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PFAS MEDIA >> 世界のPFASニュース >> 【2024年度版】ヨーロッパ輸出で注意すべきREACH規則のPFAS規制リスト

【最新版】ヨーロッパ輸出で注意すべきREACH規則のPFAS規制リスト

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投稿日:2024年9月30日(2025年9月10日更新)

※ 本記事は「【2024年度版】ヨーロッパ輸出で注意すべきREACH規則のPFAS規制リスト」を更新したものになります。

REACH規則とは、ヨーロッパにおける化学物質の登録や制限などを目的とした制度です。この規則では、規制対象となる化学物質のリストを作成し、輸入や製造を制限しています。

そのため、ヨーロッパの国との取引で輸出入を行う企業にとっては、必ず理解しておくべき制度の一つといえるでしょう。この記事では、2025年8月時点の最新情報に基づいて、REACH規則の対象となっているPFAS(有機フッ素化合物)について詳しく解説します。

 

INDEX

 

 

EUが制定したREACH規則とは

REACH規制とは

REACH規則とは、欧州における化学物質の総合的な登録、評価、認可、制限に係る制度です。人の健康と環境の保護、欧州化学産業の競争力の維持向上などを目的として、2007年に施行されました。

REACH規則の運用はECHA(欧州化学品庁)が担っており、対象となる化学物質を下記の4つのカテゴリーに分けて規制を行っています。

 

  • 登録(Registration)
  • 評価(Evaluation)
  • 認可(Authorization)
  • 制限(Restriction)

 

4つの対処方法

REACH規則で規制されている内容については、以下の表をご覧ください。

 

REACH規則の概要
登録(Registration)
  • 年間の製造・輸入量が1 tを超えている化学物質が対象
  • 製造・輸入業者は物質に対し、特性と用途に関する情報を収集、及ぼす危険性と潜在的なリスク評価、特定したリスクの管理方法の提示などを行う必要がある
評価(Evaluation)
  • 提出された書類は、ECHAなどで確認と評価が行われる
  • 試験提案の内容審査、提出書類のコンプライアンスチェック、物質の評価に重点が置かれる
  • 評価結果によっては、物質に関する追加情報の提出を求められる場合がある
認可(Authorization)

 

  • 物質がSVHC(高懸念物質)に該当する場合、認可を申請して使用許可を得る必要がある
  • より安全な代替品への置き換えが可能かどうかの評価、ビジネスや流通における重要性の評価が求められる
制限(Restriction)
  • 特定の物質が人間の健康や環境に許容できないリスクをもたらすと懸念される場合、物質の製造、市場への投入、使用を制限または禁止する

引用:REACH Regulation |European Commission

 

対象となるもの

REACH規則では、次に該当するものが適用対象となります。

 

  • 物質そのもの
  • 混合物に含まれる物質
  • 成形品に含まれる物質

 

ただし、医薬品や放射性物質など、他の法律で規制されている化学物質は、要件から部分的あるいは全てにおいて適用外とされています。

なお、混合物とは「2つ以上の物質からなる混合物または溶液」を指し、成形品はキッチン用品や玩具など「表面やデザインが化学組成よりも大きく機能する製造品」を指します。

 

SVHC(高懸念物質)の定義

SVHC(substances of very high concern)とは、人や環境に対して非常に懸念される物質のことです。SVHCの中でも、認可対象物質(附属書XIV)に該当する場合は、認可申請が必要となっています。

SVHCに追加された物質は、まず認可対象の候補物質としてリストアップされ、ECHAの評価によって認可対象物質に決まります。ただし、候補物質に追加された時点で、次のような対応が求められるため注意が必要です。

 

  • 安全データシートの提供
  • 製品を安全に使用するための情報提供
  • 成形品でSVHCが年間1 tを超える量で含まれる、かつ0.1 %(w/w)を超える割合で含まれる場合は届出が必要

 

