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日本の水道水の安全性は?国内のPFAS汚染状況と暫定基準値を確認しよう

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投稿日:2024年6月5日(2026年4月2日更新)

飲料水

 

【この記事のポイント】

  • 日本の水道水は、安全性の観点でPFOS・PFOAの合算値50 ng/Lを設定

  • 2026年4月1日に暫定目標値から基準値へ移行され、対応推奨から「法的義務」へ

  • 水道水規制の「要検討項目」に7つのPFASが新たに追加される見込み

 

水道水に含まれるPFAS(有機フッ素化合物)は、生活者の不安だけでなく、飲料・食品メーカーや製造業などの企業にとっても無視できない観点です。

原水の状況や検査結果の公表、規制の方向性によっては、調達や品質保証、リスクコミュニケーションの負荷が高まる可能性があります。

とくに注目したいのが、2026年4月1日から施行される水質基準に関する省令改正です。

これまで暫定目標値として扱われてきたPFASが基準値として位置づけられ、水道事業者には基準への適合確保や超過時の対応など、これまで以上に明確な対応が求められます。

 

本記事では、日本の水道水におけるPFASの汚染状況を整理したうえで、規制の最新動向と、今後の影響についてわかりやすく解説します。

 

INDEX

 

 

PFAS(有機フッ素化合物)とは?

三角フラスコと試薬

PFAS(Per- and Polyfluoroalkyl Substances)は、有機フッ素化合物の総称です。

OECD(経済協力開発機構)では、PFASを「少なくとも1つの完全フッ素化メチル基(–CF3)または完全フッ素化メチレン基(–CF2–)を含むフッ素化合物」と定義しています。

PFASは種類が非常に多く、産業用途を含む幅広い分野で使用されてきた一方で、一部のPFASは難分解性・高蓄積性・長距離移動性等の性質が懸念され、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)で廃絶・制限の対象に追加されています。

直近では、2025年のCOP12で「長鎖PFCAs(C9〜C21)とその塩、関連化合物」が新たに附属書A(廃絶)への追加対象として決定されました。

日本国内では、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)により、次のPFASが規制対象となっており、いずれも製造・使用・輸出入が原則禁止されています。

 

  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)

 

PFASについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

 

 【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向まで

pfas

 

PFASが健康に及ぼす影響

PFAS曝露の人体への影響

一部のPFASについては、コレステロール値の変化や免疫反応などとの関連が報告されています。

一方で、健康影響の評価は研究結果のばらつきも大きく、結論を一律に整理しにくい点に注意が必要です。

日本では、内閣府の食品安全委員会が、2024年6月に「有機フッ素化合物(PFAS)」評価書を公表し、PFOS・PFOA・PFHxSを中心に知見を整理しています。

評価の要点としては、人体や動物への影響の可能性は否定できないものの、領域によっては「結果の一貫性が十分でない」「知見が限られる」などの理由から、指標値の算出が難しいとされています。

 

調査結果の一部を抜粋したデータが下記になります。

食品安全委員会の評価結果(2024年)
カテゴリ 健康上の影響
肝臓 (血清ALT値や血清総コレステロール値の上昇について)影響を及ぼす可能性は否定できないものの、証拠は不十分
脂質代謝
甲状腺機能
甲状腺ホルモン
影響があるとまでは言えない
生殖・発生 ・(疫学研究)出生時体重低下との関連は否定できないものの、知見が限られている。出生後の成長に及ぼす影響については不明
・(動物試験)出生児への影響について、複数の報告が同様の結果を示し、証拠の確かさは強い
※疫学研究の結果と動物試験の結果は、分けて考えるのが適当
免疫 (ワクチン接種後の抗体応答の低下について)可能性は否定できないものの、これまで報告された知見の証拠の質や十分さに課題がある
神経 評価を行うには知見が不十分
遺伝毒性 PFOS・PFOA・PFHxSは、直接的な遺伝毒性を有しない
発がん ・(PFOAと腎臓・精巣・乳がんとの関連性)報告結果に一貫性がなく、証拠は限定的
・(PFOSと肝臓・乳がんとの関連性)及び(PFHxSと腎臓・乳がんとの関連性)証拠は不十分

参照:「有機フッ素化合物(PFAS)」評価書に関するQ&A(2024年6月25日)|食品安全委員会

 

なお、PFASが人体に及ぼす影響について、より詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

関連記事:PFASが人体に及ぼす影響は?健康リスクや国内の汚染事例

悩む女性

 

 

 

日本の水道水のPFAS汚染の状況

PFAS検出状況マップ 

環境省と国土交通省は、2025年12月25日に「水道におけるPFOS及びPFOAに関するフォローアップ調査」の結果を公表しました。

本調査は、水道事業・水道用水供給事業に加え、専用水道も対象として実施され、前回調査以降の状況(令和6年10月1日以降の水質検査結果など)を把握する目的で取りまとめられています。

