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がん免疫療法|これって何?バイオコラム第18回

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こんにちは。もも太です。

本コラムの第3回目にご紹介した「免疫チェックポイント阻害薬」はその後、抗体医薬を用いた画期的な「がん免疫療法」として、今年のノーベル賞の候補に騒がれたほど、大いに注目されています。現在、我が国で販売されている免疫チェックポイント阻害薬は2品あり、1つは抗PD-1(Programmed cell death protein-1)抗体の「ニボルマブ」で、もうひとつは抗CTLA-4(Cytotoxic T-lymphocyte antigen-4)抗体の「イピリムマブ」ですが、その他5品がしのぎを削って開発中です。注目を集める「がん免疫療法」について、過去の歴史や最近の知見などからその流れを追ってみました。

 

免疫チェックポイント阻害薬」の機序の復習ですが、がん細胞は、自分を攻撃してくる免疫細胞の細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T-lymphocyte: CTL)に殺されないよう、このCTLの「免疫チェックポイント」に結合して活性を阻害していることから、このポイントを阻害されないようにあらかじめ抗体で蓋をすると、がん細胞に妨害されることなく、CTLががん細胞を殺すことができるようになるという仕組みです。しかし過去を振り返ると、これまで行われてきた逆の機序に基づく免疫療法、すなわち、①T細胞やマクロファージ(白血球の一種)を活性化するインターフェロン-α(IFN-α)やインターロイキン-2(IL-2)投与療法や、②体内のリンパ球を取り出し培養で増殖・活性化して体内に戻す方法(LAK療法)や、③がん抗原をペプチドなどの形で投与し、がん細胞を認識させて攻撃する機能を活性化する、などの免疫活性の増強を目指した積極的な療法は、一部のがん種についての有効性は認められるものの、期待したほどの大きな成果は得られてきませんでした。これらの治療法よりも、免疫にブレーキをかけるがん細胞の攻撃を阻害する方が効果的という、いわば抑制的でマイルドな療法が功を奏するという結果からはイソップ童話の「北風と太陽」にも似た手法の対比が見られます。

 

ところで、がん組織をHE標本で観察すると、腫瘍浸潤リンパ球(Tumor Infiltrating Lymphocyte: TIL)がみられることがあります。このリンパ球ががん細胞を特異的に殺すと考えられ、このリンパ球を集めて培養後体内に戻す「TIL療法」というがん免疫療法も研究が続けられています。この治療はがん種によって一定の有効性が報告されていますが、総括的な評価は定まっていません。しかし、多くの研究において多数のTILが見られることは良好な予後と関連していると報告されています。また、さらに重要な知見として、その数や密度だけでなく、腫瘍浸潤性免疫細胞の組織化した三次リンパ様構造(Tertiary Lymphoid Structures: TLS)が予後の指標になると注目されており、腫瘍微小環境内での免疫細胞の活発な働きの解明が、新たな免疫療法や診断開発のキーになりそうな気がします。

 

このように、免疫システムを利用しがんを克服する有力な療法として免疫チェックポイント阻害薬への期待がますます膨らむ中で、診断薬の開発も進んでいます。抗PD-1抗体治療においては、腫瘍細胞に発現しているPD-1のリガンド、PD-L1の発現を免疫組織化学染色(Immunohistochemistry: IHC)により検出する事が、有効性予測のための有用なバイオマーカーとなる可能性が示されています。また免疫システムの機序解明には、患者さんの状態や治療によって変化する組織学的なTILやTLSの解析も重要です。当社では日々生み出される新しい研究情報を収集し、吟味の上、より信頼性の高い評価系について提案してまいります。

 

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