また、人や環境に許容できないリスクをもたらすと懸念される化学物質は、制限対象物質として附属書XVIIに規定されています。制限対象物質に該当する場合は、製造や使用などの制限あるいは禁止の措置に従わなければなりません。

REACH規則を含むEU全域のPFAS規制の概要については、下記のホワイトペーパーで詳しく解説しています。ぜひご活用ください。

 

 

REACH規則で規制されるPFASのリスト

現場調査員

 

REACH規則には17種類の附属書が存在し、規制内容や対象物質のリストなどを細かく規定しています。2025年7月時点で、REACH規則の附属書に収載している対象物質、あるいはSVHC候補物質に該当するPFASは次の通りです。

 

物質名 制限対象(REACH附属書XVII) SVHC候補リスト
PFOS 〇 Entry 30(CMR) -
PFOA 〇 Entry 30(CMR)
PFHxS -
PFNA 〇 Entry 30(CMR)
〇 Entry 68(PFCA類制限)
PFHpA 〇 Entry 30(CMR)
PFDA -
PFUDA -
LC-PFCAs 〇 Entry 68(PFCA類制限) -
TDFAs 〇 Entry 73(特定のTDFAs類制限) -
PFHxA 〇 Entry 79(PFHxA類の段階的制限)
PFBS -
GenX(HFPO-DA) -
FTPAs -

※Entry番号は、REACH附属書XVIIにおける化学物質ごとの制限条項を示しています。(例:Entry 30:CMR分類(発がん性・変異原性・生殖毒性)のある物質に対する包括的な使用制限)
※SVHC候補リスト(Candidate List)は、REACH規則第59条に基づき、将来的に認可対象物質(附属書XIV)となる可能性がある高懸念物質を収載したリスト

 

上記のリストの中で、日本の化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)で規制対象となっているのは、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)の3つです。

これらのPFASは、REACH規則におけるPFASに特化した個別の制限(例:Entry 68や79など)には含まれておらず、個別の条約・規則などで規制が進められています。

 

PFOSは販売・輸入・使用が禁止に

PFOSは、2006年に欧州の上市禁止指令(2006/122/EC)によって使用製品の規制が行われており、REACH規則における認可や制限の対象に含まれていません。

この指令によって、PFOSが使用された製品は、EU域内での販売・輸入・使用が禁止されています。対象製品は以下の通りです。

 

  • PFOSを重量比0.1 %以上含む製品・部品・半製品
  • PFOSを1 μg/m2以上含む布地・塗装材
  • PFOSを重量比0.005 %以上含む材料及び調剤

 

また、フォトレジスト、反射防止膜、金属メッキ、航空機用作動油は適用除外用途とされています。

 

PFOAはPOPs条約規制へ移行

PFOAは、2017年にREACH規則の制限対象リスト(附属書 XVII)に規定されましたが、2020年にPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)での規制に移行しています。そのため、現在は制限対象リストから削除されています。

POPs条約は、環境中での毒性が高い残留性有機汚染物質に対して製造や使用の禁止、制限等を規定した条約です。PFOAは2019年に附属書A(廃絶対象)への追加が決まり、製造や使用、輸出入が原則禁止となりました。

 

PFHxSはSVHCに特定

PFHxSは、2020年にSVHCに特定され、認可対象物質の候補物質に追加されました。その後、2022年にはPOPs条約の附属書A(廃絶対象)への追加が決定し、2023年のPOPs規則 (EU)2019/1021の改正で、PFHxSの制限を設けています。

2025年8月時点でPFHxSは、濃度などによる一部の免除措置を除き、製造や上市、使用が禁止されています。

 

C9~C14のPFCAsは制限対象に

C9~C14 PFCAs(パーフルオロカルボン酸類)とは、炭素の数が9〜14までの長鎖PFCA(ペルフルオロカルボン酸)をまとめた呼称です。以下の6種類が含まれており、これまでに各々がSVHCに特定され、認可の候補物質に追加されていました。