結果の概要は以下の通りです。

 

項目 内容
調査対象期間 2020年4月〜2025年8月末まで(約5年5か月)
水質検査を実施したことがある水道事業者数 3,201事業者

前年度調査:2,227事業者から大幅に増加
暫定目標値(50 ng/L)を超過した水道事業者数 19事業者

前年度調査:14事業者から5事業増加
フォローアップ調査では、18事業者が対策済で目標値を下回っており、残り1事業者も今年度中に対策予定
専用水道における水質検査の実施状況 4,353設置者

前年度調査:1,929設置者から倍以上に増加
暫定目標値(50 ng/L)を超過した専用水道数 59設置者

前年度調査:42設置者から増加
フォローアップ調査では35箇所で対策済(取水停止等)、20箇所で応急対応済(飲用制限・ボトル給水等)。残り4箇所も今年度中に対策予定

参照:水道におけるPFOS及びPFOAに関するフォローアップ調査の結果について | 報道発表資料 | 環境省

 

最新の調査結果を見ると、PFOS・PFOAについては水道事業・専用水道で検査と改善対応が進み、暫定目標値(50 ng/L)を意識した管理が行われています。

現状の水道水の安全性は、少なくともPFOS・PFOAの範囲では一定の確認が進んでいることがわかります。

一方で、評価対象はPFOS・PFOAが中心であり、その他のPFASについては同じ枠組みで測定・整理されているとは限らない点には注意が必要です。

 

 

日本の水道水にPFASが含まれる原因は?

PFASが水道水に含まれるまでの主なルートは?

水道水にPFASが含まれる主な要因としては、水道水の原料となる水源(原水)がPFASで汚染されることが挙げられます。

水道の水源には、河川水やダム湖水、湖沼水、地下水などがあり、いずれも周辺環境の影響を受けます。

PFASは一部の物質で難分解性などの性質が指摘されており、環境中に放出された場合、河川や地下水を通じて周辺へ拡散・残留し、長期にわたり影響が残る可能性があります。

そのため、工場・訓練施設などで使用された泡消火薬剤や、過去に取り扱いのあった事業所周辺の水路・地下水などから検出されるケースも報告されています。

実際に国内でも、水源周辺の地下水・河川などでPFOS・PFOAが高濃度で検出され、取水停止や飲用制限などの対応につながった事例があります。

 

代表的な例を以下にまとめます。

事例名 概要(想定要因・検出状況・対応)
大阪府 摂津市内

事業所周辺の水路・地下水でPFOSとPFOAが高濃度で検出され、継続的な監視と対策が進められています。令和7年11月調査では、PFOS+PFOA合計が水路で86〜7,900 ng/L、地下水で150〜28,000 ng/Lの範囲で検出され、いずれも指針値(50 ng/L)を超過しました。想定される要因として、過去のPFOA取り扱いが挙げられており、PFOAの使用全廃、敷地内地下水の処理、遮水壁の設置などの流出防止対策が実施されています。
沖縄県 比謝川周辺

水道水源となる河川でPFOSとPFOAが高い値で検出されています。2018年の調査では、PFOSとPFOA合計が比謝川取水ポンプ場で199〜319 ng/Lと報告されています。
岡山県 吉備中央町 複数の地点でPFOSとPFOAが大きく超過して検出され、継続的なモニタリングが行われています。令和8年1月の結果では、PFOSとPFOA合計が西側沢F1で48,000 ng/L、西側沢B2で2,600 ng/L、河平ダムで950 ng/L、山王橋(日山谷川)で490 ng/Lなどと報告されています。調査は継続されており、次回調査予定も示されています。

参照:有機フッ素化合物(PFOA等)に係る水質調査結果(令和7年11月)について|大阪府
参照:有機フッ素化合物(PFOA、PFOSなど)について/摂津市
参照:有機フッ素化合物残留実態調査の結果に関するQ&A集|沖縄県環境部環境保全課(令和7年3月)
参照:【円城浄水場有機フッ素化合物等の検出について】 - 吉備中央町ホームページ

 

 

日本の水道水に対するPFAS規制の内容は?

水道水質基準改正の前と後 

水道水に関するPFASの扱いは、まず2020年に厚生労働省がPFOS・PFOAを水質管理目標設定項目に位置づけ、合算で50 ng/Lの暫定目標値を設定したことから始まりました。

この50 ng/Lは、当時の科学的知見を踏まえ、体重50 kgの人が水を一生涯にわたって毎日2 L以上飲用しても健康に悪影響が生じないと考えられる水準として設定されたものです。

2026年4月1日からは、PFOS・PFOA(合算50 ng/L)が暫定目標値から基準値へ移行し、水道事業者には定期的な検査の実施が求められます。

検査頻度は原則として3か月に1回で、簡易水道や専用水道は条件を満たす場合に半年に1回または1年に1回まで頻度を減らせる仕組みです。

あわせて、PFOS・PFOA以外のPFASについては、7つのPFAS(PFBS、PFBA、PFPeA、PFHxA、PFHpA、PFNA、HFPO-D)が要検討項目に追加され、PFHxSは引き続き要検討項目に据え置かれています。

