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米国におけるPFAS規制の動向は?関連企業の報告が義務化へ

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投稿日:2024年4月24日

ニューヨーク

世界的にPFAS(有機フッ素化合物)を規制する動きが強まっています。PFAS規制を推進している国の中でも、特に日本と関係が深い米国の動向には目を向けておく必要があります。

この記事では、米国におけるPFAS規制の特徴や最新の動向について詳しく解説します。この記事を読むことで、米国と日本におけるPFAS規制の違いについても分かります。

 

INDEX

 

 

 

米国におけるPFAS(有機フッ素化合物)の扱いについて

男性の研究者

米国の現状について知るためには、まず米国でPFASが規制された背景について理解するとよいでしょう。ここでは、PFASに関する基本情報や米国における規制の背景について解説します。

 

そもそもPFAS(有機フッ素化合物)とは

PFASは、1万種類以上存在している有機フッ素化合物の総称で「ピーファス」と呼ばれています。PFASは、水や油をはじく、熱に強い、薬品に強いなどの特徴を持つことから、生活や産業の様々な場面で多く活用されてきました。

しかし、自然界で分解されにくく、半永久的に蓄積することが分かったほか、人体への毒性も指摘されていることから、世界的に排除していく流れが強まっています。

 

米国でPFASが規制された背景

米国では発がん性や免疫力の低下など人体に及ぼす悪影響の可能性が指摘されており、PFASに対する国民の意識が強くなってきています。また、日常製品に含まれるPFASを巡って、大手企業が集団訴訟を受けるケースも発生しています。
国際的にもPFASを規制する動きが強まってきていることから、米国のEPA(環境保護庁)も規制強化に向けて動き出しています。

 

 

米国EPAのPFAS戦略的ロードマップ

仕事のブラウザー

米国のEPAは、2021年に「PFAS戦略的ロードマップ」を発表しています。ここでは、米国のPFAS規制において重要なポイントとなる戦略的ロードマップについて詳しく解説します。

 

米国EPAのアプローチ

PFAS戦略的ロードマップでは、以下の5つを軸に問題に対してアプローチすることが定められています。

 

  • PFASのライフサイクルを考慮する
  • 問題の根源を捉える
  • 汚染者の責任を問う
  • 科学に基づいた意思決定
  • 不利な立場にある地域社会の保護を優先にする

 

PFAS問題を解決するためには、特定のばく露経路や課題に取り組んだだけでは問題解決には繋がりません。PFASを排除するためには、多角的な視点からアプローチすることが重要になります。

 

米国EPAの目標

米国のPFAS戦略ロードマップでは、最終的な達成目標として以下の3つを挙げています。

 

  • RESEARCH(研究)
  • RESTRICT(制限)
  • REMEDIATE(修復)

 

RESEARCH(研究)では、研究・開発やイノベーションへの投資により、環境汚染源や暴露経路、人の健康・生態系への影響についての科学的理解を深めること等を目標としています。

RESTRICT(制限)は、人の健康や環境に悪影響を及ぼすレベルのPFASが、空気中や土壌、水へ入り込むのを制限する為に定めた目標です。

REMEDIATE(修復)は、PFAS 汚染の除去を拡大させることにより、人の健康と生態系を守ることを最終目標としています。

 

具体的なアプローチ内容は?

PFAS戦略ロードマップでは、EPA内で実施する具体的なアプローチ内容についても言及しています。

例えば、化学品安全室・公害防止室による国家的なPFAS検査戦略や、水道局による飲料水規制の確立などが挙げられます。

その他、国土危機管理局、航空放射線局など、EPA内の各部署における具体的な施策が検討・実行されており、規制に応じて今後も取り組みが進んでいくと予想されています。

 

 

米国TSCAに基づくPFAS規制

情報分析

米国EPAは2023年に、TSCA(有害物質規制法)で商品の製造・輸入事業者に対してPFASに関する情報報告・記録保持規則を公表しました。ここでは、TSCAにおけるPFAS規制について詳しく解説します。

 

報告すべきPFASの範囲

TSCAで定められている「報告すべきPFASの範囲」は、以下の3つです。

  1. R- (CF2) -CF (R') R''(CF2およびCF部分の両方が飽和炭素である場合)
  2. R-CF2OCF2-R'(RおよびR'は、F、Oまたは飽和炭素のいずれか)
  3. CF3C (CF3) R'R''(R'およびR''は、Fまたは飽和炭素のいずれか)

この条件に該当する物質数は1,462以上であり、対応に伴う産業界のコストは8億〜8億4,300万ドルになると予測されています。 

 

報告すべき内容

報告者は、以下の内容をEPAに報告することが求められています。

 

  • 会社および工場のサイト情報
  • 化学物質固有の情報
  • 用途カテゴリー
  • 製造量
  • 副産物の報告
  • 環境および健康への影響
  • 労働者へのばく露データ
  • 廃棄方法

 

PFASに関連するデータを報告しなければならないケースでは、上記のデータを決められた期間内に指定された報告フォームで報告する必要があります。

 

報告すべき期間

一般の報告対象者と研究開発用用途の対象者は、2024年11月13日から2025年5月8日までの期間に報告する必要があります

また、成形品の輸入者および小規模製造業者の場合は、2023年11月13日から2025年11月10日までの1年間で報告することが求められています。

 

 

米国と日本国内におけるPFAS規制の違い

米国では、PFAS戦略的ロードマップに従って規制を進めており、2024年4月に飲料水の基準値を最終決定しました。米連邦政府がPFASについて法的拘束力のある全米基準を定めるのは初めてのことで、PFOS・PFOAは4ng/L、PFHxS・PFNA・HFPO-DA(GenX Chemicals)は10 ng/Lという、これまでの基準値より大幅に厳しく設定しました。

また、全米の公共水道システムに3年以内に飲料水中のPFAS量測定と情報公開を求め、基準を超えた場合、5年以内に削減対応を求めています。

一方、日本においては、化審法(化学物質の審査および製造等の規制に関する法律)に基づいて、PFAS規制を推進しており、2010年にPFOS、2021年にPFOAの製造、輸入が原則禁止に。

2020年には、厚生労働省が飲料水中のPFOSとPFOAの合算値を50 ng/L以下とする暫定目標値を定めていますが、先日決まったアメリカの基準値より規制は緩くなっています。

また環境省も、水質管理目標設定項目や、公共用水及び地下水の環境基準項目にPFOSとPFOAを追加しており、合算で0.00005 mg/l 以下という暫定目標値を定めています。

 

 

米国のPFAS規制が国内にも大きな影響を与える可能性

米国では戦略的ロードマップに従い、独自のPFAS規制を行っています。各国によって状況が異なるため、国ごとに規制方法が異なるのは当然のことです。

日本との関係性が深い米国の動向は、今後日本のPFAS規制にも大きな影響を与える可能性が高いでしょう。

企業やメーカー担当者は、米国だけでなく世界各国の最新の動向を確認しながら、国内におけるPFAS規制の情報を確認していくことが大切です。

 

 

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【参考資料】

 

 

記事の監修者

高藤 晋さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ
セールス・マーケティングチーム

Manager 高藤 晋

<経歴>

2012年 University of Otago 微生物免疫学部卒
2015年 東海大学大学院 博士前期 修了
2019年 横浜市立大学大学院 生命ナノシステム研究科博士後期課程修了
2019年 株式会社ベリタスに入社し、オルガノイド関連商材の展開に携わる。2024年より現所属。

オタゴ大学では、食品微生物など、東海大学ではトランスジェニック植物を使用したホルモン作用の解析、横浜市立大学では植物ホルモン化合物の定量分析などを行っていた。