PFCA 候補物質追加 
PFNA C9 PFCA(パーフルオロノナン酸) 2015年
PFDA C10 PFCA(パーフルオロデカン酸) 2017年
PFUnDA C11 PFCA(パーフルオロウンデカン酸) 2012年
PFDoDA C12 PFCA(パーフルオロドデカン酸) 2012年
PFTrDA C13 PFCA(パーフルオロトリデカン酸) 2012年
PFTDA C14 PFCA(パーフルオロテトラデカン酸) 2012年

C9~C14 PFCAsは2021年に、制限対象物質リスト(附属書XVII)の項目68に加えられ、2023年より適用が開始されました。制限内容は製造・市場流通・使用・販売の禁止ですが、目的や濃度によって免除措置も取られています。

 

PFHxAは制限対象に

PFHxA(パーフルオロヘキサン酸)は、制限対象物質(附属書XVII)の項目79に追加され、2024年10月10日に発効されました。使用に関する濃度制限が規定されており、対象製品には以下のようなものが含まれます。

 

  • 消費者向けの衣類及びアクセサリーに使用される繊維、皮革、毛皮及び皮革製品
  • 消費者向けの履物
  • 食品接触材料として使用される紙及び段ボール
  • 化粧品
  • 特定の泡消火薬剤

 

制限の適用は、2026年4月10日から段階的に開始されます。

 

GenXはSVHCに特定

GenXとは、HFPO-DA(ヘキサフルオロプロピレンオキシド二量体酸及びそのアンモニウム塩)の通称名で、2019年7月16日にSVHCに特定され、認可の候補物質に追加されています。

HFPO-DAは、焦げ付き防止コーティングや防汚剤などに使用されており、PFOAの代替物質として利用されてきました。

 

PFBS(ペルフルオロブタンスルホン酸)はSVHCに特定

PFBSは、2020年1月16日にSVHCに特定され、認可の候補物質に追加されています。

PFBSはPFOSの代替物質とみなされており、撥水剤や表面処理剤、防汚剤、消火剤、コーティング剤などのフッ素樹脂の溶媒として使用されてきました。

 

PFHpA(ペルフルオロヘプタン酸)はSVHCに特定

PFHpAは、2023年1月17日にSVHCに特定され、認可の候補物質に追加されました。

ECHAによると、PFHpA単体の製品は製造輸入されておらず、商業的な用途はないとのことです。しかし、アメリカで運営されている化学物質のデータベース「PubChem」では、撥水剤としての用途などが記載されているため、今後の情報に注意が必要です。

 

FTPA(ペルフルオロトリプロピルアミン)はSVHCに特定

FTPA(ペルフルオロトリプロピルアミン)は、2025年1月21日にSVHCに特定され、認可の候補物質に追加されました。

電気、電子、光学機器、機械、車両の製造、計器やメーターの防食絶縁、トランスミッション液、酸化防止潤滑剤など様々な用途で使用されています。

 

 

REACH規則に基づくユニバーサルPFASの制限提案について

EU国旗

ECHAは、2023年2月に約1万種類のPFAS(ユニバーサルPFAS)を対象とする規制案を発表しました。規制案では、PFASの製造や市場への投入、使用の禁止が提案されており、特定の用途に対しては免除措置を設けるものの、期間限定としています。

この規制案が採用されれば、対象となるPFASの種類が増えるだけでなく、新たに規制対象となる化学物質が追加される点も大きな特徴です。

規制案に対する協議は同年3月より始まり、当初は2025年中に欧州委員会が決定を下す予定となっていましたが、2025年8月現在、ECHAは医療機器・潤滑剤・輸送などの用途を対象に暫定結論や代替物質の評価が行われており、電子機器・半導体分野は予備的評価の段階にあります。