 

 

水道水のPFAS基準値引き上げによる影響と対策

水を飲む母娘

2026年4月の基準値への移行により、PFOS・PFOAの管理は「目標」ではなく、より明確な遵守が求められる枠組みになります。とくに専用水道を設置している施設では、PFOS・PFOAの定期的な検査と基準への適合確保が重要になります。

企業にとっては、専用水道の有無にかかわらず、取水源や水の種類によっては、品質保証やリスクコミュニケーションの観点からPFAS対応の必要性が高まります。

たとえば、水を大量に使用する工場、大規模な医療・福祉施設、温泉・プールなどのレジャー施設などでは、水質の説明責任が問われやすく、普段から確認・備えをしておくことが望ましいでしょう。

また、水道事業者側の対応としては、原水の状況に応じて取水地点の切替や水源の代替に加え、浄水処理の強化が検討されます。

PFASの除去に関しては、粒状活性炭(GAC)やイオン交換樹脂、膜処理(RO/NF)などが代表的な選択肢で、原水の性状や対象物質、既存設備との相性を踏まえて組み合わせるケースもあります。

まずは、自社施設が「専用水道に該当するか」を含めて管理体制を整理し、必要に応じて水質検査の設計や、検出時の対応方針まで決めておくと安心です。

 

PFAS規制の今後の方向性

 PFAS 水

日本のPFAS規制は、EUや米国など規制が先行する地域の動向や最新の科学的知見の影響を受けやすく、水道水についても海外の動きは継続的に確認しておく必要があります。

各国のPFAS規制は「基準値」「目標値」「ガイドライン」など位置づけが異なるため、数値だけで単純に比較することはできません。ただし全体の方向性としては、規制の焦点が「PFOS・PFOAの単体管理」から、「対象物質の拡大」や「複数PFASをまとめて管理する枠組み」へ広がりつつあります。

海外の具体例として、米国ではEPAがPFOAとPFOSの最大汚染レベル(MCL)を各4.0 ng/Lとし、PFHxS・PFNA・HFPO-DA(GenX)は10 ng/Lとするなど、物質ごとの基準を設定しています。さらに、複数PFASの混合影響を考慮する枠組みである(ハザード・インデックス)も導入しています。

EUでは「PFAS Total(0.5 µg/L)」と「Sum of PFAS(0.1 µg/L)」という2つの指標で管理する仕組みが示され、加盟国での適用が進んでいます。カナダでも、飲料水から検出される25物質の合算について30 ng/Lの目標(Objective)を設定し、グループベースでの管理を採用しています。

日本でも2026年4月からPFOS・PFOAが基準値として位置づけられ、運用が進む一方で、今後は国際動向などを踏まえて管理対象や運用が更新される可能性があります。

 

【2026年4月追記】
アジア主要国のPFAS規制をまとめたホワイトペーパーを無料公開しています。
最新情報をもとに、各国のPFAS規制の現状と方向性などを横断的に整理しており、
飲料水・排水といった環境媒体ごとの管理の考え方なども解説しています。

今後想定される規制拡張のシナリオを踏まえ、
企業として押さえるべき対応のポイントなども盛込んでいますので、
↓ぜひこちらからダウンロード下さい。

 

 

日本の水道水の安全基準を確認しよう

水道水に関するPFASの扱いは、最新の科学的知見や国内外の規制動向を踏まえて、今後も見直しが進む可能性があります。

まずは基準値や要検討項目など国の規制方針を押さえたうえで、居住地域の自治体・水道局が公表している検査結果やお知らせも確認しておくと安心です。

また、施設の用途や水の利用形態(上水・井戸水・専用水道など)によっては、必要な対応が変わる場合もあります。

 

判断に迷う場合は、PFAS分析や対策に対応できる専門機関へ相談し、実態に合った定期モニタリングを検討しましょう。

 

 

ユーロフィンのPFAS分析については

こちらからお問い合わせください

お問い合わせ

 

 

記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 藤田 潤さん

ユーロフィン日本環境株式会社

ラボラトリー事業部 POPsグループ

PFAS・PCBチーム 藤田 潤

<経歴>

2021年 神奈川大学 理学部 卒業

クルマエビの卵巣成熟度を評価する新たな指標遺伝子の探索について研究を行う。
卒業後、株式会社アルプスビジネスサービスに入社し、絶縁油に含まれるPCB分析を携わる。
2022年よりユーロフィン日本環境株式会社でPCB分析を行い、2023年よりPFAS分析に従事。

<発表>

2023年9月 第30回日環協・環境セミナー全国大会「水中の揮発性PFAS分析法の検討」
資料はこちらからダウンロードいただけます。

 

 

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