)より大幅に増加しています。また測定には、水質汚濁防止法に基づく調査に加え、各都道府県の独自調査も含まれています。

 

調査結果

令和5年度の調査では、22都府県242地点でPFOS・PFOAの合算値50ng/L(暫定指針値)を超過しました。特に地下水での超過が多く、186地点で確認されています。超過した地点の内訳は以下の通りです。

 

  • 過去に超過が確認され、継続測定中の地点:97箇所
  • 新たな汚染範囲確認のための調査地点:103箇所
  • 新規に超過が確認された地点:42箇所

 

超過地点では都道府県が井戸所有者等に対し、井戸水の飲用を避けるように指導を行っています。

 

 

水道水に含まれるPFAS調査結果

水道からコップに水を汲む様子

2024年11月、環境省と国土交通省は共同で実施した「水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査」の結果(令和2年度〜令和6年度)を公表しました。

 

調査概要

この調査は令和2年度から令和6年度(2020〜2024年)まで継続して行われたもので、全国の水道事業者及び水道用水供給事業者を対象にPFOS・PFOAの濃度測定を実施しました。

検査実施率や対象事業体数を把握し、水道水の安全性を全国的に評価することを目的としています。

令和6年度には1,745事業者が検査を行っています。

 

調査結果

暫定目標値(PFOS及びPFOAの合算値で50 ng/L)を超過した事業は、令和2年度に11件確認されましたが、その後は年々減少し、令和6年度にはゼロとなりました。

さらに、過去に超過が確認された14事業も直近の検査ではすべて目標値以下となっています。

現在では、給水人口の98.2%が基準を満たす水道水を利用できる状況に改善しています。

 

 

PFAS汚染に関する国内の最新情報

ダムのパイプから水が放出される様子

PFAS汚染の問題は現在進行形の環境課題であり、国内外で対策や技術開発が進められています。日本でも自治体や国のレベルで新たな動きが見られています。ここでは、2025年9月時点の最新情報をご紹介します。

 

全国一律の基準値整備を国に求める要望書を提出

相模原市は、令和6年6月に「令和7年度 国の施策・制度に関する提案・要望書」を環境省に提出しました。

この提案は、「有機フッ素化合物(PFAS)総合対策の更なる推進」を内容の一つに挙げており、調査・技術・制度の各方面における対策強化への意向が示されています。

具体的な項目としては、健康影響に関する調査研究の加速や適切な分析・除去方法の提示、ならびに全国統一の基準値整備といった内容が盛り込まれています。

 

参考:令和7年度 国の施策・制度に関する提案・要望書|相模原市

 

健康調査や農畜産物への影響評価を求める要望書を提出

広島県福山市は、市内の河川でPFOS及びPFOAの暫定指針値(50 ng/L)を超過したことを受け、2025年3月に農林水産大臣宛てに「PFAS対策に関する要望書」を提出しました。

調査では2河川で基準超過が確認された一方、周辺の井戸水はいずれも基準以下でした。

市は希望者への健康相談を実施し、血液検査などの健康調査を予定しています。併せてPFASの除去技術や人体・農畜産物への影響に関する知見が不足していることを懸念し、以下の点を国に要望しています。

 

  • 調査結果の国による評価と追加調査の判断
  • 移行・蓄積性に関する研究結果の迅速な公表と風評被害対策の助言
  • 健康影響に関する科学的根拠に基づく説明方法及び血液検査の支援
  • 飲用水基準へのPFAS追加に伴う衛生対策要領の更新情報の提供

  

要望書では特に農畜産物への移行や地域経済への影響、風評被害の懸念にも言及しており、環境だけでなく生活や産業への影響評価を重視している点が特徴です。

 

参考:有機フッ素化合物(PFAS)対策に関する要望書|福山市

 

PFOS等の濃度低減のための対策技術の実証事業

環境省は、PFOSやPFOAなどのPFASによる汚染を低減するための実用的な技術を確立すべく、2025(令和7)年4月21日から5月23日にかけて「濃度低減のための対策技術」の公募を行いました。

応募は74件(50社)にのぼり、そのうち専門家による審査を経て厳選された9件(8社)の技術が本事業の対象として選定されています。

選定された技術には、土壌中のPFASを熱分解や洗浄によって除去する手法、また水処理における活性炭吸着やイオン交換、膜分離や酸化分解といった高度浄化技術などが含まれています。

今後、これらの実証試験を通じて得られた知見を全国の自治体と共有し、PFAS汚染対策の技術基盤を強化していくことが期待されています。

 

参考:「PFOS等の濃度低減のための対策技術の実証事業」における対象技術の選定について|環境省

 

 

PFAS汚染実態の最新情報を継続的にチェックしよう

PFAS汚染は現在進行形の環境課題であり、世界的にも規制の強化が議論されています。

日本国内では、公共用水域や地下水の調査で新たな超過地点が報告される一方、水道水の安全性は改善が進むなど、地域によって状況は異なります。

こうした情報は生活や健康だけでなく、農畜産物の生産や地域経済にも影響を及ぼす可能性があるため、正確な把握が求められます。

環境省や各都道府県が公表する調査結果や対策方針を定期的に確認し、最新の情報を継続的に把握することが重要です。

 

 

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記事の監修者

門田さん

ユーロフィン日本環境株式会社

ラボラトリー事業部 POPsグループ PFAS・PCBチーム

Manager 門田 めぐみ

<経歴>

2008年 大阪女子大学 理学部環境理学科生物科学専攻 卒業
2010年 大阪府立大学大学院 理学系研究科分子科学専攻博士前期課程 修了
生理活性天然物の全合成に関する研究を行う。
卒業後はナガセケムテックス株式会社にて機能性材料の研究開発に従事。その後、2013年より協和発酵キリン株式会社にて医薬品の品質管理業務に携わる。
2016年よりユーロフィン日本環境株式会社に入社し、農薬やPCBなどの有機分析業務に従事。現在はPFAS・PCB分析チームのマネジメントを担当し、各種分析法の導入や運用体制の構築にも取り組んでいる。

<発表>

 

 

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