そのため、最終的な制限決定は2026年以降にずれ込む可能性が高く、数年かけた段階的な導入が行われる見通しとなっています。

 

評価対象となった分野

規制案に対する協議では、PFASに関連する様々な分野の評価を行っています。2024年11月における協議では、以下の分野の評価が暫定的に終了したとの発表がありました。

 

  • 建設製品(建築用膜や屋根材、電線、塗料など)
  • 繊維製品、室内装飾品、革製品、衣料品、カーペット
  • 食品接触材料及び包装

 

建設製品には、紫外線耐性や腐食防止、耐薬品性など、PFASが持つ多くの特性が利用されています。繊維製品、室内装飾品、革製品、衣料品、カーペットでは、撥水・撥油性が、食品接触材料及び包装では、耐油性及び耐グリース性が活用されています。

 

今後の評価スケジュール

2025年3月に開催されたRAC(リスク評価委員会)およびSEAC(社会経済分析委員会)の合同会合では、フッ素ガス、輸送、エネルギーの3分野に対するPFAS制限提案の技術的評価が進められ、暫定結論が得られました。
※RACとSEACはいずれもECHAに設置された専門委員会であり、化学物質のリスク管理に関する科学的・経済的な助言を提供する役割を担っています。

その後、2025年6月の会合では、医療機器と潤滑剤の両分野で評価が継続され、電子機器・半導体についても予備評価がスタートし、SEACによる継続検討も進行中であるとの報告があります。

さらに、2025年9月以降には電子機器・半導体分野に加え、PFAS製造の全体プロセスも評価対象に含まれる予定となっており、段階的な分野別評価が続く見通しです。

 

PFAS制限に関する進捗報告

2024年11月に発表されたPFAS制限に関する進捗状況によると、2023年の協議中に受け取った5,600以上のコメントに対する検討をしているとのことです。

これにより、提案当初に指定されていなかった用途を特定し、既存の分野評価への組み入れや新しい分野の作成などが行われています。また、全面禁止や限定的な免除をともなう禁止に加え、代替物質の制限についても今なお検討が進んでいます。

 

 

REACH規則の規制リスト項目は増え続けている

近年、REACH規則の規制リストに収載される項目は増え続けています。

2025年6月には認可候補リストに3件の追加があり、SVHCの認可候補物質は計250項目となりました(2025年8月時点)。

また、2025年の4月28日から5月9日の期間に開催されたストックホルム条約第12回締約国会議(COP12)においては、炭素数C9〜C21の長鎖パーフルオロカルボン酸類(PFCAs)とその塩類および関連物質が新たに附属書Aに追加され、国際的に製造・使用・輸出入が原則禁止とされました。

これらの物質は今後REACH規則の制限対象として検討が進む可能性が高く、将来的にREACH規則のさらなる規制強化へと繋がる可能性も十分にあります。

REACH規則に関する最新情報はECHAから随時発表されているため、今後も発表内容を注視しておく必要があります。

 

 

ヨーロッパへ輸出する際はREACH規則の制限物質リストに注意

PFASが含まれる製品をヨーロッパへ輸出する際、特に注意すべき規制がREACH規則です。規則の要件や規制リストを確認し、適切な対応をとる必要があります。

2023年には、約1万種類のPFASを規制対象とすることが提案され、現在も協議が進められています。

ヨーロッパのPFAS規制において、対象物質は今後も増え続けることが予測されるため、REACH規則の最新情報に注視しましょう。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン・プロダクト・テスティング株式会社 代表取締役 金子 貴義

ユーロフィン・プロダクト・テスティング株式会社
代表取締役 金子 貴義

<経歴>

大学卒業後、環境調査・検査業界に15年余従事、2015年より現ユーロフィン・プロダクト・テスティング株式会社にて工業製品の環境負負荷物質管理に携わったのち、2019年よりPFAS等化学物質や食品包装等の海外法令調査・コンサルティングの実施、および管理に従事。

 

 

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